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3-1 首謀者

後半始まります。

薄暗い路地裏に白いチョークで様々なマークで幾何学模様の術式を地面に書く蟹騎士。

その横には不思議そうにしながらも好奇心の色が含まれる顔をした鬼サムライがその様子を見ていた。

「何やってんだ?」

「座標術式というものみたいです。私もよく知りませんが」

仕上げに術式の円状かたはみ出した部分を消し歪な所を書き直す。

書き終えると左腕に魔力を流し込み呪印契約を作動させた。

「魔王完成しましたよ」

『おう、今行く』

質素で簡単すぎる会話を終えると術式が輝き始め床から空中へと浮かびながら本を持った背の低い悪魔が現れる。

鬼サムライは急にこの国の王様が出てきたので驚いて距離をとってしまっていた。

「『無事みたいだな…む』」

呪印契約から聞こえてきた声と生声が混じったせいで若干エコーのように重なる。魔王は右手の呪印契約左手を重ねて通話を切る。会話を仕切り直すためか軽く咳をする。

「コホン! そいつが『用心棒』か、あらかた話を聞いた限りだとデバイスの影響を受けていたとか聞いたが」

「ええ、名前は…名前は?」

レヴィはそういえば聞いてなかったと鬼サムライに顔だけ向け尋ねる。が、そこに魔王の必要のない茶々が入る。

「聞いとけよポンコツ」

魔王からのポンコツ呼ばわりが癪に障ったのか顔を陰らせながら微笑みギュルん!と首を魔王の方に回した。

「うるせーですミニマムデビル」

それに負けじと目を鋭くさせ魔王も口を開いてしまう。負けず嫌いとはつくづく厄介なものだ。

「ボンクラ頭」

「ミニチュア野郎」

「味覚音痴!」

「合法ショタ!」

「筋肉タラバ!!」

「ヒョロヒョロもやしサタン!!」

レヴィのもやしよばわりに鼻で笑い禁句を言ってしまう。

「ヒョロヒョロ?だったらテメェはペタペタ胸板多足類だな」

「よっしゃー上等ですよオラァ3頭身サイズにまで縮めてやりますよ!!」

レヴィは片腕を拳にしてもう片方の手に当てながら魔王との距離を詰める。

「こっちのセリフだ。猿投げの時の借りを返してやる!」

体内魔力の回転数が上がっているのか前に突き出た双角の先端に光る紫色が更に輝きが増していく。周りには空中に展開された呪印契約の術式より薄い紫色のした術式が広げられ右回転から静止し左に回り出したりなど機械的な動きをしている。

術式に組まれたスペルは『電』『白雷』『連鎖』の三文字がグルグルと術式の中で回転し、いつでも発動可能の状態だ。

それが六つ、瞬く間に展開された。

まさに一触即発の合戦間近の空気、ピリピリとした命のやり取り特有の体に駆け巡る電撃的な何か、鬼はあれ?これやばくね?と手遅れだが気づいてしまった。

こう、戦場のど真ん中で咲く一輪の花のように踏まれて死ぬのではと!!

自分が名前を名乗ってないだけですんごい大惨事になるのではと!!


そこに停戦の使者が現れた。


「ちょっと!!?何してんのさ二人とも!?」

目だけで火花を散らす二人は、あん?なんだよ今ぶっ殺すとこなのに、と水を差された為不機嫌そうに殺伐とした目を向ける。

そこには白い外骨格をした騎士、タイナが路地裏の入り口で降参と言わんばかりに両手を空へと突き上げていた。少し涙目だ。

「そんな目を向けないでよ二人が私狙うとか命が無限にあってもたりないよ完全に弱いものイジメだよそういうのもぅやめようよ蜘蛛はデリケートなのおーー!!!」

そんな戦争ダメゼッタイ!のポスターに使えそうな絵面になりながらタイナは和睦を訴えた。

レヴィと魔王は一度お互いを出方を伺うように見合い、そして少しの間殺意を込めてにらみ合い


タイナの涙ながらの叫びが実ったのか、二人は諦めたように息を吐いた。


「今回は見逃してあげます」

「それはこっちのセリフだ」

お!和睦条約締結か!鬼と蜘蛛は期待と安心に満ちたように肩を下ろすが…

「いいえ!私のセリフです!」

「いいや!俺のセリフだ!!」

「わ・た・し・の!セリフです!!!」

「お・れ・の!セリフだ!!!」

どうやらとてもどうでもいいことで条約の貴重な紙が燃え始めたようだ。

「待て待て待て待て落ち着けいや落ち着いて下さいお願いします今はそんなことしてる場合じゃないだろおー!」

「そうそう早く犯人を捕まえなくちゃ逃げられちゃうかもなんだよ話を進めようよー!」


数分後、蜘蛛と鬼サムライの英断があってようやく停戦にこぎつけた。


「忘れないでくださいよケチャップフルコース」

「お前こそ忘れんなよ一日メイド服」

互いに己が望みを叶えてもらうことを条件に平和的に解決した。

レヴィは腹一杯のケチャップ料理

魔王はレヴィの1日メイド権

交渉自体は魔王の勝ちのようだ。


再び争いの火種になる前に鬼サムライは自分の名前を名乗りだす

「俺は、じゃなくて私は鬼ヶ島の紅ノ里出身のアカツキといいます」

鬼サムライことアカツキは頭を魔王に下げた。王様に対する態度を取ろうとしてるのか手は太ももあたりで右往左往している。

だが頭を下げてもそれと同じほどの高さに魔王の頭があるのでもっと下げた方がいいのかと戸惑っている。

「いやいいから、普通にしてていいぞ。無理して丁寧な言葉にしなくていいあと頭下げんな悲しくなる」

「…なんかすんません」

「いい、慣れてる…ところでお前はデバイスの被害者でいいんだよな」

「ああ、上手いことあの白いガキにやられちまった」

レヴィが座標術式を書いてる間に話を聞いていたのでスラスラと会話を進めて行く。

「ふむ…メンバー間で何か目印になるような物は渡されたか?」

「渡されてないな」

首を横に振って否定した。

「なんでだ?普通はメンバーだとわかるように何かバッチとかマークとかが必要じゃないか?」

レヴィも同意のように首を捻らせた。

「確かにそうですね。10人以上のメンバーを目印無しでグループの一員だと判断するのは厳しいですね」

「他に何かなかったか?特徴とか?」

頭を捻らせて考え込む。そして数秒すると思い出したように声を小さくあげた。

「あるとしたら…俺にあってきた奴ら全員同じ懐中時計を持ってたな」

「時計?」

「そうだ、チェーンで繋がれた銀色のやつで、蓋に人の顔に鍵でばつ印がついたやつだ。気味が悪かった」

全員が訝しむ顔つきになる。

「なんだそりゃ、おいそこの…タイナだったか?最近じゃそういうのが流行ってんのか?」

「いやーそんなの見たことないよ。嫌だねそういうの作ったやつ絶対変なこだわり持ってるよ」

レヴィが確認を取るように再度アカツキに尋ねた。

「それが全員、アカツキさんと会った連絡員がみんな?」

「ああ、そうだ今思えば全員全く同じポケットの所に入れてたな、そういうおまじないか?」

「全員全く同じポケット…?」

魔王の脳裏にある言葉が掠めていった。ゴズとメズが言っていた言葉だ。


では、『実は敵がたった一人だった』てのはどうでしょう!


(たった…1人?)


だとしたらどうだ


メンバーを確認する目印は必要はない。

そもそもグループと呼べるほどの規模にならず、動きや行動の発見が厳しくなり騎士達の報告書に乗らず、完全に対処に出遅れた現状の説明がつく。

そして同じ懐中時計を連絡員が全員持っていた。

そして顔にばつ印…


「顔が…ない…?」


まさか


連絡員は『連絡員』じゃない?

たった1人だけど数十人?

誰がリーダーかわからない?全員がリーダーだから?


ふざけんな、もう完全に手遅れだ


「くそったれがああああああああああ!!!」


「ど、どうしたの!?」

魔王が急に叫び出したので驚いてしまった3人、レヴィが直ぐに立ち直り魔王の肩を掴み目を見る。

「落ち着きなさい魔王。まだ何も、私たちはできてませんよ」

「……!!…すまん」

まだ終わってないと目で言い魔王を一喝すると魔王は口早に説明を始める。

「これはまだ予想だが…相手の種族に目星がついた」

全員が魔王を見る。まだ戸惑っているがそんな場合じゃないのは今の2人を見れば理解できる。

レヴィは魔王に先ほどまでの嫌悪が消え信頼するように見つめている。魔王はレヴィに頷き、さっきまでの取り乱した様子がカケラも感じない。

「『首謀者』は多くの姿を取ることができる鬼魔族と同じ幻想種に位置する複体魔族といわれる魔族」


「ドッペルゲンガーだ」

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