こんな時に頼りになるのが頭のいい親友か?
まあ、火の元、電気、エアコン、テレビに戸締り、確認した。
あまりだらだらしてると遅刻になるんで、くそ寒い中を中学まで、だらだら歩く。
うぅ、さすが埼玉のチベットさみぃなぁ。
制服の上にウィンドブレーカー、マフラーぐるぐる、イヤーマッフル手袋マスク。
制服の下にぁ、ティシャツ短パン&トランクス。
おまけに靴下二重履き。
でも、さみぃ。
歩けば暖かくな……らん!風が冷てぇ。
「おはようございます。中野くん」
「先生、おっはようございまぁす」
家出てから15分、校門に到着。
そこには先生やら風紀委員たちやらと一緒に【朝のあいさつ運動】に勤しむ姉ちゃんもいた。
【トゥゥ・フイィ・エゴ・エリス】
のっ〜!何でまたこのタイミングで音が……じゃねぇよ!絶てぇ声だこれ!
ぜってぇ、子供か女の声の高い声。
昇降口の真ん前の階段登って左手すぐが僕ら2年3組だ。
「おはよう」
ガヤガヤうるさい教室に前のドアから入り見回すと、ちゃんとツレは来てた。
ウィンドブレーカーやらマフラーやらイヤーマッフルやらを教室後ろの自分のロッカーに放り込む。
窓際一番前が、ちびっ……身長が発展途上の僕の席。
「はよう」
ツレにあいさつしながら、リュックとカバンを机横フックに引っかけた。
「太賀氏おはよう」
ツレのコマッちゃんこと、小松崎利延があいさつしてくれた。
コマッちゃんの名前はかっけぇ。
特に小松崎の【崎】が。
僕の中野に【崎】を付けても【中野崎】ですげぇ違和感。
でも、小松に【崎】が付いた【小松崎】はかっけぇ。
「太賀氏、何か悩んでる?」
椅子に後ろ向きに座ると、後ろの席のコマッちゃんが聞いてくる。
「わかんね文章があって」
「国語?英語?宿題出てたっけ?」
「何語かわかんね。トゥゥフイィエゴエリス」
「トゥゥフイィエゴエリス?」
コマッちゃんが繰り返して目を閉じてる。
何か知ってるっぽい。
「そ。トゥゥ・フイィ・エゴ・エリス知ってるん?」
「トゥゥ・フイィ・エゴ・エリス、トゥー・フイー・エゴ・エリスだね」コマッちゃんが目を開けた。
「たしか、ラテン言で“私はあなたであった。あなたは私になるだろう”って意味だったと思うけど。後で図書室でちゃんとみてみよ」
やっぱりコマッちゃんは頼りになる。