表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/64

Let Love Rule【1/5】

 もしも、清く正しく美しく踏み外すのが恋なのならば、それはコノコにとって、間違いなく「恋」だった。


 愛にはなれない、そばにいるのに窓越しのような、そんな「恋」。


 朽葉コノコの初恋の相手は女性で。


 アナーキストで。


 どうしようもなく魅力を備えて他人を離さない、そんなひとだった。


 名前は大杉幸。


 コノコは幸と出会い、踏み外してしまった。


 郷里を駆け落ちるが如くに離れ、大杉幸と暮らしだす。


 それはまだ、朽葉コノコが十王堂高等女学校に入学する前の話だ。


「わたしはバカなのだ」

 駆け落ちして〈和の庭〉の、帝都近郊の新興住宅地に住み始めて、コノコはある日、呟いた。

 自分にとっては、なんの得にもならない、ただ、苦しいだけの、「思想家」との生活。

 でも、愛想をつかすことがない。

 大杉幸は恋愛も巧みだった。

 大きな毒蛇に巻きつかれているかのように、身体も心も締め付けられる。


 離れられない!

 テンプテーション能力を持った、無政府主義者の首領にして、政府からの視点だと、土蜘蛛。

 それが、大杉幸という女性である。

 

 朽葉コノコは、幸の〈若い燕〉と呼ばれる存在になってしまった。

 コノコとしては、それで良かったのだ。

 平穏が訪れれば。

 結果、訪れることはなかったけれども。

 平穏なカップルを夢見ることを、その時のコノコは、願い続けた。


「幸お姉さま……」

 月明かりのもと、朽葉コノコは、ぼんやりとした大杉幸の残像を見る。

 昨日も、今日も、たぶん明日も……。



 今も、コノコは、大杉幸をどこか隠しながらも想い続けている。

 口には出すことじゃないから、しゃべらないけど。

 それに、幸のことを思い出すと、決まって泣きたくなるから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ