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龍児と刀夜 ―異世界サバイバル―  作者: 滝ノ森もみじ
第1章 サバイバル編
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第13話 悲劇の残痕

 突如の獣の襲来により生徒の1/3を失った。


 無惨な光景に呆然(ぼうぜん)とし、生徒達は亡くなった友達に涙する。


 そのような中で刀夜は落ちていた剣を拾うと倒れている獣の頭に一撃を入れた。


「や、八神君!?」


 委員長が驚きの声を上げる。刀夜の突然の奇行(きこう)にクラスメイトは動揺(どうよう)する。


「な、何をしているだ?」


 委員長は彼の行動の意味が分からず理由を尋ねた。刀夜は次の獣のに向かいながら振り向きもせず答える。


「死に損ないがいないよう止めを刺している」


 2匹目の獣に剣を振り下ろすと、獣の体がビクリと動いた。


「……ほらな」


 ようやく振り向き、獣を親指で指し示した。万が一生きていた場合、再び襲われる危険性がある。この後何をやるにしてもあらゆる危険性は徹底的に排除しておく。それが刀夜の考えかただ。


「けっ、よくやるぜ」


 龍児は刀夜に聞こえるよう悪態をついた。


 龍児はあれから苛立ちを隠せなくなっていた。獣の襲撃により理不尽な死に方をしたクラスメイトが不憫であり、腹立たしく、怒りのやり場がない。また獣のことだけではなく拐われた仲間に誰一人動く素振り見せなかったことに対してもだ。


 龍児から挑発を受けた刀夜は挑発に対して挑発で返す。


「この非常時にぼさっとできるなんて、とんだ大物だな」


「なにィ!」


 龍児が怒りを露にしようとしたとき、彼を止めたのは委員長だ。龍児が飛び出しそうなのを片手で止める。


「彼のいうことは最もだ。クラスメイトを失ったのは悲しい。だがあんな獣がいた以上、すぐに対策せねば!」


 委員長は振り向き、皆の顔を見合せる。


「皆すぐに行動に移ろう!」


「行動と言っても、何をしたらいいの?」


 葵が困った顔で尋ねた。


「む、そ、そうだな………………誰か提案はないか?」


 委員長はとっさに答えられなかったので皆に問う。しかしながら誰も直ぐに現実的で具体的な提案ができず、取り止めのない意見ばかりであった。


「こーゆー事なら、もう行動しているアイツに聞けばいいよ」


 晴樹の提案に委員長は成るほどと思った。すでに行動しているという事は、どうするべきかプランがあるに違いないと。


「刀夜ー!」


 晴樹が大きな声を上げて刀夜を呼ぶ。彼は5匹目に止めを刺すと呼びつけた相手に振り返った。


「手伝いたいんだけど、俺達何をしたらいい?」


 晴樹に刀夜は即座に答えた。


「まずは火が消えないようにしてくれ。荷物をまとめて脱出の準備。それから見張り。教室にある道具を片っ端から集めてくれ。机も椅子も蛍光灯も全部だ。あと水の補給と松明になりそうな薪集め。ついでにロープになりそうなツルがないか探してくれ。敵の武器の回収。取り敢えずそんな所だ」


 刀夜の口からポンポンと提案が出る。


「よ、よく次から次へと出るな……」


 拓真が感心している所に副委員長が詰め寄る。


「委員長」


「なんだい、副委員長?」


「その副委員長って言い方、止めてもらえます。宇佐美です」


 副委員長こと宇佐美舞衣はその呼ばれ方が嫌いだった。委員長選抜の時に河内拓真と一騎討ちとなったのだが、彼に負けてしまったのだ。


 本当は委員長をやりたかった。


 学業では負けたことがないので彼には勝てるという自負があった。最も委員長の選抜に成績など関係は無いのだが、彼女自身にはプライドがあった。


 そのような理由から負けた今、『副委員長』と呼ばれるとその時の悔しさが少しではあるが沸いてくるのだった。


「俺なんかずっと委員長と言われているぞ」


「……わかりました。好きにして下さい」


 その言葉は舞衣にとって嫌みに聞こえるのだが、逆に拓真はそう言ったことには疎かった。


「それで、何なのかな?」


「それなのですが、できればクラスメイトをちゃんと葬ってあげたいのですが……」


「葬る? この状況でか? 火葬にしても土葬にしても時間がかかりそうだな……道具もないし」


「並べてハンカチを被せて、花を添えるぐらいでも結構です。あのまま放置するのはあまりにも不憫で……」


「そうだな、そのくらいなら時間もかからんか。それで行こう」


 拓真自信も級友をそのままにしておくのは忍びないと感じていたので、手間がかからない方法なら良いと思った。


 それに加えてこのまま夜を明かすにしても遺体とご一緒は嫌だった。中には寝相が悪くてご遺体を抱き枕にするようなやからも出るかも知れない。


「でもどうやって運ぶの? 抱えたら血でべったりだよ。中にはエグいのもあるし……」


 話に聞き耳を立てていた葵は嫌そうにする。


「それなら、カーテンで運べばいいんじゃねーの? ハンモックみたいによ」


 意外な人物から案が出た。机を運んでいた久保颯太だった。到底そんな気の効いたアイデアが出そうにない鈍才な印象だけに皆の意表をついた。


「ああ、成るほど。それならあまり汚れないね」


「運び終わったら、ハンカチの代わりに被せることもできますわね。久保君、いいアイデアね」


「ふふーん、もっと誉めて誉めて」


 葵と舞衣が感心すると颯太は調子に乗る。


「と、いうわけで久保君、それは君に任せた」


「おう、そんな事は俺に任せておけぇーってオレええぇぇえッ」


 誉められて有頂天になった颯太だったが、まさか自分に役が回ってくるとは思っても見なかった。過去にも同様に(おだ)てられて乗せられたことがあるが、彼はその方面で学習というものを知らない。


「やぶ蛇とはこの事だな、頑張れよ」


 龍児は笑いを堪えて颯太を励まして肩に手をやった。だが颯太は涙目で龍児に訴えかける。


「龍児ぃぃ、一人じゃできないから手伝ってくれぇぇ」


「ふむ、そうだな、一人では無理だから佐藤君にも頼もうか」


「なッ! やぶ蛇ぃ!!」


 その後、委員長と副委員長が仕切って仕事を割り当て、各々が作業を進めた。


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