兵士の募集
翌日、コズンとの待ち合わせ場所に行ったセンスは、合流したコズンと街を歩く。
「場所は、ロローシュ伯爵様の屋敷の近くだから」
そう言ったコズンの案内で、伯爵様の屋敷近くにある、募集所に向かって歩き、到着して驚いた。
それは、人の列、列、列。
昨日話に上がっていた、アウス騎士軍やバウ騎士軍は、まさに長蛇の列。何百人いるのか数える気にもならない。
ジュンス騎士軍にも100人を超える人が並んでいる。
各騎士軍の募集人数は、アウスやバウで100名前後、ジュンスで50人と貼り紙に書かれていた。
その貼り紙を見て、センスはアウスやバウに入らなくて良かったと思った。
何故なら、騎士軍が募集するのは欠員分だからだ。
騎士は貴族と言えども、貰える金には限りがある。
国からの俸禄で騎士軍を養うが、その金額は一律であり、他に騎士軍としての働き、活躍によって、国や寄親から武勲料のようなものが出る。
なので、無限に人を雇える訳では無い。
募集が多いということは、それだけ戦場で兵が死んでいる、または負傷して戦が出来ない体になったわけだ。
「コズンさん、ちょっといい? アウス騎士軍やバウ騎士軍って、いつもこんなに募集してるの?」
念の為、コズンにセンスが聞いてみる。
「週で言えば、数十人は募集してるぜ。今回は100人だしかなりやられたんだろうなぁ」
コズンはそう答えたが、毎週数十人が戦線に復帰出来ないような、戦の仕方をしている訳だ。
センスはここに、死ぬために来た訳では無い。
強くなって戻るためだ。
生きて帰るのが最優先である。
もちろん、戦なので死ぬ覚悟はあるが、指揮官の指揮次第で、戦況はガラッと変わるモノだ。
強いと噂のアウス騎士軍やバウ騎士軍は、おそらく無茶な戦の仕方をしているのだろう。
そうセンスは推測した。
その時、
「ジュンス騎士軍、定員に達した。今日はここまで!」
と、声がした。
それと同時に、並んでいた人々が、別の列に並ぶために動き出す。
他に募集していた騎士軍も、そのほとんどが定員に達したと声を上げた。
今日の入軍は諦めて宿に帰る人々。
その時、
「そこのお二人さん。ヴェガ騎士軍に入る気ある?」
と、突然声が聞こえた。
だが、お二人さんという声に、自分は関係無いと思ったセンスだが、誰のことだろうと思い、周りをキョロキョロと見回す。
「えっと、私たちですか?」
男女のカップルが、声をかけてきた男に聞いている。
「ああ、君達の事だよ。2人とも武器を持ってるし、経験者かそれなりに腕に自信はあるだろうし、男女カップルという点で、ウチの募集要項を満たすから、声をかけたんだ」
男がそう言うの見て、
「ヴェガ騎士軍は、男女カップルをスカウトするんですか?」
と、隣を歩くコズンに聞く。
「ああ、そういうのが多いな」
コズンが頷いた。
「ここじゃなんだし、茶屋にでも行ってジックリ話そう。こっちに良い茶屋があるんだ。行こう」
と言って、カップルとヴェガ騎士軍の兵士の男が、茶屋に向かって歩き出す。
その様子を眺めていたセンスに、
「俺達は直接兄貴に会うからね」
と、コズンが言い、
「はい、行きましょう」
と、センスがコズンを見て頷いた。




