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Structure【6/6】




 鏑木盛夏が糸を手繰った先には、巣があった。

 蜘蛛の巣。

 土蜘蛛の意図するところの、病巣。



「これより〈病巣〉の摘出の〈術式〉を行うわ」


 鏑木盛夏は、短刀・蜘蛛切で、病巣を切除する。


 その手裁きは、慣れたものだった。

 一瞬で〈切除〉が完了する。


 そこにいる、土蜘蛛の〈巣〉である〈魂〉を、引き裂いたのだ。


「術式、終了よ」


 土蜘蛛は、

「ピキー」と息を漏らすと、消し炭になって消えた。



 幻想郷でコノコに囁いていた、土蜘蛛が消滅したのだ。





 その場にへたり込む朽葉コノコ。

「終わった、のだ……」




「さぁ、逃げましょう。器物損壊で訴えられるわ。ドア壊したし」

「奇遇ね、盛夏。わたしも、ほとぼりが冷めてから、寄宿舎には戻ろうと思ってたところよ。今は撤退だわ」


 ダッシュでその場を去る二人。

 夢野壊色はコノコに気づかない。


 だが。

「終わりじゃないわよ」

 走り抜けるとき、鏑木盛夏は、コノコに向かって、そう言ってから、走り去った。




「終わり……じゃ、ない…………?」

 頭の上にはてなマークが浮かんだままで、コノコは横に倒れ、気を失った。








 どうせ明日という日はあって、空虚がわたしを満たしていく、いつの日からか。

 だから、つくった小説がわたしの全てであるような、そんな気もするのです。

 それは虚構以外の何物でもないのだけれども、わたし自身の運命へのわたしのレジスタンス活動でもあって。

 散らばった夢をもう一度詰め込んで、照準を絞って引き金を引いて撃ち込む。

 その弾丸が、わたしの小説なのです。


 …………夢野壊色。




「これで、いいかしら。巻頭文は?」

 用務員先生、夢野壊色はコノコたちに書いた原稿を見せて、はにかんだ。


 コノコは結果として、〈用務員先生〉を、同人に引き込むことに成功した。

 ここに、同人雑誌『新白日』は、創刊する。


 その代わり、鏑木盛夏に今回の事件という大きな弱みを掴まれたコノコ、メダカ、涙子、ラピスの四人は、私塾・鏑木水館に、入塾させられてしまったのである。




 鏑木塾長は、水館の塾邸で、コノコたちに大きな声で言う。


「あなたたちにはこれから、〈水兎学〉を叩きこむわ! 険しい道になるけど、これからよろしく!」




「よろしくじゃないのだー」

 泣きそうになる、朽葉コノコたち。





「ね。終わりじゃないって、言ったでしょう?」





 こうして、今回の傍迷惑な事件は、一応の決着を見るのであった。




〈了〉

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