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龍児と刀夜 ―異世界サバイバル―  作者: 滝ノ森もみじ
第1章 サバイバル編
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第28話 和解

 そして地味(じみ)な刀夜のバッグがひっくり返された。


 出てきたのはタオルと果実、着替え、水筒、ペットボトル、グローブ、シューズ、ロープ、筆記具一式、双眼鏡、ライトペン、小さな救急セット、カラビナ……


 そして銀貨、銅貨が十数枚出てきた。


「と、刀夜、お前なんであんなに!?」


 梨沙が硬貨の多さに驚く。てっきり皆の前で見せたときのものがすべてだと思いこんでいたからだ。


「別に隠していたわけじゃない」


 嘘である。刀夜は必要があれば皆の為に使うつもりはあったが、必要なければ自分に何かあったときに使うつもりであった。もっともそれは校舎前にいたころの話ではあるが。


 梨沙は本当かよと刀夜に疑いの眼差しを送った。


「うおっ」


 だがその貨幣に一番驚いていたのは村の連中だった。刀夜は彼らの反応で、あれは貴重品なのだと確信する。


「そ、村長、これは古代貨幣だ! それも銀貨がこんなに!」


 だが古代貨幣とは何か、刀夜は彼らの反応でそれが普通の貨幣では無いことは分かったが、どう違っていて価値はどうなのかまでは分からない。


「こ、これは何処(どこ)で手に入れたのだ?」


「山で拾った。鞄の中に入っていた」


「嘘だ、山の中にそんな都合よく落ちてるものか! さてはてめえら山賊だろ!」


「もし俺が山賊をするなら地の利を把握できる地元でやるな。俺達が異国人だという事はもう分かって貰えたと思ったが? それに山には化け物がでるんじゃなかったか?」


 言われて刀夜の体操服に興味を示した村の男が衣服を触ると体操服が伸びたことに男は驚いた。


「うわっ! こいつの服、伸びるぞ!?」


 男の驚き具合から刀夜はこちらには伸縮性のある生地はないと判断した。


「こんな生地はこっちには無いのではないか? それにおれ達の鞄の生地も出てきた道具も見たことは無いのではないか?」


 刀夜は村の文化レベルから恐らくナイロンのような石油から精製されたものはないと判断した。


 村長も老人達も鞄や道具を珍しがる。村の男が梨沙や美紀の制服に興味を持って触ろうとする。


「い、いや、止めてよぉ」


 美紀が嫌がった。その声に反応した村長は怒鳴る。


「こら! 止めんか、村の品位を(おとし)める気か!!」


「す、すいやせん……あまりにも珍しかった物で……」


 男は手を離すとすごすごと身を引いた。


 どうやらこんな村でも規律や品格を重んじる風習があるようだと刀夜は感じた。ならば疑いさえ晴れれば無下な扱いはされないだろうと踏む。


 村長は再び老人達と話をする。


 この村では村長だからと言っても独裁的な権限はなかった。老人達はかつての歴代の村長を務めてきた者であり、村の大事は村長を含めて多数決で決めていた。


「ブランキ……彼らの縄をほどいてやりなさい」


「そ、村長!?」


「彼の主張通り、彼らが異人であることは疑いなさそうである。山賊をしていたのなら武器が短剣が2本だけであるはずがないし。ましてやおなご連れで山賊は無かろう。とはいえすべててを信じるわけにはいかない」


 村長は顎の無精髭をジョリジョリと触りながら結論を伝えた。

 その困ったような表情からいまだ迷いはあるのだろう。


「異人よ村への滞在を許可する。ただし悪いがあなた方には見張りをつけさせてもらう」


「はい、依存はありません。俺は名は刀夜、隣の金髪の娘は梨沙、その隣が美紀と申します」


「刀夜、梨沙、美紀殿だなわかった。今宵(こよい)私の家で(うたげ)を開くので色々と聞かせて貰えないだろうか?」


「わかりました、お招きありがとうございます」


「ブランキ、ブレンダ、ルーナ、彼らの面倒を見てやりなさい」


 そう言われて前に出てきたのは金髪で顔立ちが整った長身の男性と同じくセミロングの金髪でエプロンを掛けた若い女性であった。


 男性のほうがブレンダ。一見スラッとしたイケメン風の男であるが、この村ではブランキに次いでの実力者である。袖から出ている腕は筋肉質であり、服の上からでも分かるほどの胸板がある。


 刀夜は見張りにつけるぐらいなのだから、それなりの腕っぷしなのだろうと予測した。


 女性のほうがルーナ。三人の中では一番若くソバカスが特徴である。力はないが梨沙と美紀に配慮して村長が付けたのだ。男の二人と違って優しそうな雰囲気をかもし出している。


 三人が散らかされた荷物をバッグに戻しているとブランキが声をかけてきた。


「取り敢えずだが、古代貨幣なんぞ持ってるくらいだから宿に泊まってもらう」


「え、宿があるの? やったぁ!」


 美紀が喜ぶ。野宿でろくに睡眠が取れていないので安心して寝られるのは有り難かった。刀夜も梨沙も目の前にベッドがあればその誘惑に勝てないかも知れないほど疲弊(ひへい)していた。


「おい、こんな村の宿なんだ街のような宿を期待するなよ!」


「街があるのか?」


「ああ、馬車で1日程の所にヤンタルの街がある」


「その街は城壁のような物で囲まれた街か?」


「ああ、そうだよ。なんだ、知ってんじゃねえか。なら聞くなよ!」


「いや、山の上から少し見えただけだ。実在するなら有難い」


「街に行きたいのか?」


「そこでね、はぐれた仲間と落ち合う予定なんだ」


 美紀が嬉しそうに答えた。美紀のとても嬉しそうな顔にブランキは刀夜が語った内容が本当なのかと疑いを緩めた。


「仲間ってのは何人なんだい?」


「ええっとぉ~」


 美紀は指をおりおり数え始めたが、じれったいと感じた刀夜が答える。


「この地に着いたときは31人だ。多くが亡くなって大体10人ほど……生きていればな……」


「……そうか、生きてるといいな」


「生きてるさ、必ず会うんだ」


 梨沙はまるで自分自身に言い聞かせるように言うが、無論彼女が会いたいのは晴樹であろう。刀夜にしても親友である晴樹の安否は気になるところであった。


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