2-6アビリティの為に
皆様こんにちは。お世話になっております。
からすです。
そういえば、バナナという名前のブドウがあるそうですね?
だから何というわけではありませんが。
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ごりごりと石の擦れ合う僅かな音だけを立てながら開いてゆく街門。
内向きの門は特に誰か人が押している様子もなく、ぱっと見ではひとりでに開いている様にも見えます。
門はこれ、やはりファンタジーな不思議パワーで開閉しているのでしょうかね?
と、思ったのですが、よくよく観察してみると地面に半円形に数本の溝が開いていて、そこから出た爪が門をひっかけて開くように動いているのですね。
兵士さん達が立っていて、あまり近づけないので距離的によく見えませんが動力はそれだけに見えます。
ところで、あんな溝開いていましたっけ?
無動力で動いているというわけではなさそうなのはいいとして、こんなに静かなのもそもそもおかしいのですけれどね。
凄く気になる。
門の開く姿をまじまじと観察していると、門が開ききった後の地面の溝は、門を抑える爪を残して閉じ、道の模様の一部になるように設計されているようでした。
そういうことでしたか。これは芸術点高いですね。
エレベーターとかもそうですけど、仕組みとか詳しく知りたくなるのは私だけではないはず。
そういえば仕組みの見えるようになった一部が透明なエレベーター、ずっと見ていたなぁ、って思い出しちゃいました。なつかしいですね。
兵士さん達が道をあけると門前広場に溜まっていた方々は次々に外へ。
あ、今だったらセルフメンディングを発動できたかもしれないな、と気づいた時には既に広場の人口密度は減ってしまって、出たり入ったりの方しかいなくなってしまいました。
皆様素早い。
さて、私も出発するとしましょうか。
ボックスから宿り木葉のお守り袋と短剣、支給品エストックに支給品シャベルを全て取り出し装備。装備しないと意味がありません。からね。
短剣が右側、エストック・シャベルは左側に、と腰回りにばってんの形でベルトが巻き付き、お守り袋は短剣のベルトに括りつく形になりました。
短剣のみの時は後ろ側でしたけど、複数装備するとこうなるのですね。
これ、位置変えたりは……
右利きなので短剣が左にあった方がいいな、とそう思った瞬間、ベルトがしゅるしゅると形を変え、鞘入りの短剣の位置が左側に移動します。
あ、そうなるのですね。
感覚的に全部左側に行ってしまってバランスが悪いので元々左側に装備されたエストックとシャベルの位置を右側に変えて、これで準備完了。
人波に乗って街の外へ出ると、門の外に出た時点でクエスト名と0/8の表示とタイマーだけのウィンドウが二つポップし、視界の端で減り始めました。
人波は門からまっすぐに続く街道を進む組と道横の森の中へ散っていく組の二通りの組があるようです。
道を歩く方々は大体三~五人くらいの集団が多いのかな、という印象で、装備も初期装備もちらほらいらっしゃいますが、いてもうち一人二人とかで、大体はお洒落な方から奇抜な方までしっかり変更している方がほとんど。
この道の先がどこへ続いているとか知りませんが、そのうち遠くに旅したりしたいですよね。
でも、集団で行動しているのにはそれなりの意味があったりするのでしょうか?
もしかしたら、盗賊が出てくるよ、とか……
装備を整えても一人だと難しいとなったらどうしましょうね?
他のゲームよろしくプレイヤーでグループが作れたりはもちろんするのでしょうけど、そういうのは作るのも所属するのも、実はあまりしたくないのですよね。でも、付き合ってくれそうな友人は一人くらいしか思い当たりませんし。
野良さんで、ヒッチハイクみたいに目的地まで一緒に行動、とかでしょうか…… んー、私には無理そう。コワイのだ。
まぁ、今しばらくはまだこの街周辺で彷徨っていることになるでしょうし、考えても詮無いことですか。
その時になったら悩みましょう。
何とかなる、と思いたいですね……
思考を切って、森に散っていく方々に目を向けると、そちらの方々は一人あるいは二人組が多く、初期装備の方も比較的多く見かけます。
やはりここらへん周辺で活動している方は私同様、まだ序盤の方が多いのでしょうかね。
私の目的も森の中なので、道を外れ森の中へと進みます。
森の中では、浅い所から既に戦闘を行っている姿が多数見受けられました。
時間ももったいないかもしれませんが、周りにも湧き始めたモブたちを無視して、とりあえず奥へ奥へ。
人口密度が高いのでね。落ち着かないので少し薄くなるところまで移動しましょう。
しばらく進むと、まだ少し戦闘を行っている方は周りに居つつも、そこまで気になるほどではない程度になったので、ここらへんでクエストの作業を進めるとしましょうか。
まずはポポタの方のクエストを達成するために、シャベルを手にポポタ探し。
クエストには、花とは言われていないので花の咲いていないやつでもいいのでしょうから、すぐに見つかります。 ポポタはそこら中に生えているので。
根を切らずに、ということですから周りから慎重に掘っていきましょう。
シャベルをポポタ周りの土に突き刺して、掘り返していきます。
土自体はふかふかなので結構簡単に掘れますね。
どうやらポポタの根は本当にまっすぐに伸びていて結構太く、よほど雑にやらなければ切ってしまうことはなさそう。
これが細い根まで周りに伸びていたら大変でしたけどね。
というかこんなにまっすぐなら上引っ張ったら引っこ抜けそうな感じもしますが、前回の採集の時は普通に上だけちぎれましたから、こうして掘らないといけないようになっているのでしょうね。
片方を掘り進めてしばらく、結構掘ったところでようやく根の先端が見えました。
片側掘っただけで採取できればいいのですが。
そんな願いが伝わったのか、ある程度土を除けたところで『特殊採取が可能です』の文字がポポタからポップ。
可能です、と言われてもどうすれば?
普通に引っこ抜けばいいのでしょうか?
なんて思っていたら、新しく特殊採取についての説明が書かれたウィンドウがポップしました。
ふむ。
どうやら普通に引っこ抜いて大丈夫なようですね。
今掘っていたポポタを軽く引っ張ると、簡単に土から抜くことが出来ました。
それと同時に視界の端で0/8表示だったところが1/8に変化しています。
これを後七回ですね。
そんなに時間かからなかったので、時間的には余裕そうです。
兎にも角にも照会&情報請求のスキルを使ってみてみましょうか。
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『根付きのポポタ』
ポポタは全ての部位が広く利用されるが、根は特に強い効果を持つ。けれども地上部と切り離されればすぐにその効果はなくなってしまうのだ。
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ふーん?
クエスト専用のアイテムというわけではなくて、普通に素材扱いなのですね。
何に使うかわかりませんけど。
タンポポと同じなら、料理とか調薬とかそんなところでしょうか。
作れるものによりますけど、集めるの結構大変ですからね……
そんな調子で、探しては掘り、探しては掘り。
因みに、花の付いたものは「より効果が強い」の一文が付いただけでした。
若干、森狼のバックアタックにトラウマを抱えつつ、順調に採取を進め、ついに八本目の採取を完了。
時間は大体二十数分程度です。
慣れてきていたのか、最後の方は結構早く採取することが出来ていました。
完了になってもタイマーの進みは止まらないようで、あと大体四十分くらいでもう片方も済ませてしまわないと失敗になってしまいます。
急がないと。
もう片方は、角うさぎの角を折らずに。
そもそもとして、角うさぎと戦ったことがないので、なんで角が折れるのかわからないのですが、一先ず戦ってみるとしましょうか。
シャベルを仕舞い短剣を手に取り、角うさぎの後ろから近づきます。
物音か何かに反応したのか、こちらを振り向く仕草を見せた角うさぎにすかさず先制攻撃。
刺さった部分にダメージエフェクトが発生し、角うさぎからぽんっと15のダメージがポップしました。
角うさぎはひるむ様子もなく角をこちらに向け身体を低くしたかと思えば、後ろ足で地面を蹴り、飛び掛かってきます。
予備動作がしっかりあるのと、動きが直線的なので避けること自体は簡単にできるのですが、先端恐怖症というわけではなくとも普通に怖いです。
少し横に移動し突進を避けるとジャンプした角うさぎがそのまま横を通り過ぎていき…… そこにあった地面に突き刺さりました。
じったばったと暴れ、ボキッと音がしたかと思えば、10のダメージポップと共にキュゥウと鳴き声を上げながら、光の欠片となって消えていってしまいました……
これ今は地面に刺さりましたけど、人に刺さったとして、同じ運命を辿ることになると思うのですが、角うさぎはミツバチか何かですか?
どうすればいいのでしょう?
突撃してくる前に倒してしまうのが安定なのでしょうかね。
10で死んでしまったので、大体25ダメージくらいで倒せる計算ですよね。
そうしたら突撃してくる前に二撃与えられるように頑張ってみましょうか。
次の角うさぎに視線を移し、また背後から近づいていきます。
こちらを振り向く前に攻撃。
突撃のモーションに入ったところをもう一撃。
15と11のダメージポップが出たものの角うさぎは倒れる様子なく、突撃してきてしまいます。
痛った。
いえ、別に痛くはないのですが、反射的に言ってしまいますよね。
咄嗟に横に転がるように避けたものの、角が掠ってしまったのか、身体からダメージエフェクトが。
角うさぎは私の身体に当たったことで勢いが削がれたのか、今度は地面に刺さることなく、こちらを警戒するようにプゥプゥ鳴きながら後ろ足をタンタンしています。
おかしいですね?ダメージ的には倒せていたはずなのですが。
HPの個体差か、あるいは本当に角が折れたらダメなミツバチ的なアレなのか。
そうしたら、今はあれ? と思って避けるのが遅れてしまいましたが、攻撃モーション中に攻撃して、急いで避ける、で避けられると思うので、それでいきましょうか。
角うさぎと近すぎず、遠すぎずの距離を保ちながら攻撃モーションが来るのを待っていると、角をこちらに向けてきました。
ここですね。
急いで角うさぎに近寄り、一撃。
すぐに横に避けますがそんな必要はなかったようで、角うさぎは光の欠片となって消えていきました。
これで角を折らずに、が一体完了ということでいいようです。
少しして、角うさぎからドロップした入手アイテムのウィンドウが表示されます。
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New『上質な角うさぎの毛皮』
広く分布する角うさぎの角を折らずに倒すことで得ることのできる艶のある毛皮。
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なぜ、角を折らずに倒したら毛皮の品質が上がるのやら。
そういえば、角うさぎにスキルを使った時はまだレベルアップ前でしたね。情報請求も使ってみましょう。
そう思って近場の角うさぎにスキルを使ってみます。
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『角うさぎ』
広く分布する角うさぎ。その角は重要な武器であり感覚器官である。
※※
角うさぎの毛皮
・・・
・・・
・・・
※※
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んー、説明読んでも理由はよくわかりません。
これまでの仕様からして、何かしら理由はあるのでしょうけど。
詳しい方とかいたら聞いてみたいですね。
……この世界、敵モブの学者さんみたいな方とかいらっしゃるのでしょうか?
角うさぎのドロップ品の枠は四つあるのですね。そうしたらこれの他にあと三つ。とりあえず角は落ちると思いますけど、他はお肉とかそういうのでしょうか。
そんなことを考ええつつ、二匹目も一匹目を倒したのと同じ流れで、と思ったのですがそううまくもいかず。
どうやら先ほどは私に掠ったおかげで突き刺さることが無かっただけのようで、完全に避けてしまうとそのまま地面に刺さって消えてしまいました。
この倒し方でも一応普通に倒した判定でいい様で、毛皮をドロップしました。
見比べることが出来るので、よしとしましょう。
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『角うさぎの毛皮』
広く分布する角うさぎの毛皮。その小さな毛皮は大きなものを作るのには向かない。
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一応、別アイテム扱いのようですね。ボックス内では一緒にはスタックできないので。
というか急がないと。時間が。
そうしたら、少し喰らう覚悟でいくしかないですよね。
でも直撃すると角が折れちゃいそうな予感がしますし。
難しいですが頑張りましょう。
あ、違いますよ。
そうです。だから致命用のエストックですか。
バックアタック判定でダメージ上がってましたし、そこに致命的な攻撃が乗ったら一撃で倒せたりするのでは?
短剣を仕舞いエストックを手にして挑戦してみると、思った通り、21ダメージ。
一撃というわけにはいきませんでしたが。
その後の追撃の一撃で倒せるダメージです。
そんなこんなで角うさぎ達と格闘することしばらく。
何度か最初に致命が出なかった時は角を折ってしまいながらも、角うさぎ達を順調に倒していきます。
最後の角うさぎを倒した時には既に時間が残り10分を切ってしまっていました。
急いで帰らないと。
ドロップ品は『角うさぎの肉』とその上質品、そして『角うさぎの角』でした。
もう一つはドロップしなかったのでわかりません。
『角うさぎの角』は角を折らずに倒した時の限定ドロップなのか、上質品はありません。
あと、角の説明欄を見たら何となく品質に影響する理由がわかりましたよ。
角に触れられたり、折れたりするのはとてもストレスなのだそうです。
なので、折れたらドロップ品の品質が悪くなるし、いつもきれいにしていてとても鋭い、と。
本当に折れたらダメなミツバチ的なアレだったのですね。
なら武器になんてしなければいいのに、なんて動物? に言っても仕方ないのでしょうけどね。
リペアオイルを使ってHPを回復しておいて、と。
帰路を急ぎます。
お読みいただきありがとうございます。
もしどこかで面白いと感じいただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。
あとブクマとかも(強欲