頭と女
「あのガキ、どこ行きやがった!」
頭が怒鳴ったとき、
「あんた! 右!」
と、女の叫ぶ声がした。
その声に、頭は思わず右側を見ると、道の山側から、矢が迫ってきていた。
慌てて右に避けたが、頭の左腕に突き刺さった矢。
「ぐっ……」
矢を受けた頭が、苦痛に声を漏らすしながら山側を見ると、薮の中にセンスを見つける。
「殺してやるっ!」
頭が、左腕を庇いながら山を登り出すと、センスはまたもや砂を投げつけた。
センスを睨みながら登っていた頭は、砂粒をまともに眼に受けた。
「グアっ、卑怯者っ!」
頭が眼を押さえて叫ぶと、
「だから、盗賊が卑怯者とか笑わせるな」
センスがそう言って、槍を構えて駆け降りてきた。
頭が闇雲に振り回す大剣を掻い潜り、センスの槍は頭の左脇腹に、ズブリと深く刺さった。
「グハァ」
頭が叫び、
「あんたぁあああっ!」
女が叫びながら走り寄ってくるが、センスは頭の脇腹から引き抜いた槍を、女に目掛けて投げつけた。
頭しか見ていなかった女の胸に、吸い込まれるように槍が刺さる。
「ああっ!」
自分の胸に刺さった槍を見て、女が声を上げ、慌てて両手で槍を抜いた。
だが、槍が抜かれたことにより、大量の血液が流れ出る。
だが、そんな事は構わず、女は頭の方にフラフラと歩く。
やがて女は。前のめりにドサっと倒れた。
「ああ……あん……た……」
倒れた女は、そう言いながら這いずって、頭に近づいていく。
センスは、女の方に向かって歩き、女が引き抜いて捨てた槍を、拾いあげると、
「さよならオバサン」
と一言呟き、這いずっている女の背中に、槍をずぶりと突き刺した。
その時センスは、腹から込み上げてくるものがあり、槍から手を離して、崖の方に移動して吐き出した。
その後、うめき声をあげる頭に、女から引き抜いた槍で、トドメとばかりに胸に突き刺し、絶命した事を確認すると、馬車に向かって歩くセンスだった。
馬車まで戻ったセンスは、
「おじさん! 全員倒したよ!」
と、大声で叫んだ。
その声に、山のあちこちから、人の顔が出てくる。
「ほんとかセンス君! なんか顔が青いけど、大丈夫かい?」
と、御者がセンスの青い顔を見て、心配そうに言うと、
「うん、ちょっと気持ち悪くなって、吐いちゃった。ところで、何か大きな袋無い? 首を落として、領兵の詰所に持って行けば、いくらか金になるからさ」
と、センスが問いかけると、
「ええ? 首を積んで行くのかい?」
と、御者は少し嫌そうな顔をする。
「お金は、山分けでいいからさぁ」
「うーん、気味が悪いけど、お金になるならいいかな」
そう言って御者は大きめの布袋を、取り出してきた。
片手剣を叩きつけて、10人の首を胴体から切り離すと、袋に詰めてクチを結んで、肩にかけて馬車に戻るセンス。




