自主練
アレンは、北のノードス伯爵領で、パイド騎士軍に入軍して戦に明け暮れていた。
パイド騎士軍は、粗野な兵士が多く、アレンは軍に馴染めなかったが、これも生きるためだ、仕方ないと諦めながら、3年もの長き日々を戦っていた。
パイド騎士軍の兵士達は、捕らえた敵兵の男は、嬲り殺しにしたり、女性兵士には乱暴するのが日常茶飯事であった。
その光景に反吐が出そうになる日々。
粗野でろくでもない奴ばかりだったが、まだ相手は敵兵だからと、自分に言い聞かせて我慢していた。
だが先日、自分達が手柄をあげるため、わざと戦場に遅れて到着し、事もあろうか味方の兵を、重傷の騎士様夫妻諸共、抹殺しろと命令された。
流石にコレには我慢できず、アレンは翌日、パイド騎士軍を抜けた。
親が危篤だと嘘をつき、北のノードス伯爵領をスグに去った。
だが、農家の五男で早々に家から追い出され、戦しかしてこなかったアレンには、生活の手段は戦だけであった。
北と東を繋ぐ定期便の馬車に乗り、東のロローシュ伯爵領に流れてきて、騎士軍に入ろうと街でウロウロしてるときに、とある女性から声をかけられた。
「カップルのフリしてれば、入れる騎士軍があるんだけど、どう?」
そう言ってきた女性は、アレンが今まで見てきた女性の中で、こんなにも美しい人を見たことがなかった。
頭から出ている猫耳はキュートでもある。
それに加えて、メロンでも隠してるのかと思うほどの胸。
まあ胸よりも、美しい瞳に釘付けになってしまったが。
そうして、声をかけてくれた獣人の女性と、その場で小声で相談となった。
女性の名はローレライといった。
なんと美しい響きだろう。
そうして、ローレライの提案を受け入れ、作戦通りに兵の募集をしている地域を歩いていると、ヴェガ騎士軍の兵士から声がかかった。
そうしてヴェガ騎士軍に、入軍できることが決まった。
そこまでは良かった。
ただ予想外だったのは、カップルは小さめの小屋で同居する事に決まっているらしいのだ。
小屋の中でローレライと話し合い、大きなベッドを半分ずつ使う事になったが、我慢できるのか⁉︎
こんな美しい人と、同じ部屋で。
同じベッドで!
そして気がつく。
同室だし、自主練もできない。
「どうしよう」
アレンが小さく呟いた。




