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2-4 羞恥

デュランの叫びを尻目に扉を締めるメズ。ゴズは武器をしまうとリラックスするように床に胡座をかく。

「まぁなんともなくてよかったな騎士団長。もう少し遅れてたら魔力暴走していたのかもしれないからな!」

「そうだぞライオン、魔王様と俺たちに感謝するのだな!」

フンスとふんぞり返る白と黒の牛二頭、口元をヒクつかせているデュランの顳顬に怒りマークが浮かんでいるがそれでも御構い無しに棚を物色を始めるメズ。こいつらは押し入り強盗か何かだろうか。

「こんの迷惑山賊供…!というか魔王様、いったい何事ですかこれは?」

その気持ち良くわかる。と言いたいが今はそれどころではない。

「デュラン、お前午前中に配達屋から荷物を受け取っただろ?それは今どこだ?持っているのか?だったらすぐ俺に寄越せ」

「え、あの箱がどうかしたのですか?」

そう言ってメズが漁っている棚の方に目をやった。

メズが掴んでいるものは盾に両刃の剣と斧がクロスした黒いマークが刺繍された高そうな装丁がされた箱だ。ギルドマークが刺繍された装丁は既に乱雑に剥がされており木製の蓋に手がかけられている。


猛烈な嫌な予感。


・数時間箱の中で放置した魔石

・その中で充満する高濃度の魔力


Qそれを開けたら?


A……開けた奴に重濃度魔力が流れ込む。


「バカ牛止まれ!!」

「へ?」

急いで声をかけたが既に遅く蓋は開けられてしまった。

ブワァ!と大量の青い蛍のように輝く重濃度の魔力がメズに取り込まれていく。もはやここまで濃いと逆に飲み込まれそうな勢いだ。

「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「メ、メズぅぅぅぅぅ!?」

青い光に突如取り込まれた相方を見たゴズは胡座から急に立ち上がり巻き込まれまいとメズから離れる。兄弟なのに随分冷たい、この件は後で兄弟会議議案にされそうだ。最終的には話し合いではなく殴り合いになりそうだが。

そうこうしているうちに魔力の殆どがメズの中に吸収され、ゆらりと立ち上がる。

「メ、メズ?大丈夫か?」

メズは顔をゆっくりあげると目が真っ赤に染まっており理性が消失していることを示していた。

「おい、お前の兄弟だろなんとかしろよ」

「いや、あの荷物デュランの物ですからデュランのせいでは?」

「こっちに擦りつけんな山賊、焼肉にして平らげるぞ」

身内に対して割と辛辣なコメントをしているうちにメズが盾を構えてこちらに突撃してくる。

「おい、なんとかしろ」

「了解しました!」

俺は言葉に圧をかけて雑な命令をするとゴズは瞬時に戦闘態勢に移行する。デュランは変わらず机の上の書類山を処理している。だが別に知らんぷりというわけではなく信頼だ。デュランとゴズ&メズはなんだかんだで言い合うもののお互いの実力は信用している。


ゴズは仁王立ちで両手を構え正面からメズの突撃と対峙する。室内というショートレンジな間合いの為メズの突進はすぐさま仁王立ちのゴズとぶつかり合う。

「「グゥ……‼︎」」

パワーは両者ともに互角。だがすぐにぶつかり合った為突進に勢いが乗り切れていない。

衝撃で数歩後ろに押されたがそのおかげで周りに被害は行かずメズも停止した。

メズが次のアクションを起こす前に盾を弾き飛ばし思いっきり腹に全体重をかけた頭突きを叩き込む。

「うおおおおおおお!」

「ガフゥ‼︎」

魔力暴走をしていたからか本能に身を任せ暴れる事しかできないメズは防御も受け身も出来ずモロに受けた。そのままなんの抵抗もなく突き飛ばされ地面に後頭部からぶつかりピクリとも動かなくなる。死んではいないはずだ…多分。

メズがあっさりやられたように見えるがもしこれが互いに万全の状態の真剣勝負ならお互いに引き分けのはずだ。

「いっ……てぇ‼︎理性がなくてよかった。もしあったら負けてたかも知れん」

「やはりお前も結構な一撃を受けてたんだな。フラフラじゃないか」

「あーでもしないと周りに被害がでますから…今デュランの書類を台無しにしたら冗談抜きで殺されてしまいますし」

ゴズの目線に釣られて同じ方向を向くとそこには凄まじいスピードでハンコを押すデュランがいた。先ほどまでの戦闘を完全に無視して高速機械の如く作業している。邪魔をしたら建てつけてある武器棚に手を突っ込みかねない。

「とりあえず過剰な魔力を吸い取っておくか…」

「はい、お手数をおかけしてすみません魔王様」

俺は気絶したメズに手をかざし悪魔としての能力を駆使する。魔力を吸い取る能力、ドレインと言えば聞き馴染みがあるだろうか。

「我々にも魔王様のように便利な能力があれば良いのですが」

「仕方ねーだろ、これは生まれ持った才能というか生まれた種族によるんだ」

これは魔法ではなく魔族特有の能力なので術式は必要ない。魔力を消費せずただ体内で魔力の循環をさせれば発動する。

だがどの魔族にも“魔力処理量”というものが存在する。これが多ければ多いほどより強力な能力が使えたりする。

「お前だって危険察知能力やら一時的な身体能力の強化とかできるじゃねーか」

「ですが魔王様ほど融通が効く能力ではありません」

「まぁ、これは魔力処理量によるからな…お前らちゃんとそこら辺も鍛えておけよ、いざという時使ったら魔力酔いしましたなんてバカ(レヴィ)がする事だからな」

「魔力酔いなんて普通しませんよ。あれは自分の処理量を振り切ってまで使用したら起こるのですから」

それもそうかと苦笑すると俺はメズから手を離し立ち上がる。

「良し終わったぞ、早くドクの所に行って治してきてもらえ」

「は!ではお言葉に甘えまして失礼いたします」

ゴズがメズを抱えて部屋から出ていくと室内はデュランのハンコの押す音だけが聞こえてくるようになる。

「さて…それでこれが例のブツか」

メズがいた足元にギルドマークの箱と紫色の魔石が転がっていた。これでタイナが言っていたようにギルド絡みなのは間違いないことが証明された。だがそっちの方は向こうが対応してくれるはずだ。だからこちらは

「問題はこの魔石か…なんだこの術式は?見たことがない術式の形……いや何処かでみたか?」

魔石の内部では三つの術式が方向が違うが重なり合っており球状の形をしながら回転をしていた。

待て、一つだけ回っていない上に術式の形が歪な箇所がいくつかある。

「失敗作か?だから魔力がうまく処理されずに放出されていたのか」

ギルドがこの欠陥を見落としたとは考えずらい。やはり“敢えて欠陥品を渡した”と考えていいだろう。

「だがこれはわざと失敗したものじゃないな。必死になって何かを作っていた残骸か」

「魔王様」

「うお⁉︎」

つい先ほどまで書類の処理を行なっていたデュランが急に話しかけてきたので驚いてしまった。

「ひ、人が考え事してる時に急に話しかけるな」

「すみません、ですが…変わりましたね」

は?急に何言い出すんだ本当にどうしたんだこいつ。

手に握られたハンコを逆さにして置きどこか面白そうな顔をしている。

なんだろう少しムカつく。

「いえ、失礼しました。元に戻ったと言った方がよかったですね。戦争の後から問題事が起きても決して関わらずに何かを悩んでいたようですから」

「あー、うん…心配かけてすまなかったな。もう大丈夫だ。あと何ニヤニヤしてんだテメェ」

「レヴィが来てからですね調子が戻ったのは」

くそぅ…嫌な予感がする。取り敢えずずるくても何でもいいから回避せねば。

「次言う事が大体想像ついたぞ、それ言ったら仕事増やすぞ」

「増やされたら困りますが…言いますよ」

「おいお前ふざけんなよ!別に俺はあいつのことなんて別に好きでも何でも」


「レヴィは、ステラの生まれ変わりだとか言ってたんですよ」

は?

「それでペラペラと自分のこと語り出したんですよ。最初は何の冗談だと思っていたのですが魔王様の調子が戻った事と重なるような気がしまして自分なりに考えたんですよ」

え?

「それでは答え合わせをお願いします。レヴィがステラって本当ですか?」

待て待て

「レヴィが自分からステラと名乗った?おい?デュラン?それ本当か?」

「? ええ、そうですよ…どうしました顔色が悪いですよ⁉︎」

自ら本当の名前をペラペラ喋っただと。

「つ、つまりそれはあれだ、うん、そういうことか…は、ははは…は……」


もうどう生きるか決めたのか。いや決めていたのか。


俺はレヴィになんと言った。「お前は見つけるべきだ、焦る必要はない…あまり自分を責めるな」とか言ったか俺?


「うわああああああああああああああああああああああああああ‼︎‼︎何言っちゃってんの俺ええええええええええええええええええええええええええ‼︎‼︎」

頭を両手で抱え顔を急激に熱くさせながら床を猛スピードで転がる。全身が非常にムズムズするような動かずにはいられない衝動に駆られる。

ダサい、これはいくらなんでもダサすぎる。相手のことを知った気になって「お前こんな事で悩んでんだろ。しっかり悩めよ」とドヤ顔かまして言ったら「は?もうそんなの解決してるんですけど何言ってんですか?」と言われた気分だ。

死ぬ、恥ずかしくて死ぬ。こんなの黒歴史の直進コースだ。いっそ殺してくれ。絶対今頃レヴィが地面叩いて大爆笑してるだろう。そんなこと思っていたら恥ずかしさより怒りが優ってきた。

「ああああああああああんのクソ蟹いいいいいいいいいいいいいいいいいい‼︎茹でてやる、鍋に突っ込んで具材にしてやるううううううううううううう‼︎」

俺がそんなよくわからないキレ方をしているとデュランが軽く引きながら何かに納得していた。

「あー、本当っぽいですねぇ……そうか…あれステラなのか…イメージ崩壊だな…」

「デュラン‼︎」

「はい!」

「今すぐ最近になって不正に動いた魔石に関する資料を出せ!こうなったらアレだ!レヴィを出し抜いて今回の騒動の元凶をとっちめてやる!それで遅くやってきたレヴィを笑ってやるぞ‼︎」

デュランは大慌てで魔石の資料を机の中にある束から引き抜いていき一枚一枚俺に渡してくる。そしてお目当ての物が手についた。

「これだ!『紫色の魔石、不正取引の噂話の調査報告書』間違いない。デュラン!コレを貰っていくぞ!」

紫色の魔石とその紙一枚を持って足早に団長室のドアに手をかける。

「魔王様、いったいどちらへ?」

「魔法研究所だ!」

次回からレヴィパート。急なプロットの割り込みとかするものじゃないですね!

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