戦場にて
よろしくお願いします
その大陸は、広大であった。
大陸の中央付近から東側は、大きなエルフの国と、人族至上主義の帝国が支配しており、その東の端のほうに、中規模の多人種国家と、獣人の小国が存在し、人族至上主義国家と、多人種国家がたまに戦をしているが、安定しているほうであろう。
それに比べて西側は小国が乱立し、覇権争いが絶えない地域。
争いの種は水や食糧、人種差別や宗教の違いや意地と様々だが、確かなのは、今日もどこかで戦が行われているという事。
血で血を洗う戦いが繰り広げられており、人々は心が安まる時が無い。
とある国、その国の名はレイリス王国。
その国のとある地域、ここでも1人の少年が、戦に明け暮れている。
「セインスッ! 右翼が押され気味だっ! 援護に向かえ!」
そう叫んだのは、40歳手前ぐらいだろうか、見るからに鍛えられた肉体を持ち、長い銀髪を後ろに一纏めにした、立派な青い革鎧を着た男。
少しタレ目の、青い瞳が印象的だ。
セインスと呼ばれた少年は、見た目は13歳程度だろうか。
まだ小さな、およそ150センチほどの身長の体に、不釣り合いな大人用の弓を持ち、必死で矢を放っていた。
「了解、父さん! セインス小隊行くぞ」
と一言叫び、自分より年上の部下を3人引き連れ、銀髪の髪を揺らして走って行く。
「ここを抜かれたら、我が国は苦しくなるぞっ! 気合い入れろっ!」
セインスに命令した男が、自軍の兵達に気合いを入れる。
「クローム騎士! 国軍は来ないのですかっ?」
横に居た仲間の兵が、矢を放ちながら男に聞く。
「国軍の多くは、アストン国戦線に向かっていたから、報告はしたがおそらく来ない!」
クローム騎士と呼ばれた男が、そう答えると、
「ここの国境国軍が国境を突破されたのに、国軍の応援が来ないとか、国王陛下は何を考えてるんですかねぇ? てか、敵の数が多過ぎませんかねぇ!」
と、愚痴を叫ぶ兵士に、
「どの戦線も、ギリギリの人数でやってんだから、しょうがねぇだろうが! 奴らかなりの大部隊だ、本気でここを落としにきてやがる」
と、クローム騎士が答える。
「応援は来ないので?」
との問いかけに、
「パイド騎士の騎士軍が、来てくれる事になってる! もう少し耐えろ!」
と、クローム騎士が言うと、
「了解でさぁって、あのパイド騎士軍? 猪突猛進しかしないあの? うちと一番仲の悪い?」
と、聞かれたクローム騎士は、
「奴のところしか空いてないそうだ。仕方ない」
とボヤいた。
「まあ来るだけマシかぁ」
そう言って、矢を放つ兵士達。
騎士、それはこの国の貴族の中では、一番下位の貴族である。
正式には騎士爵という。
伯爵以上の、上級貴族に認められた者が推薦され、国王の承認を経て騎士となる。
爵位の継承も認められている。
上級貴族のように領地を持つ事はないが、戦力の保有を認められ、国の防衛に協力する。
クローム騎士は、寄親(推薦してくれた上級貴族)であるノードス伯爵により推薦され、騎士となってからは、ノードス伯爵領の防衛に協力していた。
ノードス伯爵の領地は、国境に面しており、絶えず小競り合いのある地域なのである。