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2-2頑張った

皆様こんにちは。お世話になっております。

からすです。

そういえば、ピンク色の着色料は虫が原料なのだそうですね?

だから何というわけではありませんが。


●〇●〇


 えっ?

 このクエストこんなに難易度高いんですか?

 アビリティ合計0のクエストですよ?


 よしんば、だんだん敵モブが強くなっていった結果のこれ、なら納得できなくもないのですけど、今まではちょっとどんくさ可愛い蝙蝠たちだったじゃないですか。


 それがいきなりこうなるとちょっと違和感しか感じません。


 こういうものなのかもしれませんけどね。

 あるいは、このゲームの演出が上手すぎるか。


 目を離したらその瞬間には倒されてしまっていそうな感覚を抱く中、少し離れた位置から、強く長く、響く鈴の音と閃光。

 もし発生源を直視していたら、目がやられていたことが確実なほど強い閃光です。


 継続的に光は発され続けているのか、瞬間ほどではないにせよ、辺りがかなり明るい状態になっています。


 ちらちとそちらを確認すると、光を出しているのは兵士さんだったようです。

先ほどの一連もそうなのでしょうね。


「援軍を呼びました! 来るまでの辛抱です!」


 あぁ、おーけー!

 時間稼ぎクエストですね。


 梟さん、ルフ・ファナは目を細め視線をそちらに移らせると、片翼を大きく開きます。


 その瞬間、翼から黒い何かが飛来する様子に反射的に避けましたが、狙いは私ではありませんでした。

 カッカッカッ…… と無数の音。

 音のした方へ目をやると、いつの間にやら兵士さんが構えていた盾に無数の黒い羽が突き刺さっています。


 あれがこちらに向いたら、お祈り回避で運ゲーするしかないって話し、します?


 兵士さんが突き刺さった羽を剣で切り落とし、盾の表を拳で叩き鳴らすと、金属と金属がぶつかり、大きな音が。

 スキルを使ったのか、ただ打ち鳴らしたとは思えないほど身体に響きます。


「攻撃は、私が引き受けます!」


 その音に反応するように、ルフ・ファナが翼を大きく羽ばたかせ飛び上がり、兵士さんに向かってその鋭い爪で飛び掛かりました。


 あっ、と思った時にはもう既に衝突。

 先ほどまでコモリのメスにノックバックされていた姿に、哀れ一瞬にしてやられてしまうところまで幻視してしまいます。


 しかし、それは予想外の方向に裏切られることに。


「はぁあっ!」


 盾を構えた兵士さんが、一歩強く踏み出し、衝突に合わせて盾を。

 バッシュ、と言うのでしたか。


 兵士さんも少しダメージを食らったようですが、それによって、ルフの伸ばし切っていた脚は畳まれ、盾が胴体を強かに打ち付けます。

 ルフの方は、羽毛の所為かそこまでダメージを負ったようには見えませんが、それでも弾き飛ばされたことで、一時的に地面でバタバタと暴れまわっています。


 兵士さん、つよー……


「攻撃しておけば奴も起き上がりづらいでしょう! お願いします!」


 転がしたルフに対して追撃を仕掛ける兵士さんに頼もしさを感じながら、こちらも、せっかくできたチャンスを無駄にするのももったいないので、起き上がらないように、短剣を片手に攻撃を仕掛けます。

 どうやら、翼自体には攻撃判定は無いようで、もふもふするだけで特にダメージは喰らいません。


 せっせと短剣での攻撃で1を量産していると、ルフが体勢を立て直し、飛び上がってしまいます。

 再度、倉庫の屋根へ降りたルフとの、にらみ合いが。


 不意に、今まで兵士さんを注視していたルフの視線がこちらへ移ります。


「避けて!」


 こちらへ叫ぶ兵士さんの声。

 開かれる片翼。


 あっ、と思い、避けなきゃ、と考えるまではいいのですが、それに身体は付いてきてくれません。


 結果、回避行動をとり始めることすらできずに、先ほど盾に刺さっていた無数の羽が身体に突き立ちます。


 この間、ゼロコンマ1秒の出来事である、みたいなモノローグが流れていてもおかしくないくらいの感覚でした。

 実際そんなことは無いわけですけど。


 羽は即座に光の欠片となっていき、身体に痕跡が残ることもありませんでした。

 けれど、HPを確認すると今の一撃でおよそ八割が吹き飛んでいます。


 死ななかっただけで御の字と言えるのか。

 慌ててリペアオイルを使用し回復します。


 残りは三本。

 いけるでしょうか……


 ルフはそんな不安を抱く暇も与えてくれません。

 回復を使用したのに反応したように、先ほどの飛び掛かり攻撃のモーションに入ります。対象は、もちろんこちら。


 むり! ムリです! 許して下さい! ごめんなさい!


 心の中で叫び声を上げながら、慌てて先ほど兵士さんのいた所まで走ります。


 なぜって、そりゃあ、兵士さんに守ってほしくて?

 もう、兵士さんの後ろまで全力疾走です。

 卑怯鬼畜と言うなかれ。必死なのです。


 飛び込むように兵士さんの後ろまで逃げ込むと、兵士さんも察してくれたのか、盾を構えルフの攻撃に備えます。


 盾越しに、飛び掛かってくる姿が。


 再度、気合の一声と共に放たれたバッシュによって先ほど同様に転がされるルフ。

 特に学習したりはしないのでしょうか。

 ……意外と鳥頭?


 暴れまわるところにすかさず追撃。

 これどういう仕組みなのでしょうね? 与えたダメージによってダウンの時間が伸びてる感じなのでしょうか?

 兵士さんは普通に二桁ダメージなので、ダメージは1固定というわけではなくて、私の火力が低いだけなのでしょう。


 あれですね。世の猛者たちが、倒してみた、とかを何かのサイトに上げるやつですね。


 そんな作業を数度繰り返し、しばらく。

 八度目の強襲。

 そのバッシュで喰らったダメージに、ついに兵士さんが膝をついてしまいます。


 まずいですよね?

 あとどれくらい時間を稼げばいいのかわかりませんけど、あの飛び掛かりはまだしも、あの羽根飛ばしを避けられる気がしないのですよね。


 あぁ、私も普通の回復薬持っておけばよかったです……

 そうしたら、兵士さん回復できてますよね。


 もう、気合で避けるしか、ですよ。


 集中と気持ちを落ち着けるために、軽く深呼吸。

 実際に流れてはいませんが、気分の中で流れた冷や汗を拭うように額を擦ります。


 少しでも身軽になるために、装備してない、と意識して短剣も外し、相手の動きをよく観察。


 飛び掛かりは、一旦少し上に浮上して、上がりきったら一拍、回避。

 羽根飛ばしは飛んでいる状態ではできないようなので、屋根の上に降りて、羽を広げて、広げ切ったと同時に回避。


 よしっ


 リペアオイルは三本、四回までのミスは許されます。

 とはいえそれに甘えたら死ぬので、ミスはしないつもりで。

 何より飛び掛かりは喰らったことないので、即死かもしれませんし。


 さあ、来なさい。


 飛び掛かり。 今!

 飛び掛かり。 今!


 降下。 ……きた。

 目を離さない目を離さない目を離さない――


 ――いまぁっ!


 横に飛び込むように回避。

 ほぼ同時に背後からカカカッ、と音が。

 這いつくばる形で倒れ込んだ身体をすぐに起こします。

 ひっひっふー、ひっひっふー…… 無理、ほんと無理。

 これ何度もやるとか、ちょっと精神力が持つ気がしないのですけど?


 さっとルフの方に向き直ると、もうすでに飛び掛かりの体勢に移っていました。

 その姿に回避タイミングを計りながら、飛び掛かりは避けて、羽根飛ばしはあと四回喰らって時間がだめなら今回は諦めようかな、という考えが頭をよぎったその時です。


 その瞬間は見ていないのですよ。

 飛び掛かり回避した瞬間でしたので。


 背後から甲高い鳴き声が聞こえ、その声に振り返るとそこには胴体から光の欠片と凄まじい数値のダメージ表記を零し、地に伏すルフの姿。


 そしてその傍らには、抜身の長剣を携え、月明かりに煌めく紅色の髪をたなびかせながら凛と立つ騎士様の姿が。

 弾け砕けるルフの光の欠片が、宙を舞い、その姿を一層艶やかに彩ります。


 装備は、兵士さん達のものとは少し違った趣で、かなり、青白い? ですね。

 あと、ご主張なされている戦闘力の高い胸部装甲から、女性であることがわかります。


 騎士様は、てきぱきと周りの兵士さんと同じ装備をした方々に指示を飛ばし、周りの方も何かしらの作業を進めているようです。何をしているのかは、私にはわかりませんが。


 これで、このクエストも完了でしょうか?

 そんな姿を眺めながら、クエストが進むのを待っていると、騎士様がこちらに話しかけてきました。


「救援遅れまして、申し訳ありませんでした。

 巡回にご協力いただいていた方で、よろしかったでしょうか?」

「あ、はい、そうです」


 詰所の方同様、片膝をついて目線を合わせて話してくださる騎士様。

 人と話すのは結構緊張するので、意外と助かります。

 ちゃんとクエスト関連のお話のようで、騎士様の問いかけにうなずきながら返事を返します。


「ありがとうございます。

 依頼は、現時点で達成とさせていただきます。

 ルフ・ファナの襲撃は不測の事態でした。

 今回の報酬は依頼表記に上乗せいたしますので、その形でご了承ください」

「あ、はい、大丈夫です。ありがとうございます」


 あ、そうなのですね。

 一応、特殊イベントといえば特殊イベントだったのでしょうか。

 何か変な条件踏みましたっけ?


 まぁ、そこら辺を考察するのはひとまず置いておきましょう。


 報酬の上乗せってことは、1000 Cプラスアルファってことですよね。

 ありがたやー


「ありがとうございます。

 では、報酬は詰所でお支払いいたしますので、ご同行をお願いいたします」

「あ、はい」


 そう言われて、大人しく騎士様について行きます。

 ご同行って言われると、なんだか感覚的にはすごく不安になるのですけど。

 特に不穏な雰囲気もなく、最初の詰所まで戻ってきました。


 中に通され、先ほどクエストの説明を受けたのと同じ場所で少し待っていると、袋を持った兵士さんが現れます。

 騎士様ではないんですね…… いえ、だからどうというわけでもないのですけど。


「こちらが、今回の報酬になります。ご確認ください」


 袋を受け取ると袋はチャリンという音共に光の欠片と消えいきます。


 ~ポーン… ポンッ~


 ウィンドウがポップし、達成のハンコが押されるついでに、追加報酬の内容も確認できないか少し見てみます。


==========

【倉庫の定期巡回補助】フリークエスト

 害獣などが出てくる場合があるため、戦闘要員としてのご協力をお願いいたします。


達成条件:対象倉庫への巡回補助


報酬: 1000 C

※追加報酬として1000 Cが上乗せされました。

==========


 ばばば、ばいですよ! 倍!


 確かに結構きつかったですが、それにしても倍は凄いですね。

 思わぬ臨時収入でほくほく。


「ご確認いただけましたでしょうか?

 今回は不測の事態の発生と、その対処へのご協力に報酬を1000 C上乗せいたしました」

「あ、はい、間違いありません」


 ステータスの表示でもちゃんと2000 C増えていることが確認できたので、何も問題ありません。

 条件わかりませんけど、毎度これでもいいくらいですよね。

 最後の方は飛び掛かりなら割と余裕をもって避けられましたし、羽根飛ばしだけ兵士さんにお願いしたらそんなきつい事ないですよね。

 皮算用ですけど。


「ありがとうございます。

 それでは、またのご協力をお待ちしております」


 改めて、兵士さん方にお礼を言って、詰所を後にします。

 さーて、これで一先ず受けていたクエストは三つとも達成しましたね。


 時間も時間ですし、一旦ログアウトしてもいいですけど、その前にあたらしく……


 あっ、そうですよ、今の戦闘? での身体部品の消耗具合とかも確認しておかないと。

 アビリティレベルも上がっているといいのですけど。

 でも、照会と請求以外は使ってないので、上がっているとしたらそちらですよね。


 まずは身体部品の欄を確認。

 流石にそろそろかな、と思って見てみると案の定。頭以外の各身体部品の横にいよいよ『軽度劣化』の文字が付いていました。

 消耗の方は未だ表示がないので、まだ大丈夫なのでしょうね。

 とはいえ、表示のない状態でもセルフ系のスキルが使えたので、減り方はおそらく閾値式ではなくて、パーセンテージなのでしょうね。


 大体どれくらいで、どれくらい、とかは知っておきたいものですけど、出来るとしたら、セルフ系のスキルの必要時間から計算するくらいでしょうか……?


 めんどくさい……


 そこらへんは感覚でいいかなぁ、なんて。

 そのうち感覚で、これくらい、ってわかるようになるでしょう。たぶん、おそらく、メイビー


 アビリティの方は、っと。

 特に、レベルが上がっていたりは無いようでした。

 そうですよね。そんなに数使っていませんし。


 と、いうことは、受けられるクエストは、合計1のやつだけということになりますよね。


 どうしましょうか。

 一旦、クエスト覗いてみて、本当にやってみたいのがあれば受けておいて、そろそろアビリティ取りましょうか。


 何にしましょうかねぇ……

 創作系は色々取りたいとして、戦闘系も必要ですよね。

 創作系は、あれやこれやと取りたいものが思い浮かぶのですけど、戦闘系はいまいち。何か良いのあるでしょうか?


 って、そんなこと考える以前に、具体的なアビリティの取り方すらわからないのですから、考えるのはそれからですね。


 えっと、チュートリアルクエストが、アビリティをとってみよう、のやつでしたよね。

 開始位置は、ギルドの、アビリティ習得紹介受付ですね。


 そしたら、ギルドに行きます、クエストちょっと眺めます、からの一旦ログアウトしてご飯食べて、からのアビリティ習得紹介受付という感じのルートで行きましょう。

 よし。


 ルートを頭の中で組み立てて、もうすっかり暗くなり、街明かりに照らされる中央道をギルドへと歩みを進めます。


お読みいただきありがとうございます。


もしどこかで面白いと感じいただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。

あとブクマとかも(強欲

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