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Higher Ground【6/7】





「英霊の意志を継ぎしわたしくに勝とうなど。笑止」

 手の指をバキバキ鳴らして、折鶴千代はわたしを睨みつけた。

 わたしは先手必勝とばかりに飛び出す。

「さぁてね。やってみなきゃわかんないわよ!」

 つばぜり合いなんてしてるつもりはない。

 撃破だけを考え、一歩を踏み出す。


 短い詠唱。

 わたしと折鶴を隔てるように〈人間の壁〉が床から生えてきて、障壁となった。

 人間を斬ると、刀は普通、脂などで切れ味が悪くなる。

 そうじゃなくてもさっきの戦いで斬りまくったのに、今度は壁のように人間を使うのか。

「このひとたちは今回のクーデターの被害者の方々の遺体です。リサイクルさせていただきました」

「趣味わりぃわね、折鶴」

 わたしはジャンプし、壁を蹴ってそこからさらに跳ぶ。

〈人間の壁〉の上を飛び越え、着地の重力を付加した蜘蛛切の一撃を折鶴にお見舞いする。

 折鶴の幻魔術の詠唱障壁は破壊され、折鶴はそのまま左肩をざっくり蜘蛛切で斬られた。

 飛び散る血液を媒体にして、折鶴は幻魔術を詠唱する。

 壁だったひとや、さっきわたしが斬って息絶えたであろう旅団のメンバーたちが起き上がり、一斉にわたしに飛び掛かる。

 高位の幻魔術だ。

 わたしは斬る、斬る、斬る。

 奪った銃も、片手でしっちゃかめっちゃかに乱射する。

〈魔性化〉したこの、リヴィングデッドたちを、わたしはエリミネートすることだけを考える。

 だが、あと数えられるくらい、五人ほどの人数の敵を残したところで、蜘蛛切は血を吸い過ぎて使い物にならなくなった。

 わたしは蜘蛛切を放り投げる。

 銃も全部、弾切れだし、どうせ土蜘蛛に銃は通じないので、捨てた。

 五人のリビングデッドが、覆いかぶさるように飛び掛かってきた。

 わたしは床をスライディングして移動。

 リヴィングデッドをすり抜ける。

 同時に。

 最前、詠唱に使った折鶴の血を、わたしが着ている服で吸い取るように滑り込みをした。

 リヴィングデッドは幻魔術の媒体が薄まったことで動きが鈍くなり、跳んだはいいが、転んで力尽きて勝手に積みあがってくれた。

 片手を押さえながら、折鶴は威嚇する。

「幻魔作用で魔性化しつつあるわたくしを、普通の方法で殺すことはできませんよ、壊色姉さん。降参したらどうで…………なっ!」


 わたしは。

 懐から二挺の拳銃を抜き取り、両手に構え、即座に一発ずつ発砲した。

 一発は外れたが、一発が折鶴の太ももに着弾する。

 バランスを崩し、転ぶ折鶴。

「そ、その紋様は……〈蜘蛛切〉だ、……と?」

 そう、蜘蛛切は初代だけではない。

 いつもは盛夏のトレンドマークになっている二代目蜘蛛切だが。

「二代目の〈蜘蛛切〉は三つ、存在する。ひとつは鏑木水館の鏑木盛夏が持つ短刀の蜘蛛切。もうひとつが長良川江館に置いてあった、普段は長良川鵜飼が管理している拳銃。そして」

 右手の方で構えている拳銃の照準を絞る。

「最後のひとつは、灰澤瑠歌の〈多賀郡館〉に保管してあった、〈革命の象徴〉のレプリカ」

 わたしは歯を食いしばりながら、笑みを向ける。

「あの革命の英霊の意志を継いでいるのは、わたしも同じなのよ、折鶴千代。その証拠がこの命中率抜群の拳銃〈蜘蛛切〉よ」



 撃つ。

 破裂音。

 幻魔作用ごと、土蜘蛛を引き裂く。

 わたしは魔性化しつつあった土蜘蛛を。

〈調伏〉させた。



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