3-6 術式起動
遅くなりましタァ!
ですが満足いく形になりましタァ!
書いて良かった!
書き直して本当に良かった!
書いて、とても楽しいシーンでした!
巨大な術式が浮かぶ空を飛翔する小さな影があった。
「デュラン! 今回の事件を綺麗にまとめて言え!」
『随分な無茶を仰られますね、我らの王は!?』
それは夜空と同化するほどの、漆黒の翼を広げた魔王だ。
彼はこの空に浮かぶ巨大術式をどうにかする為に動いていた。
「んじゃ質問! アレがお前にどう見える、というか見た事あるか?」
『ないです! 恐らく魔族史上において最大規模かと、それと奇妙な事に術式だけですねアレ!』
空に浮かぶ術式は星型マークがゆっくりと周りながら、水色に妖光するだけだ。
「それだ! いくら術式でもアレじゃあ意味がなさすぎる!」
『術式は詠唱するか、術式内に魔力文字を刻む事で意味を持ちますよね』
「そして今から詠唱するにしても、この馬鹿でかい術式だ。それに比例してより強大な詠唱が必要だ」
『強大と言いますと?』
デュランが尋ねると、魔王は高速飛翔をしながら横目で魔族街を見渡す。
「この規模だと、魔王城をライブ会場にしても足りねぇ! 仮に詠唱したとしても『自分はここにいますよ』というもの、今の今まで隠れ切ってた首謀者がするかそんな事!」
そして魔王はスピードアップの為、自分の背中に緑色の星型術式を展開する。
「ウィンド・ブースト!」
術式は魔王の詠唱に応えて、魔王の背中に追い風作りだし、魔王を加速させる。
「更に言えば、この通り詠唱は叫ぶ! つまり相手に『自分はこうしますよ』と宣言してしまい、即座に対応される。つまり自分諸共の自爆計画には全然使えない!自爆どころか、自滅だ」
『だからと言って魔力文字も有りえませんよ。刻むにしたって、術式の規模に応じて文字に使う魔力も決まります。あの規模は魔王様みたいな無尽蔵でもないと』
「魔力文字もなし、詠唱もなし」
そして魔王は巨大術式の上に到着、急停止して術式を隅から隅まで見渡した。
当然、魔力文字は見当たらない。
「じゃあこれ何!!? ただの嫌がらせか!?」
そう、ただの巨大な術式、何の意味を持たない、ただ回転するデカイ光源、景色が神秘的に見える、ただそれだけにしか見えないのだ!!
「ざけんなよ首謀者ァ!!」
『魔王様落ち着いて下さい。広い心で民の嫌がらせに耐えて下さい。はぁ…』
デュランが珍しく魔王に舐めた態度を取っていた。
「おぃデュランくん、今ため息ついた? 俺にため息ついちゃった? 王様にため息つきやがったなコイツ!」
『だって…くだらないでしょう、ソレ。ただの魔力吸引機じゃないですか』
「は?なに?」
魔王が魔力吸引機という発言に疑問符を浮かばせる声を上げると、デュランが更にめんどくさそうな声で再度答える。
「いえ、ですから魔力吸引機」
「聞こえなかったわけじゃねぇ、それどういうこと?詳しく聞かせろ騎士団長」
魔法だったら魔王様の方が詳しいでしょうに、という喧しいと思える小言が聴こえてきた。
正しいかどうかの確証がないのか、渋々と答えていく。
『術式って、魔力を周りから汲み上げて、意味を起動するじゃないですか。つまりソレ、意味を持ってないから、出力せずに魔力が入力されるだけですよね? だから魔力吸引機じゃないですk
「ファーーーーーーック!!!!」
魔王が王様として言えない言葉を、日本語で、大空に向かって叫んだ。
『うがぁ! 急に叫ばないで下さい! あだだ、耳が…』
理不尽な痛みを訴える家臣をガン無視する。
「畜生そういうことか!! あのドッペルゲンガー、最後まで自分の手を汚さないつもりか!!」
魔王が巨大な術式に手を伸ばし、触れる。
すると静電気に打たれたように、その手は弾かれた。
「結構な量が溜まってる。俺が1から解体するしかない!」
『あのー? 何をするので?』
「今から解体すんだよ! コレは魔力を吸い上げてるが許容値を超えてみろ、術式は崩壊して溜め込んだ魔力が爆発して街に降り注ぐぞ!」
事態の危険性にようやく納得したのか、鋭い声色になった。
「それが首謀者の狙いですか」
「そうだっつってるだろ! ……あー、訂正」
大空にいた魔王だから気づけたのだろう、ソレに。
魔族街デアントは周囲をモンスターが棲む森で囲まれており、そこで冒険者達は日銭を稼いでいる。
その森から何かが飛び出してきた。
薄汚れた白い体毛に赤い眼光、血肉で赤黒くなった牙が物語る凄惨な命の在り方。
四肢で緑色の大地を駆ける姿は、狼と呼ばれるものだ。
それに続き、更に多くの狼が森から飛び出してくる。
最初の一頭が鼓舞の遠吠えを空に響かせると、続けてきた狼達が遠吠えで輪唱していく。
森から現れたのは狼だけじゃない。
人を覆える程の巨大な蜘蛛、空中を円陣を組みながら進行する蜂など、様々なモンスターが東西南北から、この街に向けて進行していた。
「モンスターも利用して来たぞ! デュラン! 今すぐ魔族街に防衛線を張れ! 猶予はないぞ!」
モンスター達の戦慄してしまう合唱が魔族街を襲った。
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その薄がりに、女性がいた。
長い、透き通るとさえ思わせる皓月の長髪は、その空間では異彩を放つ毒花の如く、妖しく風になびいている。
「うふふ、あはは、うふあはあははははは!」
だがその顔はこれから行われる『ショー』への期待で、グチャグチャに歪んでいた。
「さぁ? どうなるかしら? どうなるかしら どうなるかしら!」
女は片足でバレエのように、その場で回りながら空を見上げた。
空には薄く擦れた巨大な破滅術式が展開されている。
コレが崩壊すれば内部に溜まった魔力が魔族街に降り注ぎ、全ての魔族がその圧倒的量に飲み込まれ、その場で消滅する。
今、魔王はコレに対処しなければならない。
そして、破壊術式に溜め込んだ膨大な魔力によって、魔族街の周囲に生きる全てのモンスターが引き寄せられている。
それに禁忌も使用した。二回もだ。
一回目はシスコン鷹に、念のための二回目は戦闘馬鹿の鬼にだ。
禁忌は、その逸脱した力を使用すると、世界に軋みを生じさせ歪みを生む。
だが世界も開いた傷をそのままにせず、修復しようとする。
修復の時、世界はあちこちからパーツを集めてチグハグにならないよう直すが、その際に生まれてくる怪物がいる。
圧倒的なまでの怪物。
それも時期にこの街に襲来する!
「魔王は術式の解除に追われている。そしてでてくる怪物は、うふ、うふふふ」
世界が修復に使うパーツは情報。
つまり禁忌で欠損した情報をかき集める。
「鷹は空を支配する剛翼を持つ存在」
「鬼は幻想において厄災の最たる存在」
「現れるのは、生きた天災…そんな『龍』程度のものじゃない」
それはかつて、この地に落ちた凶星
ありとあらゆるものを、千変万化の全てを飲み尽くそうとした全存在の敵。
「さぁ、来なさい希望喰…いえ、悪夢門」
「この世界は、異世界転生者抜きで、どこまで抗えるかしらぁ」
さぁ無双!無双!!無双!!!




