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沈んだ船の後継者  作者: ライブイ
1章 目覚めの島
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1話 今と昔

「さて、ここはどこで、俺は誰でしょうか。記憶はありすぎるほどあるのですけど。」


 島の外周部にある浜辺にカプセルのような救命ボートが漂着した。そこからルプス号から流れついた少年、アレットは目を覚ますと同時に這い出てきてつぶやいた。


「俺はたしか・・・魔物に襲われて、船が壊滅して・・・。たしかみんなが俺を海に流した・・・・ような?俺は無事に助かったということか。」


 アレットはまだ八歳の少年だが、その言葉遣いは歳不相当に丁寧なものであった。それに子供らしく混乱し泣き叫ぶのではなく、現状を正確に認識しようとしたものだ。アレットは記憶を探りながら現在までの経緯を正確に考察した。

 魔物に襲われ故郷である船と家族を失ったという過酷な現実に頭が追い付いていないのか、アレットは比較的冷静に自分の状態を把握することができた。


「あれ?魔物にやられた怪我が消えている?ポーションをのんだ覚えはないけど・・・、救命ボートに回復魔術でもかけてあったのか?」


そう呟きながら、救命ボートに積んであるアイテムポーチと呼ばれる、見た目以上の容量を誇る空間属性のマジックアイテムのカバンをあさり始めた。




 アイテムポーチをあさった結果、アレットが普段から使用しているものと同系統の武具、生命力や魔力を回復するポーション、数か月は持つ保存食などの漂流した先がどのような場所であっても生きていけるだけの道具、他に使い道が分からないマジックアイテムに、今のアレットでは理解できない書物などが入っていた。


「うん。怪我の具合も体力も問題なし。装備もアイテムポーチに収納されていたし、今からでも魔物と戦えるな。・・・というかほかのみんなは無事だろうか?」


 しばらくして現実に頭が追い付いてきたアレットは、自分以外の安否を考えるだけの余裕が出ていていた。最初に思い浮かべたのは違う方向に流された友人たちだ。自分は大丈夫だったから他も大丈夫・・・などといえるほど楽観的ではない。全員生き残った可能性もあるが、自分以外全滅している可能性もある。

しかし、船の学者たちは一人でも多く生かすために海流まで計算してバラバラに流したのだから、考えるだけ無駄だ。無事を祈る以外にできることはないだろう。


 「船は・・・まあ。無理だろうな」


 その次に故郷である船を思い浮かべたが、こちらは友人たちと違い完全に全滅したものだと理解していた。自分が海に流された時、船員たちが致命傷を負っていたことや船の下部が破壊され浸水していたことを覚えていたため、船は壊滅したと予想していた。そのため否定することなく、理屈では受け入れた。


 そこまで考えて、だれかのために涙を流せる優しい人と評されていたはずのアレットは、どういうわけか涙が全く流れていないことに気が付いた。




「しかし、この覚えのない記憶はいったい……?」


 アレットは自分の家族や友人をすべて失い故郷も文字通り消滅したが、それに匹敵するほどのもう一つの衝撃に襲われていた。


 アレットは人間社会とは隔絶した船で生まれ育った少年であり、言葉遣いも有する知識も(人間社会とは異なる道を歩んだ社会の中では)年相応だ。しかし今の彼には、どういうわけか【地球】と呼ばれる世界で百年生きた人の記憶と経験が備わっていた。

 これはその人の記憶を参考にすると、アレットの前世がその人であり、その人の記憶が何らかの理由で蘇ったのだと考えられる。しかし、船にいた時は【地球】の知識など有していなかった。


 アレットの生まれ育った船団を含め、この世界ではすべての生き物は死ぬと他の生き物に生まれ変わる輪廻転生が「事実」として認識されている。しかし同時に、死亡し魂が輪廻の輪に移るとそれまでに持っていた記憶は消滅するものだ。前世の記憶を保持しているということはあり得ない。

しかし現に前世の記憶らしきものを有している以上、その考えが違っているということになってしまう。


 アレットは間違いなくこの世界で生まれ育った人間だ。物心ついたときには両親たちに囲まれて生活しており、それからも早く一人前の戦士になれるよう学びながら今日まで生きてきた。

 それなのに【地球】とやらの記憶は何なのか。自分とは見た目も経歴も周囲の社会や環境も何もかもが違う人間の記憶。共通点など性別くらいしかわからない。

 しかし【地球】の記憶も他人事だとは思えない。百年生きた人といっても正確には百歳の老人の記憶なので、だいぶ記憶が抜け落ちているのだが、夢や妄想ではないことは感覚的に確信できる。


「俺はルプス号で優しい両親から生まれて、周囲からはいずれ戦士長になるだろうといわれた、人魚の血が混ざった人族のアレット・・・・・・・のはずだよな。」


 自分のプロフィールに間違いはない。しかしそれとは別で、救命ボートで目を覚ました前後で自分の記憶や思考、そしてなにより精神構造がありえないほどに変化していることに、アレットは自分が何者なのかわからなくなるほど混乱していた。

 正確には、記憶が蘇ったときに複数の思考を並列して使えるようになったので、複数有するようになった思考の一つが混乱し、混乱しながら俯瞰的に冷静な思考もしていた。


 あまりにショックな出来事があると、自分の考え方や価値観が急激に変化することは十分にあることだ。しかしアレットは船(家族や友人)が死んだと認識していながら涙が流れなかったのだ。

現実を受け入れられずに涙が流れないならばまだ耐えられる。しかし今の自分が親や友人を赤の他人として認識し涙が流れないのであれば、それは今日までの自分のアイデンティティの喪失だ。そもそも今までのアレットであれば、仮に赤の他人であったとしても涙を流しただろう。そう考えると今のアレットはルプス号で生まれ育ったアレットとは明確に別人といえてしまう、かもしれない。


 加えてアレットは、この自分は何者なのか自問自答するような考えにも違和感を覚えている。自分はこんな風に物事を考える人間だっただろうか?船にいた時は年相応の考え方をしていたはずだ。ルプス号にいた時は人と正面から向き合う人間的な人物だったはずだ。

明確に船にいた時とは考え方が変化している。いや。この前世の記憶らしきものとは関係なく、故郷と家族を魔物に襲われて失ったから自分は変わったのか?


 そんな風にあらゆる可能性を網羅するように考えている自分にも不快感と違和感がぬぐえない。自分はこんな考え方をする人間ではなかった。自分は本当にルプス号で生まれ育ったアレットなのかも疑わしく思えてきた。

 自分はアレットという少年であり、そこに【地球】で生きた人間の記憶が蘇ったのか。それとも【地球】で生きた人間であり、赤の他人であるアレットという少年に憑依するように人格を乗っ取ったのか。考えるほどに負のスパイラルにはまっていた。




 そこまで考えて混乱から抜け出せなくなっていたことに気が付いたアレットは、なんとなしに背後の海を、正確には海面越しに泳ぐ魚を見た。


「うん。とりあえず魚を取りましょうか。」


 結論が出そうになかったのでアレットはそれまでの思考を投げ捨てて、新鮮でおいしい食料の確保に動き出した。


・名前:アレット

・種族:人種(人魚)

・年齢:8歳

・称号:無し

・ジョブ:水属性魔術師

・レベル:70

・ジョブ履歴:見習い戦士、弓術士、錬金術師

・能力値

生命力:280

魔力 :532

力  :120

敏捷 :161

体力 :208

知力 :389


・パッシブスキル

水属性耐性:5Lv

物理耐性:3Lv

魔術耐性:3Lv

状態異常耐性:3Lv

怪力:2Lv

能力値強化:水辺:3Lv

自己強化:水辺:3Lv


・アクティブスキル

錬金術:6Lv

弓術:5Lv

鎧術:3Lv

盾術:3Lv

格闘術:3Lv

無属性魔術:1Lv

水属性魔術:6Lv

土属性魔術:3Lv

魔術制御:5Lv

家事:1Lv

歌唱:6Lv

指揮:2Lv

限界突破:2Lv


ユニークスキル

水の祝福

同じく3,4日後に

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