パイド騎士
沢山のブクマ、本当にありがとうございます。
頑張って投稿していきますので、よろしくお願いします。
パイド騎士は、国境に戻る馬上で、上機嫌だ。
考えるのは、亡き者にしたクローム騎士の事だ。
同じ騎士仲間として、同じノードス伯爵に仕える者として、一番邪魔な存在だった。
攻めのパイド、守りのクロームと、他の騎士達からは一目置かれる存在だったが、考え方が正反対のため、事あるごとにぶつかった。
そんな二人からの進言を、ノードス伯爵は、いつも必ずといっていいくらい、クローム騎士の案を採用していた。
守るしか能のない、腰抜けな奴の案をだ。
守るだけで戦が勝てるわけがない。
武の才の無いノードス伯爵は、それを理解していない。
何が{守りを疎かにしては、戦は勝てない}だ。
攻められる前に、相手を倒してしまえば良いのだ。
それが一番近道なのだ。
何度も言ったのに一度も理解してもらえなかった。
なによりもそれが、一番面白く無かった。
ノードス伯爵は、自分よりクロームを優遇している。
これは紛れもない事実だった。
それは、家族ぐるみの付き合いをするノードス伯爵は、屋敷に幾度となく騎士達を自宅に招き、パーティーをしていた。
酔ったノードス伯爵が、クローム騎士に、自分の娘とセインスの婚姻をと、打診している場面を見てから、さらに面白く無かった。
自分にも息子が居るのに、そんな話を持ちかけられた事がないからだ。
パイド騎士の息子であるギルスは、セインスより2歳年上で、強さも充分なのにだ。
「まあ、これでギルスに声がかかる可能性が出てきた……」
パイド騎士はそう呟いて、口元を緩める。
パイド騎士が、国境の戦線に戻ると、
「父上、ノードス伯爵閣下は、なんと仰ってました?」
と、15歳ぐらいの少年が聞いてくる。
パイド騎士の息子、ギルスである。
金髪の短髪で、緑色の瞳をした精悍な顔つきに、鍛えられた肉体は、身長170センチほど。
だが、どことなく信用の置けない顔つき。
「クローム騎士爵は、ノードス伯爵閣下の預かりとなった。セインスが戻ってきた時に返すと」
と、息子に話すパイド騎士。
「ならば問題ありませんよ。セインスのガキは帰ってきませんから。父上が崖から突き落としたのでしょう? 死んでますよ」
と、うすら笑いを浮かべて言うギルス。
「ギルス。セインスがいなくなった事で、ティアお嬢様の婚姻相手選びは、白紙になった。お前にもチャンスがあるはずだ。男を磨いておけよ?」
と、息子に言い聞かせるパイド騎士に、
「勿論です、父上。何としてでもモノにしてやりますよ!」
ギルスは、悪い笑いを浮かべて、そう言った。