本格的なパフォーマンスには、多少の失敗は付き物です
「美しい履き物を片方いただけますか?」
俺女は姉ちゃんのプラチナに輝く靴を指差す。
首をかしげながら姉ちゃんがその右の靴を脱いで俺女に差し出す。
「ありがとございます」
恭しく左手で受け取って靴の中に右手を差し込む俺女。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
引き出された右手には、どう見ても靴より長いストローが握られていた。
ストローを観覧席によく見えるように手を伸ばして、反対の手で靴を空中に投げる。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
俺女の手の中に落ちてきたのは、虹色に輝くクリスタル?のカップだった。
カップにストローを差し込み、カップごと姉ちゃんに差し出す俺女。
「お嬢さん、どうぞ」
受け取ってストローを取り出してくわえる姉ちゃん。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
ストローの先からはシャボン玉が大量に放たれた。
浮かび壊れて消えるシャボン玉。
何度もシャボン玉を作る姉ちゃん。
俺女がその空中に飛んでいるシャボン玉にの1つに手を伸ばしす。
そしてその中から俺女が1つをつかんだ。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
すると、シャボン玉は、俺女の手の内で透明な直径7㎝くらいの大きなガラス玉になっていた。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
両手を素早く交差させる俺女。
時々手をとめると、指の間のでっかいガラス玉が増えている。
右手に1個だったのが、左右1個づつの2個に。
2個が両手で抱えた3個にと、どんどん分裂してるみたいに増える。
俺女が3個のガラス玉を右腕に抱えるように持って、左手でステッキに引っかけたシルクハットをカップとストローを持った姉ちゃんに手にかける。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
姉ちゃんがシルクハットを外すと、カップとストローはまとめて1つの同じ大きさのガラス玉になっていた。
後ろに脱いであるマントの上に姉ちゃんがシルクハットを置く。
同じところに俺女もステッキを置く。
「もう一人お嬢さんにお手伝いを願いたいですね」
俺女が観覧席を流し目で見回す。
期待に満ちた女子生徒達。
「ほう、あそこにもお嬢さんがおられる」
ステージ横の放送室を眺める俺女。
視線が放送室に集まる。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
マントなんかを置いた、姉ちゃんの後ろに人影が揺れる。
シルクハットをかぶり、マントをまとってステッキを持った、制服姿の女子生徒が忽然と現れたんだ。
メファシェハだよ!
「……Onogur・Anna!(オノグル・アンナ!)」
メファシェハの方を向いて叫ぶ俺女。
あ、呪文が変わった。
の、わりには変化がないぞ?
失敗かな?
「……Arupado?……Tururi Arupado!(アールパード?トゥルリ・アールパード!)」
メファシェハも呪文を叫んだ。
変化が……有ったんだか無かったんだか。
姉ちゃんが持ってきたイスにメファシェハを座らせた。
「美しいお嬢さんにお手伝いをお願いしましょう」
俺女が繰り返す。
さっきの失敗がこたえてるのか、少し自信が無さげ。
メファシェハにガラス玉を4個手のひらに並べさせた。
右手に2個、左手にも2個。
俺女が後ろにたって呪文。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
左右に水平に広げたメファシェハの腕を右手のガラス玉2つがスルスルと移動する。
腕から、肩に、首の後ろを過ぎて左側に、そして左肩から左腕を通り左手のガラス玉と合流。
4個のガラス玉はさっきと逆ルートで右手に。
拍手が広がる。
姉ちゃんがガラス玉を4個受けとる。
俺女がメファシェハの両手を前に出させて指を上に向けて揃える。
そのメファシェハの手に姉ちゃんがガラス玉を3個のせた。
俺女が姉ちゃんから最後の1個のガラス玉を受け取り、ピラミッド形みたく3個のガラス玉の上にのせた。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
下の3個のガラス玉が位置を変えながらくるくるローリングを始める。
これ、俺女でなく、メファシェハのジャグリングがうまいだけな気がするんだが。
拍手とため息。
確かに光を反射しててキレイだよな。
ピラミッドの上下の位置を1つづつ変えたり、胸の前でガラス玉を踊らせたり。
これは俺女でなくメファシェハだろうが。
え?
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
胸の前で踊らせてたガラス玉が1個減って、3個に成ってる。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
あ、更に減って2個だ。
2個のガラス玉を俺女が左右に1個ずつ持って合わせる。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
ガラス玉は1個だ。
そのガラス玉を照明に向けて高く掲げて俺女がまた叫ぶ。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
光の中からは出てきた俺女の右手がつかんでいたのは、ガラス玉ではなく、プラチナに輝く靴だった。
恭しく膝まづき、姉ちゃんにプラチナの靴をはかせる俺女。
イスに座ったメファシェハから、シルクハットとステッキを受け取りる姉ちゃん。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
メファシェハから俺女がマントをバッと取ると、無人のイスが現れた。
拍手と歓声。
そのマントが姉ちゃんを隠した。
「Leck mich im Arsch!(レック・ミッヒ・イム・アルシュ!)」
一瞬後にひるがえされたマントのしたからは、シルクハットをかぶりステッキを持った、制服姿の姉ちゃんだ。
靴も体育館履きだ。
イスに脚を組んで座った俺女。
右脇に立って微笑んでる姉ちゃん。
「楽しめてくれたかな?」
野太い声で俺女が言って右目でウィンク。
バッとマントをひるがえすと、姉ちゃんと俺女が消えて、イスにマントがかかっていた。
大歓声大拍手。
で、放送室から姉ちゃんとメファシェハが出てきて、イスとマントをもった。
「次は今日最後のプログラム、久高と我が校による手に汗握る刀剣道のパフォーマンスです。ではどうぞ」
ふたりで観覧席に手を伸ばして、放送室に消えて行った。
あのイスの放送室の備品だ。




