爆弾発言
さらに数日後、ロローシュ伯爵領の至る所で、簡易砦の建設が始まった。
街は作業員に行ったもの達と、木工職人達が臨時収入により、金を使ったことにより、景気が上向きで、戦での好景気もあり、活気に溢れている。
ヴェガ騎士軍はあちこちの戦線にて、砦の建設の指揮をしていて、大忙しであるが、今日は久しぶりの休暇となった。
兵士達は街に繰り出し、日頃の疲れを癒やしている。
センスはというと、
「あれ食べよう! ああ! アレも美味しそう! ほら行くわよセインス君!」
と、フェルに手を引かれて振り回されている。
何故フェルがというと、ヴェガ騎士軍の宿舎でもある、ヴェガ騎士邸に戻って来た時、屋敷の門の前で待ち構えられていたからだ。
「センス曹長も隅に置けないねぇ!」
「やはりやり手の男は、そっちもやり手だねぇ!」
と、ヴェガ騎士軍の女性兵士達から、冷やかされ、エルフの女性兵士はフェルの顔を知って居たので、
「ええっ⁉︎ フェル様のお手付きなの? 狙ってたのにぃ〜!」
と、悔しがっていた。
さて、センスがフェルに手を引かれて、一軒の甘味屋に足を踏み入れた時、
「おう! センス曹長じゃないか! こっちきて一緒に食おうぜ!」
と、手招きして呼ぶ声がする。
センスが声の方を見ると、そこに居たのはデニス・ヴェガ。
ヴェガ騎士の息子であり、ヴェガ騎士軍の副官でもある。
隣にセンスよりも少し年上であろう女性が座っている。
「デニス様、女性と一緒なので、私たちがお邪魔では?」
と、センスがデニスに言うと、
「ん? 会った事なかったか? 妹のミシェルだよ」
と、デニスが言う。
この娘が、ヴェガ騎士が入軍する時に、手をつけたら許さないと言った相手、ミシェルである。
センスは、自分からは話しかけないと、ヴェガ騎士に言ったが、挨拶しないわけにはいかないので、
「ヴェガ騎士軍作戦参謀の、センス曹長であります」
と、敬礼した。
「ああ、貴方がお父様とお兄様のお気に入りの、センス曹長ね。ミシェルよ。よろしくね」
と、ミシェルがふわふわの金髪を揺らし、青い眼でセンスを見ながら言う。
確かにこの美貌なら、ヴェガ騎士があんなに言う理由が分かる気がしたセンス。
「は! ヴェガ様にもデニス様にも、良くしてもらっております」
と、立ったままセンスが言うと、
「センス曹長、そちらの女性は?」
と、デニスがフェルの方を見て、聞いて来たので、
「こちら、ロローシュ伯爵家のお嬢様で、フェルミナーナ様でございます」
と、改まった言い方をしたセンスに、
「えっ?」
と、デニスが声を漏らして固まっていると、
「ちょっと! なんでそんな他人行儀な紹介するのよ! ひどいじゃないの! 同じベッドで寝たのに! 私のことは遊びだったの?」
と、フェルがニヤニヤしながら、爆弾発言を投下した。




