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二八話


SIDE イオス


 イオス達が、裏路地で待機をしていると、店から出てきた対象にセリカが接触を試みた。

 一瞬にして、辺りに緊張が奔る。

 相手が相手だ。その一挙手一投足に、集まっていた一〇名の者たちの全神経が注がれる。

 逃げたり戦闘行為に及ぶようであれば、即座に飛び出せるよう、全員が各々の準備を整える。


(ん? セリカからのサイン?)


 そんな中、暫しセリカが何やら対象と話していたかと思うと、セリカから手信号が送られて来た。


(対象……協力、可能性あり? 危険度・低……保護対象と共に隠れ家へ連行……ただし、警戒継続、全周囲警戒、厳。……期間、一作戦単位。……終了後、半数帰還。残りは通常警戒。……緑の六号、必須。か)


 流石に何があったかまでは分からないが、対象が敵対的ではなかった、ということはなんとなく伝わって来た。

 荒事にならなかったことに、イオスはまずホっと胸を撫で下ろした。

 どうやら、このまま対象二名を隠れ家へ連れて行くらしい。

 ただし警戒は怠らず、むしろ厳戒態勢で挑め。警戒時間は一作戦単位、これは四半刻(約三〇分)であることを意味している。

 その後、緑の六号……これはイオスのコートドネームなのだが……は、必ず帰ってくるように、というのがセリカからの指示だった。


 イオスは、見える範囲の仲間にセリカからの指示が読み取れたか、手信号で確認を取る。

 セリカは、背後に回していた手で信号を送っていたので、配置されている場所によっては見えなかった者も出て来るためだ。

 見えなかった者には、イオスから内容を手信号で伝え、その者達が、今度はイオスからは見えない場所で待機している者達に、セリカから指示が見えたかを確認し、見えなかったようなら内容を伝えて回ったのだった。


 ♢♢♢ ♢♢♢ ♢♢♢ ♢♢♢


「あっ、あの、スグミさん……本当にあの人に着いて来てよかったんですか?

 その、えっと……」


 セリカに導かれまま、クネクネと折れ曲がる路地裏を進んで少しした頃、ソアラが落ち着きのない様子で俺の服の裾を掴み、小声でそう話し掛けて来た。

 まぁ、こんな人気のないところを歩いていれば、不安にもなろう。

 それに……


「背後から、沢山の人の気配がする……んですけどぉ……」


 それがソアラの個人的な能力なのか、それともエルフという種族の特性なのかは分からないが、ソアラはソアラなりに誰かに後を着けられている、ということに気付いたらしい。

 大したものだ。


「ああ、そうだな。といっても、このお嬢さんに話し掛けられた時には、俺たちは既に団体さんに囲まれていたけどな」

「えっ!! どっ、どういうことですか!?」

「落ち着いてくれ。我々は貴女には危害を加えるつもりは一切ない。大地母神ガリアの名に誓ってもいい」


 例によって例の如く、わたわたと慌て出すソアラに向かって、先行していたセリカが振り向きながらそう言った。

 特に警戒する素振りもなく、俺たちの……というか俺の前を歩いているのも、周囲を仲間が包囲しているが故だろう。


 ってか、“貴女には(・・・・)”ってそれってつまり俺には(・・・)危害を加える気満々だったってことかい? あーそうかい。


「あの……一体何が……? 私にはなにがなにやら……」

「えっと……実はな……」


 と、困惑しているソアラに、先ほど何があったのかを掻い摘んで説明した。

 ソアラがエルフであることが、何故かバレていること。

 エルフを連れていたことで、俺がエルフ誘拐犯と間違われてナイフを腹に突き付けられていたこと。

 そして、セリカたちはそうして攫われたエルフを助ける活動をしていること。


「ス、スグミさんは私を助けてくれた命の恩人なんですっ! 誘拐犯だなんてそんなことありませんっ!! まぁ、いろいろと酷いことはされましたけど……

 悪い人ではないですっ! たぶん……」

「酷いこと?」


 ソアラがボソリとこぼした一言に、セリカの眉根がピクンと跳ね上がる。

 こらこら、余計なことを言うでないよ。俺が本当に酷い目に遭ってしまうでしょうが。

  

「とにかく、だ。私はそのこと(・・・・)も含めて、貴方から話を聞きたいと思っている」


 ほらほら、セリカ嬢が険しい目でこっちを見ているではないか……

 最後に“たぶん”なんて言うから……そこはこう“良い人です”って、しっかり言い切って欲しかったよ。


「ああ、そういえば、貴方にはまだ名乗っていなかったな。私はノールデン王国騎士団所属の騎士、名をセリカ・ウォーレンという」


 セリカは手短に名乗ると、ソアラに向かって流れる様な自然な動作で一礼して見せた。

 俺の時とは随分と違うな。まぁ、いいけど。

 

「ノールデン王国の騎士様っ!!」


 セリカの名乗りを聞いて、ソアラは目を見開いて驚きの声を上げた。


「何? 知っているのかソアラ?」

「はい。ノールデン王国は、私の住んでいる村から一番近い人間の国で、エルフに対しても理解のある国なんです。

 エルフの誘拐に関しても、国を挙げて救助に当たってくれたりと、いろいろとご助力して下さっています。

 エルフなら、子どもでも知っていることですよ」


 某(おとこ)臭い漫画風にネタ振りしてみたのだが、やっぱり元ネタ知らなきゃそのままスルーですわな。


 そんなことはさておき、セリカ達の身分が本当だとすれば、俺達に取っては心強い味方だということになる。

 まぁ、それだけ有名だとすると、名を騙っているだけ、という可能性も無きにしも非ずなので、一応、用心だけはしておこうか。


「ところで、貴方の名をまだ聞いていなかったな。よければ教えて頂けると助かる」

「あっ、そうでした! 私はソアラ。オファリアのソアラです。で、こっちスグミさんです」

「ソアラ殿とスグミか……容姿といい名前といい、スグミは異国の者の様だが、何処から? 何の目的でこの国に来た?」


 ソアラは殿付きで、俺は呼び捨てですか。まぁ、向こうは向こうで俺のことをまだ信用していないといった感じだからな。

 目があからさまに、こいつは怪しい、と言っている。


 騎士と名乗っていたが、話を聞くと軍隊としてだけでなく、警察としての治安維持機能も備えているようなので、怪しげな人間の言葉を簡単に信用しないのは正しい選択と言えるな。

 ホイホイ人の言うことを信じる用では、警察……セリカの場合は騎士だが……は務まらないだろう。


「遠くからだよ。名前を言っても知らないくらいのな。目的は……話すと長くなるから追々な」


 一から説明するにはあまりに面倒なので、とりあえず後回し。

 それに、日本から来たって言ったって通じないだろうしな。と、思っていたら……


「実はスグミさんは、古代遺跡の中で転移系の罠に引っかかってしまったみたいで、気づいたらここに居たそうなんですよ。それで、丁度その時……」


 と、ソアラが意気揚々と事の経緯をセリカに話し始めた。

 信用されていない俺が話すよりかはいいかと思い、そのままソアラに説明を丸投げした。

 このまま立ち話でも何なので、話は移動しながらといことになった。

 

 で、ソアラが話し終わる頃に、タイミングを合わせたように目的の場所に到着した。


「ここだ」


 そこはザ・裏路地を絵にしたような、それこそマフィアなんかがヤバいブツを夜な夜な人目を忍んで裏取引していそうな、そんな場所だった。

 汚い、臭い、危険、正に3Kだな。


 そんな場所にある小汚い木造の建物に取り付けられた、これまた小汚いドアに、セリカは不思議なリズムでノックをする。

 多分、合図……だろうな。


 ノックをして少しすると、ドアに取り付けられた小窓が少しだけ開き、中から人の目だけが現れて、ギョロリとこちらを伺う。

 なんか、コワっ……


「私だ」


 中の人にセリカが一言告げると、ドアがゆっくりと開いていった。


「中に入ってくれ」


 すっかりセリカのことを信用しきっているのか、ソアラが何の疑いもなく素直に開けられたドアへと入って行った。

 流石に不用心過ぎるだろ、と心の中でツッコミつつ、俺もソアラの後に続いて中へと入る。

 最後に、セリカが入りドアを閉めた。

 内側から見ると、扉は金属で頑強に補強されており、ドデカい(かんぬき)まで掛けられていた。

 側はボロっちい癖して、内側はとんでもなくゴツイな。

 これをみるだけでも、セリカ達が只ならぬ連中だということが分かる。

 ただし、建物の中は外見同様、汚くお粗末な代物だった。


 窓がないため日中であるにも関わらず非常に暗く、明かりといえば壁や天井付近の隙間から僅かに差し込む日の光だけが、唯一の照明になっていた。

 雨が降ったら雨漏りが酷そうだ……と、なんの脈絡もないことを考えてしまう。

 調度品や家具の類は一切なく、酷く殺風景な印象を受ける。

 ここはまるで生活感を感じないな。


 そして、入ってすぐの部屋にはドアを開けたと思しき強面の屈強な男が三人、こちらを睨むように見下ろしていた。

 セリカは自分たちのことを騎士団と言っていたが、騎士って貴族とかがなるものなんじゃないのか? 

 ここにいる誰も彼もが、その顔といい、着ている質素な服といい、到底、騎士とは思えない姿をしていた。

 これでは、場所が場所だけに盗賊の手下だと言われた方がよっぽど納得出来る。

 そんな男たちにビビったソアラが、咄嗟に俺の背後へと回り込み、俺のことを盾にする。

 なんだか、ソアラの俺に対する態度がだんだん雑になって来たような気がする。仮にも、俺は命の恩人だぞ?

 まぁ、今までのソアラへの扱いが扱いなので、自業自得といえばその通りなんだがな。


 一応、ステータスをチェックすると、どいつもこいつも軒並み結構高いでやんの……


 もし、こいつらが全員賊であったと仮定して、ここから逃げ出すプランを考えるが、中々に良い手段が思い浮かばなかった。

 やべぇ……選択ミスったかな?


「顏が酷い奴ばかりですまんな、だが皆、私の頼れる仲間だ。安心してくれ」


 隠れるソアラに苦笑しながら、セリカがそう言いつつ俺達の前へと回る。


「お嬢。顔が酷いってのは、そっちの方がヒデェんじゃないですかい?

 で、そっちの娘が話にあったエルフで、この男が誘拐犯だと?」


 三人のうち、真ん中に立っていた男がソアラを見てから、その視線を俺へと移す。と、表情がまるで、汚物を見る様なそれに変わる。

 おうおう、初対面でいきなり嫌われてるなぁ、おい。

 ってか、セリカって仲間内からは“お嬢”って呼ばれてるのか。

 そう言われて見てみれば、セリカは言葉遣いが丁寧で、物腰にも何処か気品のようなものを感じる。もしかしたら、かなり良いとこのお嬢さんなのかもしれないな。


「いや、話はそう簡単でもないようでな……現状では未確定。要参考人として同行してもらった。

 さて、詳しい話を聞かせてもらおうか。こちらへ来てくれ」


 セリカはそう言って、続き部屋になっている隣の部屋へと入って行った。

 ここまで来たら後には引けまい。

 俺たちもセリカに着いて、隣の部屋へと入って行った。

 てか、ソアラはいい加減、俺を盾にするのは止めような。


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