Higher Ground【3/7】
☆
「折鶴様。お乗り換えの準備が出来ました」
「ふむ。早いな。もう時間か」
「そこの女の身柄はどうしますか? 我々の原子力飛空艇に同乗させますか」
「ここに縛ったまま置いておくことにします。我々を追うよりも、鏑木どもはこの夢野壊色を助けることを優先させるでしょう」
「この飛空艇はどういたしますか」
「ゆっくり高度を落としていけ。着陸ではなく、そのままだと地面にぶつかるように、ね。それで退魔士どもをこの飛空艇に意識を引き付ける」
「かしこまりました」
軍服を着た女性が立ち去ると、折鶴は檻の外からわたしを見た。
「クーデターをバカ呼ばわりとは、日和見主義に堕しましたね、壊色姉さん。それでは、生きていたらまたお会いいたしましょう」
勝ち誇った声を出し、後ろを向けると、この場から去っていく折鶴千代。
去るのを見てから、わたしはため息をついた。
「ここ、飛空艇の中なのね。どうりで原子力タービンの音が聴こえるわけだわ。さて。盛夏が来るとも思えないけど、どうしよう」
鎖に繋がれたまま、十分くらいの体感時間が経過した。
そろそろ奴らが言っていた「地面に叩きつけられる」頃合いだ。
参ったな……。
……その場に座していると、この牢屋に、走りこんでやってきた奴がいた。
「先輩! 壊色先輩! 墜落しますよ、逃げましょう!」
やってきたのは長良川鵜飼だった。
「鵜飼。どうやってここに?」
「大杉幸が場所を教えてくれて。幸がダイダラボウという巨人の〈魔性〉を幻魔術で呼び出したんです。そのダイダラボウの肩に乗ってこの飛空艇に降り立ちました!」
「大杉幸が、か。あ、そうね、『幼年学校』が出身だったわね、かぷりこや魚取漁子と一緒で」
「その二人も、合流しました。ボクたちも合流しましょう!」
「……わかったわ」
どこからか持ってきたカギで檻と鎖を解錠する鵜飼。
そうね。
盛夏はきっと吉野ヶ里咲サイドにいることでしょう。
わたしはわたしで、鵜飼とともに、大杉幸と会ってみようと思うわ。
わたしを見て、鵜飼が首をかしげる。
「どうしたんです、先輩? こんな時にニヤニヤしちゃって」
「いえ。なんでもないわ。ダイダラボウっていう巨人の〈魔性〉に飛び移りましょう。ありがとね、鵜飼」
「ナイトはお姫様を助けるものです。ボクが先輩の一番のナイトであるようにって、いつも思ってますから」
「可愛いこと、言うわね」
「さ。急ぎましょう」
「ええ。そうするわ」




