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プロローグ-5 恨みの始まり

「つまり私は五年前の人魔大戦の時に魔王と対峙した聖騎士、ステラ・カルミヌスです!!」


ドヤ顔で語ったレヴィは鼻息をフンと鳴らし、悲しいかな、たいして大きくもない胸を張る。


デュランは冷たい目をレヴィに向け、諦めたように息を吐く。まるでどうしようもないバカを取り扱うように。


「はぁ、まったく下らん事に時間を費やした…」


「あ!その様子だと信じてませんねー」


「信じられるか普通。なんだ復活だとかお伽話の英雄じゃないんだ、そんなつまらない事を聞きたい訳じゃない」


「本当なのに…」


レヴィの戯言を無視して指をさし真剣な眼差しで再び問い詰める。


「いいか、よーく聞け。お前が魔王様に恨みを抱いているという噂が広まっているがそれは本当なのか?」


「はい本当ですよ」


ケロッと言い切った。


「…はぁ、もういい」


話にならないと判断しシッシッと手でレヴィを仰ぎどっかいけとジェスチャーする。


「うわ、異性にそんな扱い受けたの初めてです」


デュランがレヴィの戯言を聞き流していると扉の方から緑と黒の騎士団の制服を身につけた白髪と白色の外骨格をした魔族が現れた。


「お話の中失礼しまーす。デュラン団長、配達屋がきてますよー。後レヴィちゃんおっひさー」


赤色の二つの主眼で団長を捉えつつも、緑色の複眼で赤髪のレヴィを捉えている。その為レヴィに全く顔を向けずに鋭く尖った爪をした黒色の手だけ振ってくる。


「そうかご苦労だったな。そうだタイナ、レヴィを連れて街の見回りに行ってきてくれ。コイツはずっと魔王様の側にいたから街について疎い。道案内も兼ねて教えてやれ」


「ほいほーい、りょーかーいだだだだだ!? きゅ、急に耳引っ張らないで下さいよぅ。アプローチが過激だなぁ、蜘蛛はデリケートなんですよー」


「適当な態度を取るなとお前は何度言ったらわかる!もっと騎士として恥ずべきではない言動をだな……」


説教に入りそうになるとシワを寄せた嫌そうな顔をして耳を塞ぎながら上司との距離を離す。


「うへぇ…じゃあ見回りいってきまーす。レヴィちゃん準備できたら正門でねー」


そう言ってタイナと呼ばれた蜘蛛魔族は逃げるように医務室から出て行った。最後に複眼の一つがこちらにウィンクを決めた。


「そういう事だからタイナと一緒に街を見てこい。ずっと魔王様の側に居たから街の事なんて知らないだろ。俺は仕事場(団長室)に戻るからな」


団長も足取り早めで開けっ放しのドア閉めて退室してしまった。


そんな平和な魔族の騎士としての日常に不思議というか変に達観した気分になる。


(魔族も人も案外変わらないものですね。魔王)


見回りする準備をする為パタパタと自室の方へと向かうのであった。



♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎



二週間前


ここは…どこだ?


私は景色が反転する程酷い頭痛を感じながら意識を取り戻した。


途方もなく長く寝ていた気分だ。水中からようやく顔を出せたように息を荒々しく吸い込む。


「…ッ…ハッァ…ハァ…ァッ……ハッ…!」


やけに息苦しい。


視界が朧げで目が目として機能していない。


足がふらついてマトモに立ち上がる事も出来ないまま、壁と思われる物に手を付いて立ち上がろうとする。


が、何処かの路地裏なのだろうか、ジメジメした空間の為壁が湿っており手が滑ってしまった。


そのまま泥へとなんの抵抗もできずベシャリと身を被せてしまう。


その時泥に塗れた自分肌色の腕と赤い髪が視界に入り、『自分』について考えてしまった。


「私は…?」


私は…何をしていた?私は…どういう存在だ?私は…なんだ?


唐突に自分という疑問が明確な恐怖へと変わっていった。自分という存在がわからず怖れていた。


「あ、あぁあぁぁぁ…」


足元が崩れ、見えない何かに飲み込まれていく感覚。これが絶望というのだろうか。


わからない。何もわからない。


それがここまで恐ろしい物だと思えなかった。


行くべき道も場所も未来も見えない、明かりもないただ暗闇だけが広がる世界の中で必死に手を伸ばす。


まるで砂漠で水を求める魚のように。


どれ程の時間が経過しただろう。


ようやく目は機能し始め、空は曇ってしまった事を確認できた。


この感じはどしゃ降りかもしれない。


だがそこまで考えても雨宿りをする気は無かった。


次第にポツポツと空から雫が落ち、泥まみれの体を濡らして行く。


「私…は…なん…の、ため…に…生きて……」


「ひ、ヒィィィーー!!?」

「待てやおらー!」


表通りと思われる活気ある所から声が聞こえてきた。どうでもいいと無関心に無視したいが、何処かで聞き覚えのある声だ。とても、心を燻るような


「さっさと反魔王派の情報を吐け、そうすれば五体満足の独房行きで勘弁してやる」


「く、クソッタレ!」


私の髪が乱暴に引っ張られる。首にヒヤリとした金属物質の刃がチクリと当たる感覚がする。


「お、おい待てよチビ悪魔、この女がどうなってもいいのか!!」


刃は私の首元を小さく裂き、見せつけるように赤い血を垂らす。その様子を見て黒髪の少年は舌打ちをする。


ああ、私、生きてても迷惑をかけてるんだ。じゃあ…


「こ……さい……」


「へ、どうだ!コイツ、こうして命乞いまでしてるぜ、ええおい!!魔王様よぉ…!?」


死ぬのは怖い。


今でも体が生きろと熱をだし、震えさせて訴えてくる。


涙も出てくる。


だけど…


誰かの罪になって生きる方が怖くて、許せなかった。


「殺して…下さい」


「私を…殺して…ください…お願い…します」

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