戦場にて3
敵の槍兵達が、散発される矢を避けながら、走り迫ってくる。
「フェル! 逃げろっ!」
セインスは部下にそう言い、自身の左腰にある片手剣を抜く。
「セインス様!」
フェルと呼ばれたエルフの女性が、セインスに向かって叫ぶと、
「こんな俺でも、お前よりは強靭だ。それに、エルフの女性は捕まると悲惨だよ? 俺はお前のそんな姿見たくない。行けっ!」
セインスが強く言った。
若干13歳の男でも戦場に出ていれば、そんな知識は身につくものだし、実際、他の戦場でそんな光景を目の当たりにしていたし、セインス自身も女性とそんな経験はある。
もちろん合意の上でだが。
フェルは、セインスの少し鋭い蒼い瞳の力強さに負け、一礼してから走り出した。
セインスの体型では、腰に刺して走り回るには、大剣は無理だった。
「ガキが大人に剣を向けて、勝てるとでも思ったか? 戦場ではガキだろうが容赦しねぇぞ? てめぇ殺してあのエルフをいたぶってやる」
槍を持った敵兵が、セインスを見てそう言った。
槍と片手剣、間合いの違いはかなり厳しい。
「フェルが逃げのびる時間を、僅かでも稼げればいい!」
セインスが、そう叫びながら、敵兵に向かってジリジリと距離を詰める。
敵兵は、ブンッと、槍をセインスに向けて上段から振り下ろす。
セインスはそれを、慌てて後退して避ける。
それを繰り返していると、
「ガキが! ちょこまか逃げずにさっさと死ねよ!」
敵兵が、槍を構えて突進してきた。
それを横に避けて敵の腕を、持っていた剣で斬りつけるセインス。
「ヴッ」
と、敵兵が声を漏らし、斬りつけられた自身の腕の傷を、槍を手放して押さえる。
「このガキがっ!」
斬りつけられた敵兵が、セインスを睨みつけたが、その時既に、落とされた槍をセインスが拾い、その槍が男の喉に迫る直前であった。
喉に刺さった槍が、敵兵の命を奪った。
それはセインスにとって、初めて肉薄した戦闘による、人の死であった。
今まで、弓矢で人を殺した事はあっても、手に持つ武器で直接命を奪った事は無かった。
人の肉を貫く感触に、セインスは猛烈に吐き気を覚えたが、敵は近くにまだまだ居る。
こんな所で吐いてる場合ではない。
そう自身に言い聞かせて、奪った槍を両手で持ったまま、部下達が逃げる道に立ち塞がるのだった。




