2-5習得クエスト
皆様こんにちは。お世話になっております。
からすです。
そういえば、板チョコの溝は割りやすくするためにあるわけではないのでしたっけ?
だから何というわけではありませんが。
●〇●〇
受付さんの「次の方どうぞ~」の声に、空いた窓口へ進みます。
窓口の見た目自体は他の場所とあまり変わりませんね。
他の窓口でも実際にものを取り出して取引しているわけではないようなので。
それはそうですよね。恐ろしい数を持ち込んでくる方も居るでしょうし、一々ボックスから取り出して実際に、なんてやっていたら窓口が素材の海に沈んでしまいます。
「買取をご希望の方でしょうか?」
「あ、いえ」
くるくるっと頭の横に太めの青みがかった黒色の角が巻き、黒毛に包まれた耳のてろん垂れた可愛らしい受付さんの問いかけに手元のチケットを差し出しながら答えます。
何でしょうね?
角は結構硬そうで、灯りを反射するくらいには艶やかで、普通に触ってみたいかもしれません。美角さんです。
黒髪とのコントラストもぐっどです。
「はい、アビリティの習得申請ですね。畏まりました。
ギルド証も一緒にご提出お願いいたします」
いわれた通り、ギルド証も取り出して美角受付さんに渡しました。
「買取窓口は初めてのご利用ですね?」
「あ、はい」
ギルド証を確認し、そう問いかけてくる美角受付さんの確認に答えます。
「はい、ご利用ありがとうございます。
初利用ということで、こちらの内容をご確認の上、承認をお願いいたします。
こちらの内容は、ギルド証の詳細からいつでもご確認いただけますので」
そう言って差し出されたウィンドウを受け取りながら、目を通していきます。
内容としては、買取窓口で買い取れるものそうでないもの、あとは窓口のシステム的なことですね。
買取窓口は不要素材を買い取ってポイントに変換してくださるそうで、ポイントはギルド内の売店・施設などで利用が可能だそうです。
それでも単純にお金に換えた方が汎用性は高そうではありますが、なんでしょう? ポイントでしか交換できないアイテムがあるとかなのでしょうかね。
あるいは利率が高いか。
後で売店とかも覗いてみたいですね。
魅力的なら、私も不用品で溢れた時にお世話になりましょう。
一通り目を通して内容を承認し、美角受付さんにウィンドウをお返しいたします。
「はい、ありがとうございます。
そうしましたら、ギルド証はお返しいたしますね。
アビリティの習得クエストは時間制限のあるものになりますが、二件ともの申請でよろしいですか?」
ふむ? 時間制限とな?
どうしましょう。二つ受けても達成可能ならいっぺんに受けておきたいところですよね。
でもそれで達成できないと、どうなるのでしょうね?
「えっと、クエストの内容って確認できますか?」
「はい、畏まりました。
――こちらが、両クエストの内容になります」
美角受付さんが少し手元を操作し、ウィンドウをポップさせます。
差し出されたウィンドウを確認。
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【採取者の知恵】アビリティ習得クエスト
素材は、素材に合った方法によって採取することで、品質が大きく増加します。
達成条件:ポポタの根を切らずに8本採取
支給品:支給品シャベル
※このクエストは開始後1時間以内に達成してください。
※未達の場合は再度受注し最初から行ってください。
制限時間:60:00:00
報酬:アビリティ『採取者の才』
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こちらが、『採取者の才』のものですね。
一時間というのはリアル一時間のようですね。たぶん。
支給品がシャベルということは地面を掘ってくださいねということなのでしょうね。
ポポタって、あのタンポポみたいなやつですよね?
タンポポの根ってとっても長いのではなかったでしたっけ。
それを八本となると少し不安ですよね。
とりあえず、もう片方も確認。
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【素材に見える】アビリティ習得クエスト
魔物は、魔物に合った方法によって討伐することで、ドロップ品の品質が大きく増加します。
達成条件:角うさぎの角を折らずに討伐8体
支給品:支給品エストック
※このクエストは開始後1時間以内に達成してください。
※未達の場合は再度受注し最初から行ってください。
制限時間:60:00:00
報酬:アビリティ『解体の才』
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角うさぎは、アレですよね。森に入って最初に出会ったやつ。
私は戦いませんでしたけど、あれ、角折れるのですか?
というより、クエスト内容的に折れるのが当たり前みたいな書き方されていますけど……
ふむ。
まぁ、失敗しても再受注はできるようですし、片方を達成して時間的に余裕があればもう片方も、ということでいいでしょう。
「二つともでお願いします」
「はい、畏まりました」
そう言って、美角受付さんがチケットを機械に入れると、吸い込まれたチケットの代わりにウィンドウが排出されてきます。
毎度こんなのを見ているとパスタの生地を伸ばすやつみたいに見えてきますよね。
「では、こちらの内容をご確認の上、達成後再度こちらの受付へお越しください」
差し出されたウィンドウには、制限時間(まだ減り始めていません)と達成数が記録される形になっているようです。
ウィンドウを受け取り、同時に差し出された支給品シャベルとエストックを受け取ります。
これらはクエスト終了時、あるいはクエスト失敗時に自動的に返還される、と書いてありました。
エストックは短剣扱いで、刃が付いておらず本当に突き刺すことに特化した短剣ですね。
説明では、その代わりに致命的な攻撃が出やすくなっているようです。
とはいえ、この支給品エストックはこのクエスト専用のアイテムで、普通に使っても役に立たないみたいなので、クエストを受け続けてこれを使い続けるみたいな悪いことはできないようになっているのでしょう。
支給品シャベルの方は何の変哲もないシャベルですね。
うん、特に。
そそくさと窓口を離れますが、まだ制限時間のカウントは始まらないみたい。
どこ開始なのでしょうね?
そんな疑問を抱きながら一旦ウィンドウは閉じておきまして、外に向かう……前に、リペアオイルが欲しいのですよね。
巡回クエで、消費してしまったので。
ギルドの入り口付近の総合受付に向かいヒト耳の受付さんに聞いてみると、クラフトスペースで言えば購入できるようなので、今度はそちらへ。
クラフトスペースの受付までくると、ツナギやらなにやらを身に着けた方々が受付横の並んだ扉から頻繁に出入りしている様子でした。
それを横目に、私は窓口へ。
クラフトスペースの窓口は三つしかないようです。
そして、いずれの受付さんも寝ているってお話、します……?
受付さん方もツナギを着た方々なのですが、それはもう気持ちよさそうにくかーっと寝ている方とカウンターにうつ伏せになって寝ている方、頬杖をついて微動だにしない方とそれはもう個性豊か。
とりあえず、一番すぐ起きてくださりそうな頬杖をついている方の窓口に向かいます。
すると。
「あ、その子起きないので、こちらにどうぞ~」
隣の窓口からそんな声が。
いきなり予想だにしない方向から声を掛けられ、びくっとしてしまいます。
声をかけてきたのは、うつ伏せ状態で寝ていた受付さんでした。
寝ている時はなかったか見えなかったか、なんかミミズクみたいに頭の上に羽が立っているのは、寝ぐせなのかそうでないのか……
ボリュームのあるふわふわの髪に包まれて、耳の位置はよく見えませんが、ヒト耳ではなさそうです。たぶんね。
すすすっと横移動でそちらの窓口に移ります。
「はい、いらっしゃいませ~。
クラフトスペースをご利用ですかぁ~?」
「あ、いえ、リペアオイルが欲しいのですが」
口元とカウンターの書類に垂れた涎がすごく気になるのですが、突っ込まないことにします。
気になるといっても、性癖の話では無くて普通に拭きたいというお話ですが。
「あ、は~い、リペアオイルですね。少々お待ちくださ~い」
よっこいしょ、と席を立った羽耳受付さんは、一旦奥へ引っ込むとすぐに戻ってきます。
「何本いります~?」
「あ、八本お願いします」
お金もありますし、とりあえず買い込んでおきましょう。
だいぶ使ってしまいましたし。
「は~い」
改めて奥に引っ込んだ羽耳受付さんは、すこししてケースに入ったリペアオイルを持って戻ってきます。
窓口横の機械を叩き、手元で何かを…… といったところで気付いたのか、よれた書類を見て一瞬固まり、再起動。
書類を丸めてゴミ箱にポイすると、ウエットティッシュのような何かで手とカウンターを拭き、手元で打ち込み作業を。
なんか、行動が一々面白いというかなんというか、見ていると楽しいですね。
そんな行動を眺めて少し。
「は~い、そうしたら、一本30 Cが八本で、240 Cになりま~す」
表示された売買用のウィンドウで取引の承認ボタンをぽちっとな。
チャリンという音と共に、カウンターに置かれたリペアオイルがボックスに移ります。
「は~い、ありがとうございま~す。また御贔屓に~」
「ありがとうございました」
私も羽耳受付さんに軽く会釈をしながらお礼を言って、窓口を離れます。
羽耳受付さんはひらひらと手を振って見送ってくださった後、またカウンターに突っ伏して寝始めてしまいました。
買ってしまった後ですが、そういえばと思いマケボの方へ足を運びます。
マケボでリペアオイルを検索。
ふむ?
こういうのは二束三文で売られているのが通例ですが、そんなことは無いようで、30 C以下の出品はありませんでした。
というより、試してみたのですが30 C以下では出品できないようになっているみたいです。
30 C以下で入力すると、ギルド価格公正取引規則によって登録できない価格です。と出てしまい、弾かれてしまいました。
ちゃんとできているのですね。
そうしたら確かに、手数料がある分、ショップで普通に買った方が安いですよね。結果オーライ。
忘れていたことも確認できたので、マケボを離れます。
ギルドを出ると、ギルドに入ったときは街灯に照らされていた街並みは、かなり明るくなった空に照らされ始めていました。
アビリティを何にするかでかなり悩んでいたので、さもありなんという感じですが、時間が経つのが早いですね。
それでも街壁のせいで街はまだまだ暗いですが、そろそろ朝に近くなってきているようです。
中央通りを歩み、早々に街門のところまでたどり着いたのですが、そういえば、夜になったときに門が閉まっていたのを忘れていました。
いまだに門は閉ざされています。
ちらりと確認したウィンドウでは、まだカウントが始まっていなかったので、そこのところは安心。
気を付けねばいけませんね。
門前広場の端、適当な門の見えるところに腰掛け、セルフメンテナンスを発動。
その状態で、思考操作でボックスの中身やら見そびれていた説明やらを確認していきます。
そういえば完全に忘れていましたが、最初のクエストでもらっていた宿り木葉のお守り袋はドロップ率をわずかに上昇させるものだったようで、若干ショックを受けたのはヒミツ。
アクセサリ枠なので私でも装備できますし、しっかりと装備しておかないとですね。
あとは仕様として、一度スキルで照会と情報請求をしたものは次からスキルを使わなくても見られてしまうので、まだ使ってないものを確認しつつスキルを使って数稼ぎをしていきます。
とはいえ、手持ちだとそんなに数があるわけでもないのですが。
何か特にめぼしい情報があるというわけでもなく、リペアオイルを一本使ったのみで一通りの詳細を見終えました。
あとはチュートリアルでもツバキさんが言っていたように、仕様の確認の為にシステムから説明をのんびり眺めつつ、ぼーっとしていると。
十分くらいの時間が経った時です。
~ピロリン~
おっ?
ウィンドウが表示されます。
一旦セルフメンテを中断して、アビリティを確認してみましょう。
やっぱり1に上がるのは早いですね。
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『変化を知る機械』Lv.0 → Lv.1
ヒトを真似、無機質によって形作られた身体は、心によって変化し流れの中に存在し続ける。
スキル▼:A 自己管理▼
A 最適化▼ - New
A 自己戦闘適化
A 自己環境適化
A 自己作業適化
SP:6
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これはまた。
名前もテキストも結構変わりましたね。
ある意味では、当たり前の進化という感じです。
スキルは三つも増えました。
固有アビは三つずつ増えていくのでしょうか?
兎にも角にも、スキルを確認していきます。
適化系のスキルは、使用時にステータス変化と該当アビリティの性能上昇する効果のようですね。
ステータス変化に関しては、『戦闘適化』は攻撃系が上がって技能系が下がりますし、『作業適化』はその逆。『環境適化』は防御系が上がり、減少するものは無いようです。
これらも、同時に発動することはできないみたいですね。
上昇率は多分割合ですね。どれくらいかはよくわかりませんけれど。
ふむ。
TECで戦うなら戦闘中でも『作業適化』でいいですよね。
夢が広がりんぐ。
そんなことをうんうんとやっていたら、どうやら開門時間になったようで、がらんがらんと、閉門時には鳴っていなかったはずの鐘の音が響き、驚くほど静かに、街門が開いていきます。
目を瞑っていたり、手元ばかり見ていたので気付きませんでしたが、門前広場には意外と多くの方が集まって開門の時を待っていました。
お読みいただきありがとうございます。
もしどこかで面白いと感じいただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。
あとブクマとかも(強欲
追記.
誤字報告誠にありがとうございます。感謝感謝でございます。




