プロローグ-4 魔族騎士レヴィ
両腕が徐々に治り始めたレヴィが赤いポニーテールをピコピコと揺らしながら答え始めた。
「えっとですね、デュラン団長は私がどういう経緯で魔族騎士団に入団したのかご存知ですよね」
「ああ、魔王様が路地裏で途方に暮れてるお前を拾ってきた時だろう。いきなりお前を連れてきて騎士団に入れろと命令された時は驚いたぞ」
「あはは…ですが私が拾われた際、反魔王派の襲撃を受けたのですよ」
デュランは口をアングリと開け呆然としながら魔王へと向く。魔王も罰が悪そうに頭を掻いている。
「何故言ってくれなかったのですか魔王様! おっしゃって頂ければ、直ぐに反逆者の討伐に出向くこともできます!」
「おいデュラン、あの時、俺が外出するのを知っていたのはお前だけだったよな? 勿論俺はその日、魔法による変装をして出かけたんだ。神様から貰った魔力での魔法だ、"魔法阻害"や"正体看破"の魔法は効かない状態の俺を外で見つけて襲撃するなんて不可能だ」
「………は?」
その情報を魔王から得て勘づいてしまう。その時、襲撃出来る状況にいたのが自分自身だということに
「お前しかいないんだ。俺に襲撃ができる奴は」
「ですが魔王は意地になって"あいつは違う""そんなわけない"ってずっと否定してたのですよ。そこで私は本性を暴く為に魔王と毎日喧嘩して誘っていたのです。自分が狙う対象が怪我を負って不調ならば絶対狙ってきますからね」
「まぁ、それでも出てこなかったから、昨日喧嘩する前に風呂場で話し会ってな。重症を負っても出てこなかったらデュランは白という事にしようって」
「それで今襲ってこないので、結果は白ですよデュラン団長」
「そ、それで今日の朝からこんな大事を起こしたのですか…」
「あ、いや、待てデュラン!確かにお前が怒るのは無理はないが俺だって__」
デュランは魔王の言葉を待たずにその場で片膝をつき、頭を下げた。
「魔王様ありがとうございます!!私は貴方様により一層忠誠を尽くします!!」
「お、おいおい…こんな所で最敬礼なんてすんなよ…つーかその薬塗ってくれないか?少し痛いんだ」
「ハッ」
「私の腕ももう治りつつありますね、凄い効き目ですよこの薬」
「あの羊、今でもこの薬の製法を教えないだよなぁ。売れば凄く儲かるのに…名前はなんて書いてあるんだ?」
デュランが瓶を回して適当に貼り付けている名札を見つける。
「えーと…"ぼんど"と、書いてあります」
「は?」
「ですから"ぼんど"
魔王は傷を無視して立ち上がり
「あんのクソヒツジィィィィィィィィィーーー!!!」
と叫んで医務室の扉を乱暴に開け駆け出していった。
ポカーンと口を開けて塗り薬を持った指を宙に浮かせているとレヴィが肩を回し始めた。
「よし治りました!魔王待ってくださいー」
そう言って魔王を追いかける為に開けっぱなしの扉へ向かうがデュランに制止を促されてしまう。
「ちょ、ちょっと待ってくれレヴィ!」
「? なんでしょうか」
塗り薬を瓶に戻しながら棚へと慌てながらしまう。
「なぁ、今回の事といいその呼び捨てといい、お前と魔王様はどんな関係なんだ?」
レヴィは顎に指を当ててどう答えようかと考え出す。そして思いついたのか顔を上げる。
「恨み恨まれる関係です! では」
「バカおま…では、じゃねぇ! そんなの聴いてタダで帰さんぞ全部話せ!!」
「むぅ、仕方ないですねー。では語りましょう!聞くも涙!話すも涙のも〜の〜が〜た〜り〜」
「さっさと話せ」
「先ずはpart1運命の宿命編から」
「…全部で幾つあるんだ?」
「part 25までです!!」
「よしわかった。五分でまとめろ」
「ワンパート12秒かー、よーしがんばるぞー」
「は?ちょっとまてレヴィ。まさか本当にやるつもりじゃないだろうな?」
「まぁ、流石に五分はキツイので主要なところだけご静聴ください」
咳払いをして昔話を聞かせるようにゆったりした口調で話が始まった。
「昔々あるところに一人の人間聖騎士がおりました。その聖騎士は余りあるというか、もはや人外レベルの領域である力を身につけており、そのせいで化け物呼ばわりされ、多くの民から石を投げられておりましたクソッタレ。そんな時、魔王と呼ばれる魔族の王が名乗りを上げて人間への進行を開始しました。さぁ大変だと国王はそのワンマン破城槌と異名を持った聖騎士に出撃を命じます。聖騎士は決戦荒野と呼ばれる場所で魔王と対峙してそこで____
「ああ、そこは分かる。魔王様の勝ちで終わったのだな飛ばしていいぞ」
そう言うと一気にヤル気がなくなったのか適当なペラペラした感じで再開する。
「ここが一番盛り上がるのに…えーとで、聖騎士は魔王に倒されて、五年後何故か復活して更に魔族になっていましたー。その後魔王に回収された私は魔族騎士になり現在はここ、医務室にいまーす。はいおしまいです」
……………はい?
ワンマン破城槌
昔、怒り狂った聖騎士は酔っ払った勢いで巨大な王門を蹴り壊した。その際だれかがこの名前を言った。他にも異名があり、金髪ゴリラ騎士、人の皮を被った怪力鬼など様々。