片膝を突く
コズンとセンスは暫く歩き、とある屋敷の前に到着する。
「兄貴、居るかい?」
それなりに大きな屋敷の門の前に居る、女兵士にコズンが声をかける。
「これはこれはコズン様、おはようございます。ヴェガ様はご在宅ですので、お取り継ぎしますが、そちらの子供は?」
と、センスを見て言う女兵士に、
「ああ、おはよう。ちょっと腕の立つ子を見つけたんで、スカウトしてきた」
と、コズンが笑う。
「という事はウチに入るって事ですね。よろしくね坊や」
と、にっこり微笑んで、女兵士が右手を差し出し、
「はい、よろしくお願いします」
と、センスは女兵士の右手を、両手の握手で受けた。
「うん、礼儀はしっかりしてますね」
コズンの方を見て、女兵士が言うと、
「私が無法者を連れて来るはず無いだろう?」
と、コズンが笑う。
「ですね。ではとりあえず応接室に。私はヴェガ様に伝えてきますので」
と、門の扉を開けてくれた女兵士に、
「頼むよ」
と、手を上げるコズン。
「はい」
と、走って行く女兵士を見送る、コズンとセンス。
門を潜り、センスが屋敷を見ていると、
「センス君、こっちこっち」
と、コズンが手招きする。
センスは、コズンの後ろについて歩くと、自分の家のように玄関を開けてコズンが入り、それに続くセンス。
廊下を行くと、豪華な扉が見える。
その扉を、ガチャと開けたコズンは、部屋にセンスを先に入れ、自分も中に入る。
「そのへんのソファに座っときなよ」
とコズンが言う。
センスは、部屋とソファの配置を見て考える。
あちこちに衝立が置いてあるが、乱雑ではない。
豪華では無いが、客の眼を楽しませる調度品が数点。しっかりとした造りのソファが6脚。その中央に大きなテーブル。
で、一番豪華なソファは、ヴェガ騎士が座るソファだろう。
とすると、そこが上座であるから、自分が座るとなると、その対面が下座になる。
そのソファの横に立つセンスに、
「座らないのかい?」
と、コズンが聞く。
「うん、ヴェガ騎士様が、もしこちらに来られるなら、立ってお待ちしたほうが良いだろうし、別の部屋に呼ばれるかも知れませんし」
と、答えたセンス。
「なるほどね。だってさ兄貴!」
と、コズンが衝立の方に声をかけた。
「え?」
と、声を漏らしたセンス。
次の瞬間、衝立の奥から1人の男性が姿を現す。
立派な革鎧に身を包む、180センチほどの身長に、茶色の頭髪、茶色の眼をした、どことなくコズンに似た男。
センスはこの男がヴェガ騎士だと悟ると、慌てて片膝を突き、頭を下げる。




