催眠療法
「催眠療法って、、あの、私にはやはり、その、何か精神の異常が、、?」
「先ず、今現在の貴方の状態から説明しましょう。」
そう言って丁寧に説明を始めた。
声が聞こえる理由とは、、幼い頃に「こうあるべき」と両親や教師などに強制された結果、知らず知らずに自分の中に作られてしまった刷り込み。それを正しいと思わなければならなかった自分、その心の中に押し込めた本音が形を変え、あたかも別の人として存在し、その声を受け取っているのだという。
嫌でも従うしかない、それを受け入れる自分と拒絶したい自分との板挟みで、そこから離れようと自分自身を客観視する。そしてそれが本来の自分から解離していった結果だと言う。
ただ、誠の場合は自分を放棄していないので、原因を探し元の状態に戻していけるのだそうである。
誠は医師の説明を全て把握出来なかった。が、しかし、、このままでは自分ではどうにもならないと言う事だけは理解した。
「先生、その、催眠療法とやらは、安全な物なんですか?」誠が不安そうに聞くと、医師は軽く笑いながら、
「大丈夫です。ただリラックスして頂くだけて良いのです。それで貴方の潜在意識に入っていきます。それを何回か繰り返して『声が聞こえる』原因を突き止めましょう。」
「分かりました、お願いします。」
「催眠療法にも幾つか種類がありますので、順番に試していきましょう。施術の部屋が別になりますので、改めてまた来週に予約を取ってください。」
「宜しくお願いします。」
誠は不安を抱えながらも、同じ曜日の同じ時間に予約をし、そのまま家に帰って行った。