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21/62

3-1MMOでした

皆様こんにちは。お世話になっております。

からすです。

そういえば、海の塩分濃度は基本3%と少し程度なのですよね。

だから何というわけではありませんが。

●〇●〇


 リンクスを開いた瞬間、ぴったりのタイミングで望からの連絡が入ります。


 リンクスもそうですけれど、他のSNSのコンオペとかも開いた瞬間に連絡が入ることがあるのですよね。

 生活リズムが似ているのか。あるいはそんな偶然が目につくほど頻繁に連絡を取り合っているということなのか。


< 大樹の広場に居るから


 望の方でも既読が付いたはずなのでわかるでしょうが一応。


今終わったので向かいますね >


 リンクスを閉じて大樹の広場へ向かいます。

 待っている間にSP振りしようかなと思っていたのですが、望に色々聞きながら振りましょうか。


 広場に到着し、一応ぐるりとあたりを見渡します。

 安全装置が掛かっているので、ぱっと見で個人の特定ができるわけがないのですけどね。


 それでも一応、双方に同様に認識があれば判別は可能なので、大樹噴水? の縁に腰掛け、周りを眺めながらそれっぽいキャラを探します。

 目につきさえすれば、望も待ち合わせとして待っているはずなので、望だと認識できると思うのですが。


 少しそうして周りを眺めていると、近づいてくる人影。

 目を向けると、望がこちらを先に見つけたようで、近づいてくるところでした。


 立ち上がり軽く手を振ると、望もこちらへ軽く手を。

 間違い、という現象はありえないのですが、気分的に。癖ですよね。


 望は、あれなんなのでしょうね?

 黒いストーレートヘアの頭頂部に、クラフトスペースにいたお姉さんのようにミミズクの羽耳のようなのが付いています。

 ただあちらは寝ぐせだった可能性もわずかにありますが、望のは確実に種族的な何かのはずです。


 翼とかは無いですよね? と眺めていると。

 望が口を開きます。


「なんで初期装備?」


 そして第一声がこれである。


 仕方なかろう。まだ始めたばかり…… ではないかもしれませんが、序盤も序盤なのだ、友よ?


 そんなことをおっしゃる友の装備はといえば、ドレスアーマーというのが正しいのでしょうか、造形は赤ベースに白い薔薇柄のドレスを主軸とした装備です。


 特徴的なのは、左半分の開いたふわりと広がるボリューム感あるスカート? に、その下に覗くひざ丈のスカートと、右側に片掛けのハーフマント。


 手足は赤い金属質の手甲・足甲に包まれており、なんというのでしたか、ガントレットと、ソルトレットでしたっけ?

 武器の類はぱっと見では持っていないように見えますが、剣を持つとそれっぽいでしょうね。


 全体的に赤と白に統一されたデザインは、望の好みとセンスを窺わせます。


 やはり一期組は違いますね。

 そしてそれでも目立つことがないのは、やはりゲームゆえにかなり派手な方が多いからというのが主でしょうが、望の着こなしもあるのでしょうね。


 こうして見ているとおしゃれしたくなりますけど、お金はまだ他の所に使いたいですし、難儀なものです。


「お金ないので」


 兎にも角にもお金稼ぎ。

 結局何に使うのかの目安を立てないと目標金額も浮かびませんか。


「ふーん? とりあえずこれね」


 飛んできたフレンド申請を承諾。

 リア友なら正直いらないといえばいらないですけど、一々外のツールを開くのも手間ですし、慣例ですよね。


 プレイヤーネームは『シノ』ですね。把握しましたよ。

 望はいつもこれなのですよね。

 真城しんじょう のぞみの頭文字をとって、シノ。


 まぁ、私だって昔、色の白からシロにしてそのままずっと使っているだけですし、ゲーム内の名前なんてそんなものですよね。

 望、もといシノの方も私のプレイヤーネームを一瞥。確認するかのように問いかけてきます。


「シロ、アビリティはもう全部取りきったの?」

「はい、一先ずは、初期AP分は取りましたね」


 そう答えると、シノが首をわずかに傾げ、こちらを見つめます。

 なんでしょう?


「珍しいわね? いつもだとまずは半分くらいで抑えておくのに」

「半分ですよ?」


 私の性格をよくわかってらっしゃる。

 その通りで、今回もまずは半分だけですよ?


 シノがこちらから視線を外し、少し空を見つめ何事かを考える仕草を見せると、こちらに視線を戻します。


「……シロ、種族は?」


 ふむ?

 あぁ、そういえば、機構人形はアビリティの枠が通常の種族より多いのでしたっけ。


 どう説明したものか。

 固有系統が全般的に機構人形よろしくシステム的な違いがあるのだとすれば、固有系統という表現で伝わるのか微妙な所ですよね。

 ステータス欄を見せてしまうのが手っ取り早いでしょうか。


 ぱぱっとステータス欄を開きシノの方へ渡します。

 ここら辺は現実の操作と同じような感覚でできるのですね。ありがたい。


 視線を手元に飛んできたウィンドウとこちらの間で泳がせると、


「……見せていいの?」


 そう問いかけてきます。


 確かに、この手のゲームは昔から、攻略サイト運営の方のように、よりプレイしやすいように情報を開示することが好きな方も居れば、自分で新しいものを見つけ自分だけの自分なりの進め方で進めていくのが好きな方もいらっしゃいますから、情報開示にはある程度の不安感? というか、その類の感情があるのですよね。


 ただそれも、つまるところははるかいにしえのリソースの奪い合いの名残なわけで、冷静に私の情報の価値という点で考えると、そもそも私と同じようにしようと思ったら機構人形を引き当てるところから始めないといけないわけですから、大して価値はないのですよね、実際。


 確かに、万が一同じ種族の方がいて、同じ種族だから情報を提供しろ、なんて言われたらそれはお断りさせていただきますけれど。


 同じ種族でもなさそうで、信用のあるシノに見せるくらいなら私としては一向にかまわないというお話です。


「私は構いませんよ?」

「なら、私も見せるから」


 ふむ。気を遣わせてしまったようで、なんか申し訳ないですね。

 無意識に気を遣わせてしまう行動をとってしまうのも、コミュ力が低い故なのでしょうか。


「別にいいですよ?」

「私がよくない」


 飛んできたウィンドウの『フレンドが、閲覧を許可しています。閲覧しますか?』の文字に対して承認。

 頑なに断ることでもないですし、一期組のステータス振りとか参考にさせていただきましょう。


 しばらくお互いのステータスを眺めていると、頭痛がするように目頭の間を揉むシノ。


「はぁ、レアには閲覧制限掛けなさいよ……

 見てない。見てないからね」


 その言葉に、私も閲覧制限の掛かっていないところを一通り見て、あまり参考にならないという理解だけしたところで顔を上げると、すでにこちらをじっと見ていたシノと目が合います。


「別になろうと思ってなれるものでもないでしょうし、大丈夫ですよ」


 後天性アビリティに関してはレベルゼロの取りたてなので取ろうと思えば皆様も同じものを得られますし、固有・先天に関しては言った通り、取ろうと思って取れるものではないですからね。


「ゲーマーの嫉妬を甘く見過ぎ」


 そう言う私に、シノは若干の呆れ顔です。

 確かに、私はあまりひとと関わるゲームはやらないので、その点ではシノの言葉の方が正しいのでしょうね。


「シノが嫉妬するのですか?

 私もシノだから見せただけなので大丈夫ですよ」


 フォロー、フォロー、っと。

 本音でもありますし。


 ふむ?

 言ってから気付きましたが、こういう言い方が怒ってる? と聞かれてしまう原因ですよね。

 にっこり笑顔で言ってあげられればいいのですが。


「シノのそういうちゃんとしたところ、好きですよ」


 フォローのフォローとかいう訳の分からない感じになってしまっていますが、見てわからないなら、ちゃんと伝えておくのが大事。


「……シロがそれでいいのなら、それで構わないのだけれど」


 合っていた瞳がついっと逸らされ、少し視線を空に泳がせた後、少し視線をずらしたまま言います。


 それでお互い納得し、その後は主にアビリティ以外に関して、気になったところを話していきました。


 アビリティに関しては私がまだ序盤過ぎてお話のし様がありませんし。


「――なら結構仕様が違うのね」


 一通り、設定やチュートリアルの時にお聞きしたステータスを見ただけではいまいち分からないような違いの部分を話していくと、当然ですがかなり違いがあることに気付きます。


 だからといって、それがゲームのしづらさになっているわけではなく、アビリティの数に関しても、通常種族では固有と先天が機構人形より一個ずつ多い代わりに、後天が六個だけのようでした。


 六個となると、私はもう五個取っているので、それでほぼいっぱいということですよね。

 取捨選択で精神にきそうです。

 お人形バンザイ。


 まぁ、シノ曰く、だからといって以降なにも取れなくなってしまうわけではなくて、いくつかのアビリティが統合されることもあるようで減ることはよくあるようです。

 あと五個の枠に精神をすり減らさなくても何とかなりそうで少し安心。


 ステータスの数値に関しては割合的な感覚だけ参考にさせていただきます。

 やはりフリークエストでステータスの値を上昇させていくことが出来るのは大きい様で数字はかなり大きいのですが、シノは筋魔といえばいいのか、STR寄りでINTにも多めに振ってある感じですね。

 HPに関しては1振ると20上がるそうですが、シノは装備とアクセサリで底上げして、ほとんど振っていないみたいです。

 それでも千を超えているのは、流石ですよね。

 これも一期組ではかなり低い方だそうで、かなり火力寄りだそうです。

 多い方だと、タンク、敵のヘイトを集めて味方を守るロールの方で、既に一万を超えている方がいるとのことで。


 そういえば、ステータス上昇系のクエストに関しては回数をこなすごとに達成条件がきつくなっていくそうですよ。

 シノの数値になると「達成がきつすぎる」と嘆いていました。


 私の場合もそうなのでしょうか?

 今の所、達成したのは『売って買って』だけですが、更新されたクエストを見ていませんでしたね。


 あと気になるのといえばやはり……


「翼は無いのですね?」


 そう、シノの種族。

 種族が鳥人(ミミズク)なのですよね。私の目に狂い無し。


 でも翼があるようには見えませんし。

 ある方を見たことがないので、無いものなのかもしれませんけど、あってほしいですよね。


「あるわよ、今は出してないけど」


 そんな期待に応えてくれるような回答に、心が躍ります。

 どうやら固有アビリティの効果で出したり引っ込めたりできるらしく、出していると、いろんな効果があるそうですが、そんなことよりも。


「気になります」

「え……」

「気になります」


 ずいっと顔を寄せて、私にできる全力の出してほしいなぁ感を滲み出させます。

 もふもふしたい。よそ様のモフモフをもふもふしたら怒られると思いますが、友人のモフモフをもふもふするのは許されると信じておりもふ。(もふもふのゲシュタルト崩壊)


 親しき中にも礼儀あり? 大丈夫。礼儀の範疇だと信じております。たぶん、きっと、めいびー……?


「別にいいけど」


 若干引かれたか、あるいは今更と呆れられているかもしれませんが、また少し視線を逸らしたシノの腰のあたりから、ふわふわの翼が片翼、私の前に差し出されます。


 思わずといった形で反射的に羽々の隙間に手を差し込んでしまいましたが、嗜みとしてはまず表面の艶感と跳ね返す空気感の強い弾力を楽しまねば真のもふらーとは言えな……


 やめておきましょう。

 大人しくします。


「ふわふわですね。

これ、感覚あるのですか?」


 頭の中でそんな風に考えていても表には出ないのが私クオリティー。

 働かない表情筋さんの利点はこれくらいですよね。


「ほとんど無いわね。

 せいぜいが少しくすぐったいくらい」

「というか動かせるのですね。普通はない器官なのに」

「まぁ、思考操作と感覚作動の中間って感じね」


 ここでいう思考操作は『こうして欲しい』と考えることによってそれが動く動作のことで、感覚作動はジャーキングや鳥肌が立ったりといった、感じたことに対して一定の動作が反射的に起こってしまうことを再現した動き方の事ですね。


 その中間ということは、意識的にも動かせるし、勝手にも動くし、ということなのでしょうかね。

 ふむ。もふもふです。

 顔押し付けてぐりぐりしたら流石に怒られるでしょうし、よしんば怒られなかったとしても周りから見たら不審者も甚だしいので、それはやめておきましょう。

 いいな、私も欲しい。


 ……いえ、駄目ですね。

 こういうのは自身から生えていても魅力がないのですよ。

 どこかにセルフもふもふは居ないものでしょうか(遠い目


 そんなことを考えながら、羽根、一本くらい抜けないかなぁ、とかも頭の片隅で考えながら丹念にもふっていくことしばらく。

 大分欲が収まってきたので、シノの翼から手を放します。


「……満足した?」

「はい、ありがとうございます」

「そう」


 出していた翼を引っ込めると、何となく集合してしまいましたが何をするとかは決めていなかったので軽く話し、金欠の私の為に近場の森、いつも行っていた場所ですね、取ったアビリティの試運転とステ振りがてら、そこでレアモブ狩りをすることにしました。


 高くなってきた日の光を浴びながら、学校のことに最近の事、主にリアルの事ですが、中央道を門へと歩いていく道中、二人でそんな適当なお喋りが続きます。

お読みいただきありがとうございます。


もしどこかで面白いと感じていただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。

あとブクマとかも(強欲

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