表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/64

Structure【2/6】




 放課後。

 日が落ちそうな時間帯の、〈夜間地区〉。

「おい、ラピス。江館に対抗するっつってんのに長良川江館のある〈夜間地区〉に来て、どうするつもりだ?」

 歩き疲れた涙子が言う。

 一行は〈黎明地区〉から、乗り合いバスと徒歩で遠く〈夜間地区〉までやってきていた。

「にゃはは。江館の奴らの同人雑誌の秘密は、『遊戯ゲーム』にあるのにゃ」

「ゲーム? わたしたちは本を書きたいのだ、ラピスちゃん」

 コノコは腕を組んで、疑問を口にした。

 それに、金糸雀ラピスは即座に返答した。

「にゃからぁ、ゲームが同人誌の〈核〉なのにゃ!」

 わからないという風に、首を振る朽葉コノコ。

「どーいうことなのだ、ラピスちゃん?」

「むっふっふ。ゲーム世界を下敷きにして作品を構築しているのが、江館の塾生がつくっている同人雑誌『文芸江館』の売れ行きの秘密にゃのにゃぁ!」

 空美野涙子があごに手をやり、しばし考え込んでから言う。

「なるほどな。ゲーム的想像力がその源泉になっていて、そういうのを集めたのが、『文芸江館』なのか」

「そういうことにゃ。にゃたしに感謝しろよ、愚民ども」

 メダカが歩き疲れながら、ラピスに訊く。

「で。どこに向かってるんですか、ラズリの妹さん」

「お姉ちゃんの名前は出すなぁ!」

「あー、わかりましたよぉ。で、どこへ向かってるんですか」

 佐原メダカが尋ねると、

「絵葉書屋さんにゃのにゃー」

 と、言うラピス。

「説明が必要にゃのね。〈湊屋みなとや〉って地下街の店で絵葉書屋が売ってるにょだ。その絵葉書は、電脳世界に届ける葉書……正確には、電脳世界に〈にゃたしたちを運ぶ葉書〉にゃのにゃ」

「その電脳に運ぶ葉書がどーしたのですかぁ?」

「売ってるのは正確には絵葉書型ゲーム基盤にゃの。それを寄宿舎の図書室にある蒸気計算機に差し込むと、電脳世界に没入できて、ロールプレイング・ゲームをすることができるにょにゃ」

「ゲームで遊べるんですね、その絵葉書型ゲーム基盤を使うと。それで、遊んでどうするのですぅ?」

「佐原メダカもわからず屋にゃのにゃなぁ? にゃたしらもそれで電脳遊戯して、それをもとに、真っ向から江館の奴らの同人雑誌『文芸江館』に喧嘩売るにょにゃ!」

 涙子が、目の前を指さす。

「路地裏の入り口がそこにあるぜ。本当に地下街に、行くのか?」

 ラピスが、一行に向けて、言い放つ。

「にゃたしの電脳遊戯の誘いに乗ったからには、基盤を買って、ゲームを一緒にするにょにゃ!」

 メダカはあきれた風に、

「遊び仲間が欲しいって、最初から言えばいいじゃないですかぁ」

 と、ラピスに返す。

 が、当のラピスは、とたとたと早足で、暗い路地裏の地下街の中へ、入っていってしまった。

「追うのだ、メダカちゃん、涙子ちゃん」

「はい、コノコ姉さん」

「しゃーねぇなぁ」


 ラピス以外は、初めての地下街。

 女学生が行く場所じゃない。

 緊張が走る。

 だが、それよりも彼女らには好奇心が勝っていたのも、事実だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ