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第44話 ボナミザ商会3

「こ、こんなヤツのどこがいいんだか……」


 梨沙は自分の主張の腰を折られ、思いがけない展開に戸惑いながらも、再び刀夜を(けな)した。だが当の本人は特に堪えた様子もなく、もはやそんな主張なぞどうでもいいような顔をしている。


「あんたみたいな男経験の浅いお子ちゃまには分からないでしょうね」


「――――――――――――――――ッ!」


 梨沙が怒りを(あらわ)にしようとしたとき、青白くなったブランキが止めた。


「や、やめろ。あんた誰に向かってそんな口聞いてんだ。この人の機嫌一つで俺達は簡単に死ぬんだぞ。刀夜もなぜ止めないんだ?」


「俺は自殺志願者まで助ける気はない」


「――――!」


 自分だけが置かれている立場を理解していない。状況を理解していないのだとバカにされた気がした。いや、バカにされたのだ。


 確かにここは異世界で自分達の世界の常識など通用しない場所だ。それは嫌というほど味わった。しかし、ここに来ても目の前にいるただのオバサンがそれほど危険な相手だという認識が今ですら感覚がない。


 刀夜はすでに気づいている。いや路地裏に入ったときから彼の雰囲気は緊張感を漂わせていた。またしても彼の適応力の高さを見せつけられた。


 梨沙はまたしても敗北を感じると悔し涙を流しながら部屋から駆け出していった。


「梨沙、待って!」

「あ、お、おい」


 美紀とブランキは梨沙を追って部屋を出ていこうとするが、ブランキはドアから顔だけだした。


「あ、あの、契約のほうですが……」


「大丈夫よ。約束は守るわ」


 その言葉に安心して、深々と頭を下げると梨沙を追った。

 そんなブランキ達とは裏腹に刀夜はお茶をすすっている。


「貴方は追いかけないの?」


「ああ、あいつらに任せるよ。それよりせっかく人払いできたんだ。仕事の話をしたいな」


 仕事の話と聞いて女将(おかみ)の目付きが変わる。無言で手を上げると店の男達は部屋を出ていって扉を閉めた。


 刀夜は鞄から小さなものを取り出して彼女の前にソレを置く。女将(おかみ)はソレを目にすると目を輝かせた。


「コレを一般市場に流すのと、あなたに託すのとどっちがお得かな?」


 そう問われて女将(おかみ)はやはりこの男への見立ては間違っていないと確信した。


「くくくく、よく分かってるじゃない。無論ウチで扱ったほうが得よ。それに出品者の秘密も守られるわ」


「やはり一般市場に出すのは危険か……」


 『秘密を守る』その一言に込められた意味を刀夜は感じ取った。


「どのくらいあるの?」


「今は沢山としか……」


「どこで手に入れたの?」


「…………」


「プルシ村ね!」


「――正確にはアーグ討伐時の盗賊のアジトだ」


 刀夜は黙っていようと思ったが、簡単に見透かされてしまったので白状する。それはアーグの女王の裏で見つけた宝箱に隠されていた『古代金貨』であった。その総数は43枚だが、その数は刀夜も正確には把握していない。数える間が無かったのだ。


 これは一般市場に流せば金貨2150枚相当であるが、そんなに流せば当然相場は落ちる。1枚でも流せばあっという間にがた落ちに成るほどである。


 刀夜は村の宿屋で貨幣の説明を聞いた際に『古代金貨はコレクターが扱うもの』と聞いていたので一般より裏のオークションのほうが高値が付くと判断したのだ。


「だから、金貨山分けの時、それらしく断っていたのね。とんだペテン師ね」


 そういいつつも彼女の顔はにやけている。女将(おかみ)は刀夜には野心や欲望が足らないかと思っていた。だがこの男は金剛石の原石などではなく、すでに磨かれた金剛石なのだと嬉しさが込み上げてきた。


「あなた一体何者?」


 女将(おかみ)にそう問われ刀夜は異世界人であることを話した。この人は信用の重みを知っている人だと感じたからだ。そう簡単に広めたりはしないだろうと。


「成るほど、でも貴方のソレは異世界人だからって訳じゃなさそうね。目的は元の世界に戻りたいのね」


「そうだ」


「残念ね、あんたならウチの店をもっと大きくできる逸材だと思ったのに……」


「……期待に添えず、すまない」


「いいわよ、たまに私の相手してくれるなら……」


「酒の肴程度で……」


「冗談よ、もう少し女の扱いを覚えてからでいいわ」


 刀夜は手持ちの古代金貨をすべてを(さら)した。その多さに女将(おかみ)は度肝を抜く。さすがに一度にこれほどの枚数を見るのは初めてで、それは壮観だった。


 古代金貨は年に1~3枚程度しか流通しない。まったく流通しない年もある。それが大量にあるということは誰も行ったことのない遺跡から入手したのだろうと予想した。


 それを山賊が奪った。だが売ることもできず仕方なく隠していたのだろう。


「コレの件だけどさすがに裏でも一度に捌くのは無理ね。時間をかけてじっくり。時には金以外の取引にも使えるわよ」


「当面の資金はあるから急ぎはしない。じっくりやってくれ。それで手数料は?」


「金貨20枚になるけど、売れたときに差し引いておくから」


「それっぽっちでいいのか?」


「ええ、残りはあんたがこの先どんな人生を歩むのか、その観賞料として受け取っておくわ」


「失望されないよう努力するよ」


 刀夜と女将(おかみ)は握手を交わすと彼女はそっと刀夜に情報を教えてくれた。


「情報を探すならピエルバルグに行くといいわ。あそこはこの辺りじゃあ最大の街で魔術ギルドの大図書館があるのよ。この街より圧倒的に情報はあるはずよ。ついでにウチ店の本店もあるから、貴方から預かったものはそっちに移しておくわね」


「何から何まですまない」


「いいのよ、好きでやっているんだから。私も普段は本店よ、遊びに来てね」


「ああ、寄らせてもらうよ」


 ボナミザの女将(おかみ)とはここで別れた。刀夜にとって思わぬコネクションができたことになる。情報も入り、次の目標が定まった。


 そして前金として幾らか金貨を融通してもらった。


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