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白蛇病恋譚~拾った妖怪に惚れて人間やめた話  作者: 二本角
第五章 エリコの壁
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エリコの壁2

「う~む!!間に合わなかったか!!」


 夕闇に染まる葛城山の中腹にある社。

 麓で起きた騒ぎが広まって観光客も逃げ去って閑散とする中、趣味の悪い髑髏が乗った帽子を被った男は口を開いた。

 男の名はゼペット・ヴェルズ。

 奔放な黒狼や本能に忠実な戦鬼に、妄執に取りつかれた勇者に代わって旅団を統率する死霊術師である。

 彼が見ているのは、白流の方向であり、空に吹き上がる黒と白の霊力だ。

 その奔流が発生したのは少し前のことだが、未だにその残滓は色濃く残っている。

 そして、その霊力が指し示すのは、ヴェルズの狙っていた標的がさらに強い力を得たということである。


「う~む!!できることなら神格に目覚める前に手中に収めたかったんだがねぇ!!ただでさえ京たちがいるというのに、あれほどの力を持ってしまうとは、これは苦労しそうだなぁ!!まあ、それだけ質が上がったということでもあるが!!」


 ヴェルズの目的は、神でも妖怪でも人間でもない強力な『龍』属性を有し、万物を強化する『薬』としての性質を持つ久路人の霊力。ひいては久路人そのものだ。

 彼としては久路人が人外となった直後を狙うつもりだったのだが、月宮久雷の襲撃から久路人を庇ったことや京とメアに倒されてしまったこともあり、行動を起こすのがここまで遅れてしまった。

 神格を得たことでさらに霊力の質は上がったが、それだけ捕えにくくなったということでもあり、ヴェルズにとっては面倒な事態である。

 

「ボクの目的を考えれば、ここで旅団を抜けても良かったのだがね・・・!!」


 旅団の目的は忘却界の破壊である。

 しかし、ヴェルズのみは破壊『だった』と言える。

 久路人の存在を知る前、ヴェルズが学会を追放された当初のことであるが、彼は至上の願いを叶えるために再び学会の『魔人』の助力を得ることを目論み、忘却界の破壊を交渉の材料とするつもりであった。

 そのために力を求めて旅団をまとめ上げたのだが、久路人を発見したことで事情は変わった。

 久路人さえ手に入れば、わざわざリスクの大きなことをする必要はない。

 忘却界の破壊にせよ、己よりも強く凶悪な者どもをまとめ上げるのも、どちらも非常に危険であり、手を切れるのならばそれに越したことはなかった。

 『エリコの壁』を進めたのは、久路人を釣るためであり、第二段階までならばまだ己に危害が及ぶ可能性が少ないからでもあり、京を抑えるための壁である他の幹部への飴でもあった。

 他のメンバーが七賢を相手している間に久路人を倒し、そのまま旅団を抜けられれば理想的であったのだが、どうやらそれは困難なようだ。


「ふむ!!やはり、まだ旅団を切るわけにはいかないか!!中々に扱いにくいメンバーだから、色々とあぶなかっしいのだがね!!う~む!!しかし!!それでは今の状況はよろしくないな!!」


 ヴェルズは、自らが従える無数の蟲のアンデッドを介して状況を確認する。

 下僕を介して映るのは、かつて己が『祝福』した狐と人間の夫婦だ。

 人間を憎み、世界を憎み、それらの感情がむき出しのアンデッドとなった今ならば、あの怪物は解き放てばこちらが何をするでもなく殺戮を繰り広げるはずだった。

 しかし、九尾に動きはない。

 遠くの空を見つめたまま、身体を地面に着けて休んでいるように見える。

 まるで、強敵がやってくるのに備えるように。

 そして、九尾が止まっている間に周囲の人間たちは逃げてしまっていた。

 大妖怪による恐怖を人間に知らしめるための『エリコの壁』第二段階であるが、これでは効果が薄い。

 多くの者が無惨に殺され、その屍が晒されて初めて、人間は異能の化物を信じざるを得なくなるのだから。

 

「今、彼らはマリが操っているはずだが・・・さすがに距離があるか!!」


 死霊術師や精霊術師といった、他の存在と契約して使役するタイプの術者にとってネックとなるのは、力と距離だ。

 強い存在ほど従えるのは難しく、距離が離れるほど制御はおぼつかなくなる。

 ヴェルズが九尾を従えていた時は常に自分の近くに置いていたし、契約が切れたのも、ヴェルズが媒介としていた分霊が京たちによって消滅したからだ。

 マリには死霊を操る『鍵』を渡してはあるが、確実にマリよりも強いであろう九尾に指示を出すには、忘却界の中は遠すぎるようだ。


「愛し合う夫婦が文字通り一つとなった今、万が一ってこともあるからボクが操るのも勘弁願いたいねぇ!!」


 かと言って、ヴェルズに今の九尾を支配下に置く気はない。

 あの九尾に宿る二つの魂は、完全にパスが繋がっており、ヴェルズの力量を超えうる。

 愛し合う者同士をくっつけるというのはヴェルズの美学であるが、完全に手綱を握れているのならばともかく、一度断たれた契約をもう一度あの怪物と結ぶとなれば、さすがに無視できないリスクとなる。

 それは、九尾がマリの支配下に入っても変わらない。鞍替えをさせようとすればその瞬間に九尾は自由となる。

 そもそもマリに火中の栗を拾わせたのもそのリスクが理由であり、マリ本人は気付いていないが、返り討ちに遭う可能性も充分あった。

 そしてなにより、あの九尾が今後使い物になる可能性は低い。

 七賢第二位や三位の伴侶のように想いの通じ合った相手によって完璧に調整の行き届いた器ならばともかく、あのような腐りかけの肉体ではあの力には長くは耐えられない。

 たった一度きりしか使えないもののために己の消滅を天秤に乗せるのはヴェルズも御免だった。

 彼には、叶えなければならない願いがあるのだから。

 

「む!!」


 そこで、ヴェルズは視線を向ける方向を変えた。

 彼が見ているのは、霧間谷のある方角。

 そちらから、強大な気配がぶつかり合うのを感じたのだ。


「どうやら、向こうも始まったようだねぇ・・・!!」


 葛城山は、霧間谷からそう離れてはいない。

 大きな異変があれば、京たちよりも七賢第五位のコンビの方が先に駆けつけてくるのは自然だ。

 だからこそ、九尾による殺戮を邪魔されないために旅団は手を打っていた。


「ふふ、久しぶりの兄妹の再会だ。喜んでくれるといいねぇ!!・・・おっと!!」


 霧間谷を見ながら笑みを浮かべるヴェルズであったが、今度は白流の方角を向く。

 蟲の映す視界には、上空を高速で移動する小型飛行機があった。


「白流にも本当はもっと色々仕込みをしておきたかったんだがね・・・うーむ!!やはりあそこでボクがやられてしまったのは痛かったなぁ!!だがまあ、今更過去を悔やんでもしょうがない!!切り替えていこうじゃあないか!!」


 ヴェルズは立ち上がると、髑髏があしらわれた杖を振るう。

 すると、ヴェルズの身体が影に沈んでいった。


「京は抑えてあげよう。だから、君には期待しているよ?マリ!!」


 その言葉と共に、ヴェルズの姿は社から消える。

 後に残るのは静寂のみであった。



----


 同時刻。

 霧間谷。

 日本有数の霊能者の名家であった霧間一族が管理していた霊地。

 霊脈の影響か、一年中霧が立ち込める谷。


「朧!!まだなの!!」

「少し待て、リリス」


 金髪をツインテールにまとめたゴスロリの少女と、燕尾服に身を包んで携帯を眺める青年がいた。

 少女は学会七賢第五位のリリス。男の方はその夫の霧間朧。

 2人ともにさきほど葛城山から発せられた異様な霊力を感じ、臨戦態勢となっているが、未だに霧間谷にととどまっている。

 リリスは、険しい顔で葛城山を睨みながら口を開く。


「まったく・・・!!死霊術師ってのはこれだから嫌よね!!殺したと思った相手を何度でも利用してくるんだもの。よりによって九尾だなんて面倒なのを蘇らせてくれるわ」

「焦るな。相手は幻術に長けた神格持ち。それに加えて旅団の幹部もいる・・・自分たちだけが向かっても分が悪い。まずは京さんと合流だ」

「わ、わかってるわよぅ・・・」


 朧の指摘に、リリスはばつが悪そうに口を尖らせる。

 葛城山で異変が起きた直後、リリスは高貴なる義務を果たすべく、真っ先に向かおうとした。

 それを首根っこを掴んで止めたのが朧である。

 幻術使いの頂点にいる九尾に、単独で七賢とその伴侶の2人に相当する旅団の幹部がいるとなれば、朧の言うように分が悪い。

 幻術というものの厄介さを、霊能者の名家である朧はよくよく知っていた。

 だからこそ、対抗手段を持っているであろう京との合流を待つことにしたのだ。

 そこで、朧の携帯が振動した。


「もしもし・・・はい、もうすぐそちらを出るのですね?久路人君たちも来る、と。なるほど、白流から感じた霊力はそれで・・・はい、わかりました。我々も出ます・・・では失礼します」

「朧!!京はなんて!?」

「京さんたちも白流を出たそうだ。京さんたちの足なら30分程度だろう。自分たちもそれに間に合うように向かえとのことだ。そして、久路人君たちも来る。2人とも神格に至ったそうだ」

「そう、あの2人・・・こんなときじゃなきゃお祝いに行ったんだけど、今はしょうがないわね!!すぐ行きましょう!!アタシの馬車ならちょうどそのくらいよ!!」

「ああ。祝言は直接会って言うとしよう」


 京からの連絡を聞くや否や、リリスは魔法を使い、亡霊場の馬車を召喚した。

 リリスは人外の扱う術全般、特に人外化と使い魔の権威だ。

 馬車には七賢に支給される術具が仕込まれており、忘却界の中も通過可能である。

 2人を乗せた馬車は、すぐに空を駆け・・・


遣水(やりみず)!!』


「リリス、伏せろ!!」

「っ!?」


 丸太を尖らせた杭のような形の水流が飛来して、馬車を貫いた。

 朧は刀を抜き、咄嗟に伏せたリリスの前で水流を受け流す。


(重い・・・!!それに、この技は・・・)


 大部分を破壊された馬車が消滅する中、朧は自身の手に走る痺れに軽く目を見張りつつも、下手人に当たりを付けた。


「朧っ!?これはっ!?」

「敵襲だ」

「っ!!そうよね!!葛城山でなんかやらかそうってんなら、当然ここにもちょっかいかけるわよね!!」


 霧間谷は白流に匹敵する霊地。

 当然霊的な防御も施している。

 そんな中での突然の奇襲に混乱するリリスだったが、朧の言葉に冷静さを取り戻して立ち上がる。

 その直後だった。 


「久しぶりですね、兄さん」

「・・・・・」


 霧が立ち込める谷の中に、凛とした声が響く。

 次の瞬間、唐突に霧が晴れていき、声の主が露になった。


「お元気そうでなによりです、兄さん」

「・・・お前は」


 現れたのは、霧間八雲。

 霧間一族本家の娘にして、朧の妹だ。

 その顔には柔らかな笑みが浮かび、久方ぶりの肉親との再会を心の底から喜んでいるようだった。

 だが、一方の朧が八雲を見る目は、妹に向けるソレではない。


「ここに来るのも一か月ぶりでしょうか?やはり、霧間谷はいいですね。ここに満ちる霊力は落ち着きますよ。『某』(それがし)たちがずっと守ってきた土地ですもの。体に馴染んでいるのでしょうね。ああ、そうそう、某、とうとう夫になる人を見つけたんですよ。久路人さんと言って・・・」

「お前は誰だ」

「・・・・・」


 親し気に話しかけてくる八雲の言葉を遮るように、朧は問いかけた。

 言葉と共に、目の前の女に刀の切っ先を向ける。

 その瞬間、八雲の笑顔が固まった。


「お前から感じる霊力、以前とは比べ物にならない。短期間でそこまでの力を得ることなど不可能だ・・・余程の外法に手を出さない限りは。答えろ。お前、中に何を入れた?」

「ついでに言っておくけど、久路人にはもう切っても切れない雫って恋人がいるわよ。横恋慕かしら?みっともないわね」

「・・・・・」


 武器を向け、己を疑う兄の言葉。

 そして、この世の何よりも優先して消さなければならない血吸いの化物の声を聞き、笑顔すら抜け落ちた。

 顔を俯け、肩が震えだす。


「・・・やはり」

 

 顔を上げた八雲の眼に宿っているのは、憎悪の炎だった。


「やはり、お前が、人外どもがみんな悪いんですね」


 八雲の手に、剣がひと振り現れた。

 それは、これまで八雲が振るってきた刀ではなく、古めかしいロングソードであったが、八雲は慣れた様子でそれを握る。

 そして、兄がそうするように、吸血鬼に向かって刃を突き付けた。


「兄さんが、某を疑う訳がない。兄さんが、某に刀を向ける理由がない。兄さんが、人外の隣に立っているはずがない。お前が、お前がそそのかしたんだ!!」


 初めは静かだった声音が、次第に熱を帯びていく。

 それと共に、異様なほど濃密な霊力が吹き上がりつつあった。

 そして、それは瞬く間に破裂した。


「お前はっ!!お前は斬り殺すっ!!お前もっ!!あの蛇もっ!!人外どもは一匹残らず斬り殺してやるっ!!兄さんも、久路人さんもっ!!世界もっ!!この某が救うのだっ!!」

「っ!?」


 そのあまりにもおぞましい霊力に、リリスは思わず後ずさり・・・


「死ねぇっ!!」

「なっ!?」


 気づいたときには、リリスのすぐ目の前に剣の先端が迫っていた。

 それは、吸血鬼という魔力的にも身体能力的にも優れた種族の眼にもとまらぬ高速移動。

 

「・・・言った筈だ、愚昧」


 だが、その剣がリリスを害することはない。


「リリスは、自分の嫁だと」


 朧の刀が、八雲の剣を受け止めていた。

 霧間朧は、リリスが傷つくことを許さない。

 霧間朧は霧間リリスの唯一の食糧であり、最愛で最強のパートナーなのだから。


「離れろ。片男波紋(かたおなみもん)

「ぐあっ!?」


 朧の刀に水がうねって渦を巻き、朧は鍔迫り合いの距離にも関わらず、寸勁のように八雲に一撃を与えた。

 己の一撃を止められたこと、何より愛すべき兄が忌まわしい化物を嫁と呼んだことで意識に空白が生まれていた八雲は、真正面から衝撃を受けて吹き飛んだ。

 そして、視線を八雲から離さないまま、朧はパートナーに向かって口を開く。

 

「リリス、援護を頼む」

「っ!!ええっ!!このアタシに任せないっ!!あの生意気な義妹をいびってやるわ!!」


 その声に、その在り方に、怯んでいたリリスは即座に立ち直った。

 朧のすぐ後ろに立ち、愛用の杖を仕込んだ傘を取り出す。

 その様子を一瞥し、朧は一瞬ほほ笑むと、改めて構えた。

 

(そうよっ!!アタシには朧がいるじゃないっ!!怯える必要なんてどこにもないっ!!アタシがやるべきなのは、朧と一緒にアイツを倒すことっ!!まずは、アイツを知ることよ!!)

「おのれぇっ・・・っ!!」


 リリスの視界で、吹き飛んだ八雲が受け身をとって立ち上がる。

 その顔は、自身を攻撃した最愛の兄ではなく、そうするように仕向けたと思い込んでいるリリスに向いていた。

 だが七賢の伴侶にして同格たる朧の一撃を受けても、なんら痛痒があるように見えない。

 整った顔立ちは怒りで歪み、まさしく修羅のようだが、今度はリリスも怯まなかった。

 その頭脳は学会の最高峰の研究者として回転をしている。


(霊力はおかしいけど、アイツは人間!!朧と同じ水属性だから効き目が薄いのもわかるけど、ノーダメージなんて考えられない!!何かの術?いえ、特別な術を使っているようには見えないから、体質みたいな特性かしら・・・今回の葛城山の件とアイツが無関係とは思えない。なら、アイツも旅団の関係者!!旅団で該当する能力を持ってる強力なヤツは・・・!!)


 そこで、リリスは八雲の正体に気が付いた。


「朧っ!!アイツは『勇者』よっ!!こっちの攻撃は通らないっ!!持久戦を仕掛けるわっ!!」

「魔物殺しの勇者かっ!!承知したっ!!」

「ははっ!!やっぱりそうだっ!!また兄さんをそうやってそそのかして・・・やっぱりお前が悪いんだっ!!絶対に!!絶対にぶっ殺してやるよぉぉおぉおおおおおおおっ!!」


 そうして、霧間谷にて交わされる剣戟の嵐。

 その最中、朧は心中にて呟く。


(こちらは、完全に足止めされた・・・京さん、久路人君、済まないが、そちらは頼むっ!!)



----



「見えてきた・・・」


 月宮家の裏庭地下に隠されていた格納庫より飛び立った飛行機の中。

 久路人は窓から見える葛城山を目で捉えた。

 数年前に修学旅行で訪れ、心に深い傷を受けた場所。

 見間違えるはずもなかった。


「京、リリス殿から連絡はないのか?」

「ああ・・・ここからでも感じる霊力。足止めもらっちまってるみてーだな」


 葛城山が近づいていることに内心で久路人と同じく複雑な心境になりながらも、雫は京に友人のこと尋ねたが、返事は芳しくない。

 コクピットに座るリリスも無表情をわずかに歪める。


「あの2人を足止めするとなると・・・並大抵の者ではないでしょう。忘却界にいる人間の幹部や、ヴェルズではない」

「ああ。大穴が開いた気配はしねーから黒狼や戦鬼じゃねーだろうが・・・勇者かもしれねぇな。そうなると、朧たちの援護は期待できねぇ」

「時間はないかもしれないけど、朧さんたちを助けに行くのは?すぐに片付けて、葛城山に向かえば・・・」

「そうだ。我々4人とリリス殿たちなら、足止めなどすぐに倒せるだろう?この飛行機の速度ならばそれほどのロスにはなるまい。九尾も動いていないようだしな」

「いや、勇者相手だとそうもいかねぇ。確かに俺たちなら負けはしねぇだろうが・・・」


 葛城山を睨みつつ唸る京に久路人と雫が問いかけるが、京の表情は変わらない。

 黒狼、戦鬼ほどの災害のような能力は持っていないが、人外を憎み続けた勇者には極めて厄介な特性が宿っている。

 それを説明しようとする京だったが・・・


「京!!敵襲です!!」

「チッ!!空にいるのに仕掛けてくるかよっ!!」


 不意に、飛行機に影が降りた。

 久路人が外を見ると、空にいくつもの黒い穴が開いている。


「何あれ?穴、じゃない!?」

「ヴェルズの野郎の檻の入口だ!!来るぞっ!!」


 京の言葉を合図にするかのように、黒い穴からいくつもの影が飛び出してきた。

 影が夕陽に照らされて、その骨しかない体が晒される。

 空中を舞う骨を見て、雫が叫んだ。


「骨の竜だとっ!?」

「ワイバーンスケルトンです。常世に生息する飛竜のアンデッドですね・・・対空兵装を起動します」

「久路人、お前も用意しとけ!!ヴェルズの戦法通りなら、群れに紛れてドでかいのが来るっ!!」

「わかった!!」


 夕闇に染まる中、地上より離れた空の上で死霊との戦いが幕を開けた。

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