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第73話 山賊アジト襲撃

 自警団は馬を降りて森の木々の影から砦の様子を伺っていた。目の前にある砦は山賊のアジトである。


 アラド達はほぼドンピシャでこのアジトへとたどり着いていた。


「人影がないな」


 望遠鏡でアジトを(のぞ)いていたアラドが(つぶや)く。


「もうすでに我々の行動を掴み、構えているのでしょう」


 部下の兵士が答える。


 そのとおりだ。連中は罠を張って待ち構えている。アラドも同意見だ。アジトの構造は外観から内部を想定するしかないが、せめて敵の人員の配置を知りたいところである。それにより敵がどう考え、何をしようとしているかおおよそ分かるからだ。


 モンスターとの戦いと違い人と人の戦いは知略との戦いとなる。相手の中に罠に長けているものがいるのは(わだち)の件で明白である。


 アラドが隠れている木の上から紙がヒラヒラと一枚落ちてきた。アラドはそれを拾うと開いて中を確かめる。


「ふむ、やはり予想通りの展開だな」


 紙にはアジトの罠の位置と敵の配置が記されている。それはおおよそアラドの予想の範疇(はんちゅう)であった。


 アラドもまた、分団長まで上り詰めた男である。数多くの実戦を経て、過去の戦術を勉強してきた。


 アラドは立ち上がると手を伸ばし回りに見えるようくるくると回し、手を振り下ろした。作戦開始の合図である。


 木の上に隠れていた弓矢隊が一斉に矢を放つ。狙った先は門を挟んで反対側の木の上に隠れている山賊どもだ。


 山賊も応戦を開始する。


 由美は地上から弓矢で応戦をして、美紀がそれを手伝い、梨沙と舞衣が彼女らを盾で護衛した。


 アラドが次の指示を出すと大きな板のついた手押し車が開いている門へと駆ける。その両脇をタワーシールドを構えた歩兵が手押し車の歩兵を守りながら並走する。


 門を越えたとき、突然手押し車の車輪が地面に落ちて身動きできなくなった。落とし穴である。手押し車の板が大きく開くとそれは三枚連なった板で一気にアジト奥へと一本道を作った。


 そして本隊が一斉に突き進み、板の上を駆けることで仕かけられていた落とし穴を回避する。


「よおし、本隊はうまくいったな」


 レイラは腕を上げて振り下ろした。別動隊の進撃合図である。彼らは砦の裏にある山の斜面を静かに駆けおりる。砦の壁に梯子(はしご)を設置して内部へと雪崩こんだ。


 龍児、晴樹、颯太、葵もレイラに続く。


 砦は一気に混戦となった。こうなっては森にいる弓矢隊は意味をなさない。元々落とし穴で足を止めたところを狙う予定だったのだ。


 降りて加勢しようとするがアラド達の弓矢隊がそれを許さなかった。人数は互角だったのだがこれにより初戦はアラドたちの有利へと傾いた。


 だが問題だったのは砦の中である。隠し扉による伏兵や罠により思うように進行できずに足止めを食らう。


 しかし砦の背後から襲ってきたレイラにより、その均衡は崩れる。


 龍児と晴樹はレイラの勧めで手持ちの武器をショートソードに変更して龍児はパワーで、晴樹は技術で敵を倒していく。


 もっとも龍児の場合、体が大きすぎるため狭い砦内では剣で斬るより殴る蹴るのほうが早かったため剣は防御にしか使わなかった。連中を捕まえて情報を得るためにもそのほうが都合が良い。


 人員を表と裏側に取られたため砦内は手薄である。レイラ達は一気に敵の指令部を襲った。


 そこは三階のアジトでもっと高い場所である。背後の壁以外は吹き抜けの窓で辺りがよく見回せた。武器が納められている樽や棚などが窓際に配置されていた。


 中央のテーブルに地図とコマが置かれており、ここで指揮していたのは明白である。


 レイラは山賊の首領らしきゴツい男に斬りかかったが、男の抜いた剣であしらわれた。


 筋肉ダルマのような体格、四角い顔に彫りの深い顔つき、大きく見開いたギョロリとした目は腕前に自信が満ち溢れているようだ。獣のベストを羽織っているあたり、いかにも山賊といった感じを(かも)しだしている。


 レイラは首領と剣を交えて、かなりの手練れだと感じた。さらに彼の護衛が彼女を襲う。


 レイラは剣技にはかなりの自信があり、実際かなり強い。


 彼女の武器は少し細目のソードだ。パワーより技を主体にしている。彼女の強みはその技の多さ、スピード、状況に合わせた的確な判断である。


 だが3対1ではさすがのレイラも分が悪い。首領とはいったん距離をおき、テーブルなどのオブジェを利用しつつ囲まれないよう小まめに位置を変えた。


 仲間の自警団員がすぐさま彼女の援護に入ったが、首領の一撃で呆気なく倒されてしまう。再び3対1となってしまったレイラに首領の剣が振り下ろされる。


 それを止めたのは駆けつけてきた龍児であった。


「苦戦してるようだな、加勢してやるぜ!」


「まだ苦戦ってほどじゃない!」


 レイラは強気で返す。


「しゃらくせぇ、まとめて死ねぇ!」


 首領の豪快な振り下ろしに龍児は剣を構えたままかわす。晴樹から教わった体さばきだ。龍児は首領の次の手を読む。


 ()ぎ払いがくる。


 それは龍児が正拳をかわされたときによく使う手だ。


 首領が手首をひねるのを確認した。龍児は構えた剣を最短コースで振り払う。ウォルトが教えてくれた対人用の最短最速の攻撃だ!


 龍児の剣先が首領の手首を切り裂き、鮮血が吹き出した。


「ほう、あれから腕を上げたか」


 レイラが感心している所に晴樹が乱入する。敵が増えたことに護衛の二人が動揺しするとレイラはそれを見逃さない。閃光のような剣撃で二人の敵をあっという間に倒してまう。


 『赤い閃光のレイラ』人は彼女をそう呼ぶが彼女の前でそれをいうとかなり嫌がる。レイラはそのあだ名が恥ずかしくて嫌いであった。


「すっげ、出番なし」


 晴樹は残念そうにする。龍児は彼女の剣さばきに感動して口笛を鳴らした。


「こいつどうするの?」


「決まっている。尋問だ」


 晴樹の質問に龍児は腕をボキボキと鳴らして首領を威嚇する。


「まて、龍児!」


 そんな龍児をレイラは止める。


「な、なんでたよ」


「尋問するには手順が必要だ」


 そう言ってレイラは剣を構えると、目にも止まらぬ突きを放つと首領の両肩、両足を突き刺した。首領は悲鳴の変わりに歯を食い縛り、レイラを睨み付けた。


 首領の怪我は手首のみだ。体力もパワーも残っており油断はできない。囲まれて大人しくてチャンスを伺っているだけだとレイラは判断した。


「五体満足なヤツを尋問してはならない。要らぬ反撃を受けることになるぞ」


「くそったれめ!!」


 首領は悪態を付いた。明らかに何か狙ったけれども読まれたと言った感じであった。


 コレばかりはレイラのようにはできないかもと龍児は思った。だがヤツならきっと喜んでやっただろうなと、あの男を思い浮かべてしまい。要らぬヤツを想像してしまったと後悔すると振り払うように頭をブンブンと振る。


「おい! 俺のような黒い髪と瞳の仲間をどこにやった! 男一人と女二人だ!」


「ハァ!? 知らねぇよ」


「お前らが昨日襲った馬車にいただろうが!!」


「知るかよ! 俺たちは荷物しか取っておらんわ!」


 首領の言葉に龍児は青くなって本当に居ないのかとレイラの顔を見ながら首領を指差し不安げな顔を(さら)した。


 レイラは間抜けな龍児の顔にため息をつく。


「おい、我々の拷問を()めるなよ!」


 そう言って首領の肩の傷口を足蹴にして(かかと)をねじり混んだ。首領の顔が苦痛に歪むが口を割るどころかさらに悪態をつく。


「勝手にしやがれ!!」


 仮にもゴロツキどもの親玉だ。一筋縄ではいかない。肝は座っており、根性もある。そんなヤツの口を割るのは難しい。弱みでもあれば別なのだがとレイラは残念に思った。


 親玉を縛り上げ表に出ると既に戦闘は終わっていた。


 龍児達の仲間は無傷であったが、一番危険な立ち回りを行った自警団は2名が死亡、6名が軽傷を負った。


 砦の中央に捉えた山賊を順番に尋問するが誰も知らないの一点張りであった。見せしめに一人かなりキツイ拷問を行ったが結果は同じであった。


 龍児は嫌な予感が当たり、青ざめて膝から落ちた。


「どこに行ったんだよ……先生……拓真ァ……あと一人いぃぃ!!」


 龍児は涙を流す。せめて彼らが無事でいて欲しいと願うのであった。


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