宿場町
馬車は街道を進む、3匹のゴブリンの骸を置き去りにして。
その日の夕方、町に着いた馬車。
「明日の朝、8時に出発するから、遅れないようにな」
御者の言葉に、
「はい、朝8時にココでいいんですね?」
と、センスは確認する。
「ああ、ココでいい」
御者はそう言った。
会話の場所は、乗合馬車の停留所である。
馬車は、1日で移動出来る距離に限りがあるあるし、宿泊設備のある町までを1日で移動し、夜はその町で一泊するのが通常である。
また、そういった町や村を宿場町と呼び、旅をする者達は、その町を転々と移動して行くのだ。
センスは、その町に唯一ある宿を訪ねる。
なお、乗合馬車の御者は、馬の厩舎や馬車の置き場所がある、御者専用の安い宿があるので、センスとは同じ宿には泊まらない。
御者に教えてもらった、アスの宿と看板が出ている宿。
ドアを開いて、
「こんばんは。一泊ですが空いてますか?」
とセンスが聞くと、
「ああ、空いてるよ。素泊まりなら銅貨30枚。朝食付きなら33枚。夕食はその辺の店で食ってくれ」
宿の主人が簡潔に答えた。
銅貨1枚で、パンが1つ買える。コレはどこの国でも同じである。多少パンの大きさは変わるが、銅貨1枚でパン1つが基準である。これは各国の貨幣価値の根底である。
「なら、朝食付きでお願いします」
そう言って大銅貨を3枚と、銅貨3枚を手渡すと、それを確認した主人が、
「あいよ。部屋は2階のどんつきの205を使ってくれ。コレ鍵ね」
と、木の札に205と書いてある鍵を、センスに手渡した。
大銅貨とは、銅貨10枚分の価値の貨幣である。
なお、銅貨100枚で銀貨1枚の価値となり、銀貨100枚で金貨1枚の価値となる。
鍵を持って二階に上がり、一番奥の扉の前に立ち、ドアに鍵を差し込みカチャンと、鍵を開けて部屋に入るセンス。
4メートル四方の小さな部屋に、ベッドが1つと小さなテーブルに椅子だけという、簡素な部屋だった。
布団もペラペラだが、ちゃんと干してあるのだろう。嫌な臭いはしなかった。
ベッドに腰掛けた時、ギシッと軋む音はしたが。
荷物を床に置いて、部屋に鍵を掛けて一階におりると、宿の主人に、
「近くで、安い食堂はどこですか?」
と、聞いてみた。