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Beats Knockin【1/6】

 間近で落雷が起こったかのような、耳をつんざく音が、光とともにあたりを一瞬、異空間化した。

 直後、電気機械が爆ぜ、倉庫の建物全体が炎に包まれた。

 ジャミングによって無力化された、電波・電気系統となおも唸り続ける蒸気機関のタービンが齟齬をきたしたのだろう。


「これが軍と警察が共同で開発した、対電脳兵器、〈ジャミングガン〉なのね」


 横にいる鏑木盛夏が、感心したように言う。


「凄いですね、園田乙女刑事」


「開発は軍。今回、配備されて使うことになったのは警察になりましたが」


「軍が実働隊になるのを防いだのは、園田のお手柄でしょう」


「いや、鏑木盛夏。軍はこうして我々が使った方が都合が良かったのでしょう。警察でも、抑止力になることを見せないとならなかった」


「そういうものなのかしら」


「そうです、盛夏。警察は今、世紀の大怪盗と呼ばれている、野中もやいの逮捕ができず、民衆は警察に愛想を尽かしています」


 わたしは、

「ふーん。怪盗・野中もやい、ねぇ」

 と、呟いた。

 ここんとこ、園田刑事も怪盗騒ぎでひっかきまわされているのはみんなが知っていることで、確かに、警察は軍と結びつきがあることを、見せたいだろうなぁ、と思った。

 警察を怒らすと国が出てくるぞ、ということにしたいわけだ。

 三権分立は嘘っぱちであることがある、ということを匂わせたい意図があるのだろう。

 行政警察である憲兵隊は言うにしかず。


 盛夏が付け足す。

「ジャミングガンの実用に関しては、〈黎明派〉からの資金提供があったらしいわね」

「黎明派……吉野ヶ里咲、か」

 わたしたちは、燃えるレンガつくりのこの建物からゆっくりと外に出る。

 ボロボロと、崩れていく建物の中の「絡繰り機械」を無力化したのを視認して。


「なんにせよ、武久現の絵葉書型電脳端末の駆除が行えただけで、良しとしたいところです」

「そうね」

 外に出たところで、燃える倉庫を眺めながら盛夏が頷く。



「あの自己増殖型のバケモノ、わたし、嫌いなのよねー」

「壊色は、電気機器の扱い、下手ですものね」

「それを言うと、蒸気機関でエネルギーを生み出すテクノロジーも、わかってないんだけどさ」

「あら。あちしの講義が、あなたにも必要なようね、壊色」

「うひー」


 園田乙女刑事が笑いをかみ殺す。

「仲が良いのですね、お二人とも」


「仲良くない!」

 と、ハモるわたしと盛夏。


 園田刑事は、倉庫を眺めながら、

「その吉野ヶ里咲、のことなのですが。……最近、悪夢にうなされているそうで、講演会のキャンセルが続いています」

 と、うなだれる。

 吉野ヶ里のことが心配らしい。

「へぇ……」

 冷たい顔になる盛夏。

「できれば、退魔士の方に様子を見ていただきたい、とのことなのですが」

「……引き受けましょう。お代は頂戴するけどね。それじゃ、早いところ、お伺いしなきゃ。明日には行くわよ、壊色」

「え? わたしも?」

「あなたしかいないでしょう、吉野ヶ里の友人さん」

「友人じゃないって! 旅先でよく一緒になってただけで」

「その繋がりで十分よ」

「そんなものなのかしらねぇ」



 園田が頭を下げる。

「よろしくお願いします」

「じゃあ、武久現自身を捕まえるの、頑張ってね。機械のバケモノはつくればいくらでもできるし、いたちごっこになるだけよ。武久を、倒してね」

「はい、必ず」



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