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Structure【1/6】

〈和の庭〉地方。

 帝都。

 黎明地区。

 十王堂高等女学校、寄宿舎。


「あ。用務員先生、おはようなのだー」

「え? 先生? あー、うん。えっと。おはよう、朽葉コノコさん」

「嬉しいのだ! 用務員先生から名前を憶えてもらえたのだ!」

「よかったですね、コノコ姉さん」

「メダカちゃんも早く覚えてもらえるようになるといいのだ!」

「えー。恥ずかしいなぁ。わたしはいいですよぉ」

「大丈夫。覚えてますよ、佐原メダカさん」

「きゃあああああああ! 名前覚えてもらえたあああぁぁ!」

「えっと。わたしに名前、憶えてもらえて……嬉しい?」

「嬉しいですよぉ」

「やったのだ、メダカちゃん! わたしも鼻が高いのだ!」

「わぁい! 名前覚えてもらえた! わたし、名前覚えてもらえたぁ」

「あはは……」

「おっす。おはよう、用務員先生」

「おはよう、空美野涙子さん」

「朝っぱらから廊下のモップ掛けか。用務員先生ってのは、大変なんだな」

「……まあ、ね」



 夢野壊色という、先日入ってきたばかりの〈用務員先生〉に挨拶したメダカたちは、朝食のため、寄宿舎の食堂へ向かう。



「コノコ姉さん……ちょっと」

「どうしたのだ、メダカちゃん」

「本当に、用務員先生を〈引きずり込む〉んですか?」

 佐原メダカに耳打ちされた朽葉コノコは、胸を張る。

「当然なのだ」

「えー……」

 乗り気じゃないメダカは、眼を細める。

 そこに、空美野涙子が割り込んでくる。

「だいたいよぉ、『同人雑誌』つくるのに、あいつの力が必要なのか、コノコ? あたしらで十分なんじゃねーの?」

 チッチッチ、と人差し指を左右に振るコノコ。

「甘いのだ、涙子ちゃん。それじゃ、〈江館〉の連中に勝てないのだ」

 江館とは、私塾・長良川江館のことを指す。

 ため息を吐く空美野涙子。

「あの〈用務員先生〉って、鏑木水館の塾長と知り合いってのが、まず、嘘っぽいぜ」

 頬を膨らますコノコ。

「涙子ちゃん。疑うなら空美野財閥の力で探るといいのだ。鏑木の塾長と喋りながら用務員先生が歩いてたのを、わたしはこの目で見たのだ!」

「ふーん。だからといって、わざと用務員先生の前でキャーキャー騒いで好感持たれるかっつったら、逆なんじゃねーの?」

「むぅ。じゃあ、涙子ちゃんは、水館なんていう書籍に強そうなところの近くにいる用務員先生を引き入れる方策がなにかあるって言うのかー!」

「普通に言ったらいいんじゃねーの。『先生なのにヒマそうだし、同人雑誌つくりに協力してください。敵は江館でつくってる同人雑誌です』ってな」

「それじゃ断られそうなのだぁ!」

「おい、こら、食堂で暴れるな、コノコ!」

「にゃはは。暴れているよーなのにゃなぁ、愚民どもめ!」

「む。その声は。ラピスちゃんなのだ! 部屋から出てくるなら、学校にも来るのだ」

「にゃたしは保健室でじゅぎょー受けてるからにゃいじょうぶなのにゃ!」

「あー。金糸雀かなりあの妹の方、久しぶりじゃん。朝、起きれたのか。保健室登校はよくないぜ。保険医を食べようって算段か?」

「にゃに言ってるのにゃ、涙子! にゃんたみたいな不良とにゃたしは違うにょにゃ!」

「ラピス。ホント、おめーはにゃーにゃーうっせぇなぁ。金糸雀の姉の方はどうした?」

「風紀委員会の委員長にゃから、教師の手伝いで早朝から学校に向かったにょにゃ。って、にゃー! 涙子に話す言葉はにゃいのにゃ!」

「はいはい。で、なんだよ、金糸雀ラピス。うっせーおまえが来たってことは、またくだらないこと言いに来たんだろ?」

「にゃたしが言うことはいつだってくだらなくにゃいのにゃぁ! 電脳遊戯のお誘いにゃ!」

 その場にいる全員、コノコとメダカと涙子が、首を傾げる。

「電脳遊戯? なんだそりゃ」

 鼻で笑う涙子。



 そして、今回の傍迷惑な事件は始まるのである。



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