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2-7 蟹騎士VS鬼侍

鬼と蟹は同時にロケットの様に駆け出し、1秒の間もなくぶつかり合った。

「うおらあああああああ!!!」

刀と剣がぶつかり合い激しい火花が散らし、衝撃波で空気を押し出す。一時的に空気の流れが大きき変動する中、既に2度目を打ち合っていた。

右から刀が鋭く飛びかかる。

それを剣で平然とビクリともせず硬い音を出しながら受け止め、力だけで押し返す。

押し返した勢いそのままに剣を上段に持ち上げ、不意を打つ様に目視不可能の速度で叩きつける。

上から襲い来る重撃に対し刀を斜めに構える。

剣が刀に打つかる直前、更に大きく斜めに逸らす。刀と体にかかる重撃を最小限に留め、金属が擦れ合う嫌な音を奏でる。

そして殆どの力が舗装された道に直撃。道は円状にひしゃげ、いくつかの舗装用のブロックが周りに並ぶ建物に突っ込んでいく。


舞い上がる粉塵、怒涛の剣戟、鳴り響く金属音

たった一度の攻防で明確にその空間は戦場と化した。

技術や技による蛇の如く変幻自在な刀、基礎能力にモノを言わせた獅子奮迅な剣。全く性質の違う者同士の戦いは更にスピード上げエスカレートしていく。


ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン‼︎ギャリィィィィイイ‼︎


お互いの武器が火花を散らし引きずられあった時、武器への負担が脳裏をよぎり跳ぶように距離を離す。

(こ、この女、どれだけ馬鹿力なんだ⁉︎俺の刀が折れるところだったぞ‼︎)

鬼サムライの方は汗が頬を伝い顎から垂れるが、蟹騎士は汗ひとつかかず何事も無かった様に剣を水平に突き出し構える。


万全の状態なのは鬼の方だが、押されていた。押してる方の蟹は片腕がないのに加えて本調子ではない。

両手の刀と片手で持つ剣、本来打ち合ったら間違いなく後者が保つ筈がないのだ。それだけでもレヴィの異質差が異常なのは把握はできるが…サムライは気づいてないが利き手ですらないのだ。


「こんなものですか、鬼の力は」

「心慌意乱‼︎片手だけでなんで三倍近く基礎能力の上昇した俺の刀を捌き切れる⁉︎」

「目で見て、後は体を状況に合わせて動かすだけですよ」

「見え……‼︎目で追ってるだと⁉︎鬼化した俺の攻撃を片手で受け止めただけじゃなく、見えてるのか‼︎」

「ええ、ハッキリとまではいきませんが見切れますよ。私はまだ本調子じゃないのですが…まだやりますか?」

レヴィがそう言うと鬼サムライは刀を力を抜く様ゆっくりと下に降ろした。

レヴィが残念そうに諦めた様なため息を履くとサムライの肩が小刻みに震え出した。

「く、くくく…」

「?」

「ふはは、あっはっはっはっはっはっはっはっは‼︎いいぞぉ‼︎実にイイ‼︎」

大きく笑うと刀を突きつけ生き生きとした表情を見せる。

「正直な、故郷にいた奴らじゃ歯応えがなさ過ぎてこの大陸にやって来たんだ。そしたらどうだ!こんなに強い奴がいるときた‼︎俺が全力を出して勝てそうにない相手、そう‼︎お前を探していたんだ‼︎」

「は、はぁ、そうですか」

レヴィは若干引きながらも剣の構えを解かずサムライの動きを警戒する。それでも話は止ませずに語り出す。

「漸入佳境というやつか、もうあの蜘蛛女なんぞどうでもいい、さぁやりあおうか‼︎俺の成長に一役買ってくれ‼︎俺はアンタを超えてみせる‼︎」

「『私を超える』ですか。なかなかそういうのは好きですよ」

初めて言われた事で嬉しかったのか、レヴィは頬を少し緩ませてそういうと、鋭い眼光を再び、サムライへと向ける。

「ですが、こちらもあまり時間がありません。あなたの成長はまた今度お願いします」

「そうつれない事、いうものではない!!!」

叫ぶと同時に大地を踏み抜き上段から刀を振り下ろす。それに剣を横にして防ぐが


ガアァァァァン‼︎


明らかに先ほどの打ち合いより重く腹へと響く音、これにレヴィは戸惑いを隠せないでいた。

「さっきより重い…⁉︎」

「言っておくが俺はまだまだ強くなれる‼︎オラオラァ‼︎」

レヴィが仕切り直そうと後ろに下がっても尚、追撃してきて暴風の様に刀を振るう。

「あまり、調子に乗らないでください!」

だがレヴィも負けじと左手だけで持った剣で迎え撃つ。剣と刀がぶつかり合うたびに火花が散り、互いの武器が色鮮やかに反照し合う。そしてレヴィが態勢を立て直し徐々に押し返していく。

「まだだ、まだ終らねぇ‼︎」

押し返していた筈のレヴィの表情が苦虫を噛み潰したようなものになり、徐々に押され始める。


サムライの方に変化が訪れる。


ツノがより鋭利に不気味な音を立てて伸びている。ツノだけじゃない、漆黒の体に赤いラインが回路の様に入り組んだ模様を作り出していく。

まるでこの世のものじゃない悍ましい者を彷彿とさせる。(まさ)しく見た者を恐怖という奈落に落とす鬼の姿。

「まだだ、俺はまだ魔族としての先へ向かうぞォ‼︎」

眼光に瑠璃色の焔が灯る。同時、刀にも蒼い炎が纏い始める。打ち合っていたレヴィが変化の異常の激しさに後ろに数歩下がる。


間違いなくこの男は、レヴィとの戦いを通して魔族としての力を次のステージへと進ませた。


「うおらぁぁああああああああああ‼︎鬼の底力あああああああああああああ!!」


下がったレヴィに蒼刃が襲いかかる。一振り目は体を下げて回避、続ける切り返しの一撃は剣で防ぐ。

「甘い‼︎」

ジュウウウウウウウウウウ‼︎という焼き切れる音を立てて、防いだ剣が蒼炎によって溶断された。刃先が地面へと呆気なく落ちる。

「まず―

鬼の口が開き、蒼く輝いている。剣に気を取られ気づくのが遅れてしまった。躊躇う間も無く左足で地面を蹴り回避を行うとするが

「鬼火、風炎‼︎」

風に舞い上げられた様に広範囲に拡散する蒼炎がレヴィを包み込もうと迫ってきた。

「こ、のおおおおおおおお!」

右足に力を込め地面を踏み込むが、鬼の放った蒼炎はレヴィを一瞬で飲み込んでしまった。


ごうごうと蒼い炎が燃え上がる光景を見届ける鬼は予想を遥かに超えた自らの力の大きさに堪え切れない様にくつくつと笑い始める。

「ふ、ふふふ、ふはははははは‼︎俺の勝ちだ、俺はお前を乗り越えたぞ‼︎この力さえあれば騎士団長と近衛どころか魔王にさえも勝てる‼︎俺は最強になったんだ‼︎絶対強者、の領域に足をいれたぞ!!」

炎が晴れ、焼き焦げた臭いを放つ真っ黒な地面が剥き出しになる。

「あ…?」

だがそこにいない、赤い髪のした騎士がいないのだ。

(疑心暗鬼…焼き過ぎて遺体すら残さなかった?いや、魔族の体はそんなヤワじゃねぇ…あれは?)

窪み、そこに地面に人が一人入れる様な窪みがあった。窪みの中も焦げてはいるが黒というより灰色に浅く焦がしている。

そこまで周りを見て―

ズドン‼︎

唐突に脇腹に大砲でも当てられた様な衝突が起き、吹き飛ぶ。

「ゴ⁉︎」

理解できなかった、何が起きたか、衝突、急に、痛、…敵!

パニックになりつつある頭を強制的に「敵」の一文字で統一させると吹き飛ばされてる体勢から受け身を取り、明滅する意識の中状況を確認する。

「ゴホゴホッ!一撃で仕留めれませんでしたか」

自分の立っていたところにいたのは先程まで戦っていた筈の赤髪の騎士だ。緑色の制服は焼け焦げており白いシャツが覗け、髪もところどころ焦げ跡が付いていた。

「クソッ!アイツどうやって俺の炎を…そうか!」

地面を右足で蹴る時に全力で力を込めあのクレーターを作っていたのだ。あの場所はレヴィが一度全力で剣を振り下ろし、瓦礫を辺りにぶつけたところなのだ。その条件であれば魔族の持つ怪力なら十分可能だ。

クレーターの中に籠もれば熱のダメージは殺せないが風で巻き上げられる炎に焼きつかされることはない。

(だがどうやって俺の脇腹に攻撃を当てた?いつの間にクレーターから抜け出した?)

確かに周りを警戒していた、なのに唐突に現れたのだ。まるで一瞬で移動した様に

「どんな手品だ?」

独り言を呟くとレヴィが左へと体を傾け、駆けようとしていた。

来る、そう思い移動先に目を向けるが…何もいない

「は?………!!!!」

右に鞘で防御を取るとそこにレヴィの拳が突き刺さった。装飾過多な鞘は折れ曲り、その機能は完全に停止した。バラバラと地面に装飾と鞘が落ちていく。

「『偽装移動(フェイクムーブ)』!なんで兎魔族と同じ動きをしてやがる⁉︎」

「チッ流石に何度も通用しませんか!」


偽装移動(フェイクムーブ)


視覚を持つ生き物は基本、目で得た情報を脳に送り体を動かすのだが、体を動かす時には既に対象が移動してる事が多い。

その為、脳は相手の動きを計算に入れ、動きを予想し、体に命令を送る。

そして再度、相手の位置を目で見て、その情報を脳に送りつつ体を動かす。


だが獲物が予想とは全く違う動きをしたら?


その場合脳は、本当に一瞬だが、一時的にパニックに陥ってしまう。

そして試合、勝負においてその一瞬が勝敗を分かつのだ。


肉食動物に追われてる草食動物の群れは個を捨て多くを助ける、この話は有名だ。

だがもし草食動物が一匹だけだったら?切り捨てる仲間がいなかったら?もし自分が切り捨てられた側だったら?

その時行われるのが偽装移動(フェイクムーブ)だ。

主にこの逃走方法は跳んだり跳ねたりする動物に見受けられる。代表的なのは兎だ。

右に体を向け(ここで相手が右に曲がると予測)左に全力で跳ぶ。

この行為で追跡しているチーターなどはパニック状態になり、左に跳んだのを目で見たにも関わらず、右に行ってしまう事が稀にあるのだ。

レヴィはそれを応用したのだ。


「なるほどな、その動きができれば、目を離してる間に気配を消して移動が出来る。俺の出した炎をカモフラージュにして、建物の中に身を潜めてやがったか」

レヴィは距離を数歩離し拳を構える。

鬼サムライも数歩下がり刀を構える。

「カモフラージュにしたかったのですが…無理して突破したので多少燃えましたよ。魔王の火柱かと思いました……よ……?あ……れ……?」

そこまで言ってレヴィは再び右に体を傾ける。

「また同じ手品か、もう俺には効かん」

だがそのままレヴィは倒れこむ様に地面に手をつけ口元に手を当てた。

顔色を悪い。まるで病人だ。今にも吐きそうだ。

「お゛え……ヤ……バ…い゛…」

「はぁ?」

レヴィの異変に気づいたサムライは腑抜けた声を上げ、ヤル気が削がれたのか、刀を肩に当てた。

(炎を突破するときに全身に甲殻を使ったのがダメでしたか……やばい)

「なんだよここからだってのに…魔力酔いか、つまらん。興醒め、だな」

蒼炎が消え失せた刀をレヴィの頭に目がけて構える。

「だが、お前のお陰で俺は先に行けたんだ。万全だったらもっと良かったんだが…これも仕事だ」

まるでギロチンが持ち上げる様に刀を自分の頭より高く振りかぶる。

「踏み台ご苦労様、だ。これで終いだ」

注意

草食動物は確かに本文に説明した様な動きをしますが、現実ではそれに『偽装移動』という名前はついておりません。

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