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2022/04/10

テスト投稿です。


皆様初めまして、からすと申します。

ところで、鰻の血には毒があるって知っていますか?

だから何というわけではありませんが。


●〇●〇


 12024年



 人間社会は技術的に大きく進歩しました。


 高度に発達した科学は魔法と区別がつかない。

 なんて、言葉に表される通り、今、世界には、まさしく過去に物語の中で魔法のように語られていた技術で満ちておりました。


 その中で、最も文明社会に深く入り込み、社会の一部、なくてはならない技術として発展したものがあります。



 ヴァーチャルリアリティ技術。通称VR技術。


 情報のレベルの世界に人間の認識できる仮想空間を固定、機械的な処理を加え人間が知覚的に認識できる情報に変換、そこへ人間の存在を投射することで、まさに、ヴァーチャルの世界にリアルを創り出す技術です。


 VR技術が開発されたのは、はや数十世紀前までさかのぼります。



 その頃の人類は紆余曲折、山あり谷あり様々な問題を歴史の中で乗り越え、ついに命を懸けて争う歴史に終止符を打つ局面に立っていました。


 もちろん、人が争うことは無くなりません。それは仕方がないことです。どのような形であれ、争うことが無くなれば生きてはいけないのですから。

 ですが、そこに血が流れることだけは、確実に、そして圧倒的に、減ったのです。



 VR技術は、話し合いが第一となり始めた世界の中で多く利用され、中核を成す技術となっていました。

 現代を作った一柱とも言えるVRに関する基本的な技術は、開発が始まった当初から数えても、比較的早い段階で完全に安定したものとなります。


 もちろん並行して、基礎科学的、技術的なその他も十分に進歩を進めてきましが、VRとそれに類する技術には及ばないでしょう。


 人の生き方は、平和な世界で長い時間を生き、より高度な技術に囲まれ、自分たちの傷つけてきた地球を治療しながら、生きるような生き方に遷移しました。


 そしてまた、長い時が流れます……


 人間の生活の場がVRの世界にも広がり長い年月が経てば、人は現実と仮想現実、どちらでどれだけ生きるのか、そこに折り合いをつけていきます。


 現実と仮想現実がおよそ7:3


 それが、人類が『生きている』という枠で充実して過ごすために見つけた比率でした。


 世界の約3割が仮想現実を用いた社会に置き換わり、約7割を人間は現実で生きる。


 意外にもこれは、一般レベルでは人間の生き方や文化に対して技術に対する適応以上の変化をもたらしませんでした。

 つまり、数千年単位での安定期に入った人間社会は、されど利便性の高い技術に適応した生活様式以外は、古い時代の生活とほとんど変わっていないのです。


 ちょっと残念かもしれません。ですがそれでいいのです。


 身の周りのことを全部やってくれる万能の便利ロボットなんていませんし、会社だって、学校だってあります。それでいい、と、人間はどこかで思っているのです。


 ただ生活に便利なものがちょっとだけ増えて、人間という生き物が少しだけおおらかに、優しくなっただけの世界。


 これは、そんな現代に生きる、ちょっとゲームが好きなだけの一人の普通の女子高生のお話。


 VR技術が子供のお小遣いでも買えるくらいに『あたりまえ』の技術になった未来のお話です。



●〇●〇



 VRMMORPGというジャンルを知っていますか?

 これはVirtual Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Gameの略称になります。


 直訳すると、仮想現実性大規模多人数同時参加型のオンラインRPGとなりますね。


 MMORPGというジャンルは相当な昔から続くゲームジャンルの一大巨塔であり、それはもはや単純なゲーム業界にとどまらないものです。


 ゲームをしないという人でも、わからないという人はいないと断言して問題のないのではないでしょうか。

 現代においてはむしろ、わからない、となると生活に支障が出かねないと思いますが……


 その中でも、VR型のものは現代におけるMMORPGのスタンダードであり、MMORPGといえばVRMMORPGを指していると言うに等しいかと思われます。


 VRに関する諸々の技術は、はや数世紀前には完全に技術的に煮詰まり、安定した技術となりました。


 それらは、単純に言えば仮想現実、物体を存在の次元と物質の次元に分け、それを電子的なものとして処理し、複製・運用することで、電子領域内に、まさに、もう一つの世界を創り出し、存在だけを完全に没入させる形で、現実のような感覚と経験を、と表現されるものです。



 中・高等学校で必修となる技術史の授業では、物体を存在と物質に分けるような考え方は、紀元前うん百年前、そして、このVR技術が人に想像され始めたのは1800年代だと言われており云々かんぬんと想像もできないような昔の話から技術の歴史を私たちは5年以上かけて学ぶことになります。


 その頃はまだ空想の技術だったらしいですが、うちのおじいちゃん先生もよく言う、人に想像できるものは技術的に再現が可能である、と言うのは本当だということですね。


 技術的な話は一般の人にはよくわからないことも多いですが、まあ、知らなくても困らないので今は置いておくとしましょう。


 さて、こんな益体のない話は休題として。

 高校が夏休みに入ってから今日で三日目。


 夏休み用の課題も初日のうちに終わらせて、昨日は日がな一日寝て過ごしたので昨日の記憶はありません。

 寝だめ十分。気合十分。今なら二日くらいの徹夜ならいけそうな気がします。


 今、そんな万全を期した私の手元に、とある一本のゲームのデータキューブがあります。


『Roots』


 数々の人気ゲームを輩出してきたアステルエンターテイメントが去年、満を持してサービスを開始した新作VRMMORPGです。


 初回50万アカウントは応募者の中からの完全ランダム抽選で販売され、発表の時にはうちのクラスでも、何人もの人が血の涙に沈んでいるのを見ました。

 一時、学校は奇声飛び交い屍積み重なる地獄と化していましたからね。授業中だったんですけど……


 アカウントは登録購入制で、そもそもこのご時勢、転売の類は根絶やしにされているので、血しぶきと札束の舞う争い、なんてことは起きないのでそこのところは安心できますけど、SNSで発狂寸前の人はいっぱい沸いていた記憶があります。


 アカウント追加が何度か行われた近頃でも、前々々回追加された20万アカウントでようやく初回応募者分が賄えた、なんて話がSNSで話題になっていたり、とにかく、そんな感じのいまノりにノっているゲームなのです。


 そんなゲームを、私は最近になってようやく入手しました。


 色々事情があり応募したのが二次応募になってしまったので、いつ入手できるか不安でしたけど、むしろ夏休み開始直後の絶好のタイミングでの解禁分アカウントを入手できたので結果オーライということで。


 そうです。今日がその、私の持っているアカウントのログイン解禁日なわけです。


 私は手に持っていたデータキューブを据え置き型の個人用コンピュータデバイス(DPCD)にセット。


 DPCDっていうのは、すごく処理の多い作業をする人が持っているデバイスのことです。

 普通に生活する分にはみんな持っている小型のデバイスで十分ですからね。


 単体でもかなりの量の処理ができますが、異常に処理の多いゲームとかのアプリケーションを管理するときには、こういう物理媒体のデータキューブが一緒に送られてきます。


 DPCDに取り込ませる形でセットすることでそのアプリケーションの処理を補助してくれる外部ツールなわけですね。

 私も今回初めて見ましたけど……



 キューブが本体との接続を確立している間に、仮想現実空間への完全没入(フルダイブ)に備えて、あれやこれやと準備をしてしまいましょう。


 仮想現実空間への意識の完全没入、通称VR技術がもはや数十世紀前には完全に熟した技術であることは再三申し上げている通りです。


 一応細かいところも技術史の授業でやりましたが、あんまり覚えてないんですよね。

 テストは授業をちゃんと聞いていれば何とかなりますし。


 うちのおじいちゃん先生も「この授業で学ぶべきは、細かい歴史の話より、過去、人の想像から始まったこの技術が今ではありふれた技術であり、人に想像できるものは技術的に再現が可能であるという事実が証明されている、と言うことだ」って言ってましたからね!


 私は着ていた部屋着を脱いで、ぽぽいっと衣類クリーナーに放り込んでおきます。

 このクリーナーは黒い本体に白で桜吹雪の模様が入った、私のお気に入りです。


 ちょっと型は古いですが、最近のやつはあまりついてないふんわり仕上げ機能の付いたやつで、一目惚れして買ってしまいました。

 やっぱり、毎日使うものは見た目にもこだわりたいですよね。


 私は完全に裸になり、コクーンに入ります。


 コクーンというのは、フルダイブ中に制御機能が低下する現実の身体を保護・管理するための機材で、VR技術と二人三脚で進化してきた機材のことで、形によってはカプセルだったり揺りかごだったり呼ばれ方は色々ですが、基本的な機能はどれも同じです。


 こちらもVR技術の進歩とともに、いえ、むしろそれ以上に早い段階で技術的な部分は完成され、いい意味で今では完全に枯れた技術となっています。

 機能の関係上そこまで安いものというわけでもないのですが、価格帯には制限が掛かっていて企業が自由に決められるようなものでもありませんし、一定以上に高いこともないので、ちょっと頑張れば高校生でも個人で十分に購入できるぐらいの値段が普通です。


 まあ、付ける機能的なところは法律で決まっていますし、新しいのを出すにしてもデザインを変えるくらいのことしかできないですからね。それにしたって、デザイン料分の値段を上げたりもできないので、新発売されているところはあまり見たことがありませんね。


 ちなみに私のは、蚕の繭を大きくした感じを想像すると、だいたい近似値だと思います。だから、コクーンって呼んでいるわけですけど。


 放射状に広がって本体を固定する網目状の線に、本体に少し隙間を開けて覆う半透明のカーテン、本体は冷たさのある一般的な自己修復性合成樹脂製ではなくて、有機素材で自己修復性を持つ繊維の積層型です。


 この方が温かみがあって好きなんですよね。

 この型はほとんど作られてないので見つけるのが大変でした、遠い目。


 初めて見る人には十中八九「うわっ……」って言われますけど。

 綺麗だと思うんですけどね?


 まぁ、人の趣味は人それぞれ。私はこれが好き、ということで、だれに迷惑をかけているわけでもありませんし、ケチをつけられる筋合いもありません。こういうのは気にしすぎないことが重要です。


 閑話休題


 私はコクーンへ入って目を瞑ります。


 『外部デバイスとの接続が完了しました』とアナウンスが流れると、続いて『接続を開始します』とアナウンスが流れ、意識が奥へ奥へと沈んでいきます。


 そうそう、この時、目は瞑っておくことをお勧めします。

 目を瞑っていないと、強烈な眠気のような感覚に襲われますからね。

 私はあの感覚がとても嫌いです。


 一旦沈み込んだ意識は自己認識的にはすぐに、もちろん現実的にもすぐに浮かび上がります。



●〇●〇



 瞼の裏に光を感じて目を開けると、そこはDPCD内に設定してあるVRでのホームスペースでした。

 現実と似たような間取りの部屋に、うず高くぬいぐるみが積まれた部屋。いいですよね、もふもふ。現実でやったら邪魔ですからね。


 なぜここに来たのかはわかりませんが、とりあえず、ダイブ。

 もふもふ。至高。

 もう、この語彙力がどうしようもなく低下する感じ。最高です。


 ぬいぐるみに埋もれてもっふもふトリップしていると、たくさんのウィンドウが出て来たので一旦意識を正気に戻して内容を確認していきます。


 内容は一枚が説明、他は利用規約だったりログイン用の個人用デバイスの情報入力フォームだったり他にも色々でした。


 一旦ホームスペースに来たのは、『Roots』の処理にワールドコンピュータ(WC)に接続するから少し時間がかかるので、ということらしいです。


 最近の新しいゲームはやっぱりWCに繋ぐのが多いですね。これも、また一歩、技術の進歩というやつでしょうか。


 WCっていうのは、もちろんトイレのことじゃありませんよ? ネットでもさんざん弄られているので、やめてあげてください。


 WCは、宇宙鉱山の資源を用い、世界規模の一大プロジェクトで作られた1024台の現代最高水準のコンピュータ群を、ごく最近に技術的に可能になってきたタキオン情報通信技術でリンクさせ、1つの巨大な仮想コンピュータとしたもの、です。技術史の教科書から引用。


 宇宙資源は惑星系の有効重力圏に持ってきてはいけない、という法律があったりして、WCは地球から結構遠いところにありますし、タキオン通信もまだ一般的な技術ではないですから一般家庭はまだ光通信です。その間に情報の質の違いがある分、少し時間がかかるのも納得ですね。


 ウィンドウを指で横にすっとスライドさせて移動させて、他の利用規約やら何やらに承認したり、打ち込んだりしていきます。


 結構な数のウィンドウを捌き終わるころには、WCへの接続も終わったようで、最後に残ったウィンドウには『接続を開始しますか?』の文字が。


 普段はほとんど仕事をしない自分の口角が比較的大きく上がるのを感じながら、私は接続開始のボタンを押しました。

お読みいただきありがとうございます。


もしどこかで面白いと感じいただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。

あとブクマとかも(強欲

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[一言] 謎のドラゴン使い決闘者〈タキオンだと!?(ガタッ!!)
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