2-3 思考
遅くなり申し訳ございません……今回は急遽プロットに追加した内容でございます。
まず向かうべきは団長室、デュランのいる部屋だ。あいつが配達屋から預かった魔石を回収しなくてはならない。魔石から漏れ出た魔力で暴走を起こしていたらデュランには悪いが電撃魔法で鎮圧しよう。
そんな事を考えながら螺旋階段が連なる広間に足を入れたら激しい足音が耳に入ってきた。
ドタドタドタドタドタ!
これはこちらに向かってきている?
そう思い足を止めて上層へと目を上げると黒い巨体と白い巨体をした二人の牛魔族が全力走行トラックの如く螺旋階段を降りながら迫ってきた。
二人はお互いに筋肉をぶつけあいながら無理矢理走っているため手すりと手すりの間、本来余裕を持って上り下りできる空間が完全に埋もれてしまっている。さながら「怪異!!螺旋階段から迫る筋肉壁!!」というタイトルがつけられそうだ。
「「魔王さまああああああああああああああああああああああ!!」」
「ばっかお前ら邪魔だ!無理矢理してこっちくんな階段が壊れるじゃねぇか!!」
こいつらには「譲る」という精神がないのか……愚問だった。こいつらは迷路の壁を破壊して攻略する脳筋気質だった。二人が階段を降りきり、メリメリィ!!という手すりの悲鳴が止むと二人とも再加速し眼前に迫る。
「「魔王さま!!申し訳ございません!!我々はまたしてもレヴィなどという新人に負けてしまい土足で神聖なる貴方さまの部屋を汚してしまいました!!」」
「いや、というかあの部屋土足で入るところだし…あと唾飛ばすな汚ねぇ!!」
魔族の王が神聖とかどうなんだその辺?というか結構な数の骸骨やら黒い革やら真紅の絨毯とかで彩られた部屋を神聖と認識していいのか?
「かくなればこのゴズに是非とも魔王さまのお叱りをハァハァ!!」
「是非是非!!このメズに遠慮せずお仕置きをお願いいたしますハァハァ!!」
「顔近づけてくんな牛臭い!!息荒げんな気持ち悪い息がかかんだよ!!罵倒してんのにニヤニヤすんじゃねぇこの筋肉ダルマ共があああああああああああ!!!」
牛二頭の気持ち悪い笑みに身の危険を感じ取り鎮圧ように開発しておいた電撃魔法の術式を両手に展開し青白い稲妻が巨牛二頭に殺到する。
「「ありがとうございますううううううううううううううううううううぅ!!!」」
二人はスタンガン代わりの電撃を受けると壊れたおもちゃのような奇怪な動きをしながら感謝の言葉を述べた。なんでこいつらと最初から最後まで一緒に冒険をしていたのだろう?
今にして思えば山賊だったこいつらと出会いそこから冒険者、次に騎士団から追われる身になり、そしていつの間にか魔王になっていた。ただ人助けをしていたら世界最強になっていた。
というか"先代"が悪い。魔族の統治をほっぽり出して「私はただ魔族の行く末を見届ける」だの抜かしていたし、しかも仲間が殺されまくっているのに本当に見てるだけで何もしないときた。いくらなんでも王としてありえない。
「ハァ……ところでお前ら何か異常はなかったか?」
「あがが……え?いえ特に」
「はい、ここは特に何もありませんが…」
ゴズとメズが真っ黒になりながらも平然と立ち上がる。本来数時間は立てなくなるはずなのにこうなのだ。レヴィとまでいかないにしてもだいぶタフな体をしている、アレと比べるのは酷な話か。
「そうか…じゃあ被害が出ないうちに取り押さえるかー…………?」
はて?何かがおかしい気がする。なんだこの違和感は…?何か見落としてはいけないものを見落としてるような……いや、気にはなるがまずその前にデュランの元に行こう。
「お前たち、今日はもしかしたら忙しくなるかもしれないから備えておけよ」
「はい?それはどういう…?」
「敵が動き出しそうだ、規模はわからないが情報がないわけじゃない。周りを利用して暗躍してるが実際動いてるのは少人数だろうな…十人いるかいないかだと推測してるが」
もしオベディエンスが大々的に動いていたら騎士団が掴んでいるはずだ。だがここまで計画を進行させていながらその動きがまったく掴めずにいた。
「敵は精鋭の中でも上位の奴だな…しかも長い時間をかけてたものだ。そこまで長く計画していながら情報を漏らさないようにするには相当のカリスマ性、指揮能力と素早い情報交換能力を持つ必要があるな…となると」
階段を登りながら説明がてら今回の主犯について考えをまとめる。
少なくとも独断行動する動物がモデルの魔族じゃない。意思疎通に特化した魔族が主犯だ。妥当なところだと蜂魔族、蟻魔族とかそのへんだろうか。
「いえ、情報交換なら今時魔石でどうにかなりませんか?ほら、通信魔石とかで」
「アレは非常に高価な代物だ。十人分近くなんて計画を進める上で非常に足枷になる。用意したとは考えられん」
金とは重要なものだ。どんな計画にも物資と道具、食料が必須だ。そんな多額な金を出せば組織として態勢が保てなくなるだろう。
「では、『実は敵がたった一人だった』てのはどうでしょう!」
「バーカ、そんなのオベディエンスでもない。一人だけでこんな騒ぎを起こせるわけないだろう」
「ですが…それなら金については納得出来ませんか?一人だけなら情報交換する必要も指揮能力もいりませんし、私生活の中でこっそり動けますよ。それなら魔族の持つ特別な能力がなくても騎士団じゃ気づけないのでは?」
………一人で?
いややはりありえない。一人だけだとどうしても手の届かない情報が出てしまう。この騎士団の内部やギルドの情報とか機密扱いの代物に手が出せないだろう。
「考えにくいな…特定するにもなんにしても情報不足か」
「デュランの元に有用な報告が上がっていれば進展できそうですが」
「出てたとしてももう既に事が起こっている。遅すぎだ」
そんな事を言っていると階段を登り終えデュランの部屋についた。中からは何も物音はしない。仕事に熱中しているのだろうか?それだといいのだが暴走状態なら厄介だ。
「お前ら、デュランが魔力暴走しているかもしれん、構えておけ。室内戦だとお前らが得意な白兵戦が有利だ」
ゴズが腰に下げた片手斧に手をかけもう一方の手がドアノブを掴む。メズは俺の前に立ち盾と鉈を構える。二人は頷き合いに俺も頷き返す。ゴズがドアノブを捻り大きな音を立てながら一気にドアを開ける。
「うおっ!!な、なん…?武器なんて構えてどうしたお前ら?」
ドアを勢いよく開けるとそこには机の上に山のように連なる書類から顔を上げるデュランがいた。どうやら仕事中のようで中断させた為か少し不機嫌だ。
「魔王さま、どうやらデュランは無事のようです」
「そうか」
俺はメズの盾から横にずれてデュランへと近づいていく。デュランは慌てたように急に姿勢を正し手に持った羽ペンをインク壺にさす。
「ま、魔王様いたのですか!メズの盾で隠れていたので気づきませんでした」
「おい、お前暗に俺のこと盾で隠れ切るほど小さいって言ってんのか?」
「………」
「おいこら否定しろよ書類ライオン仕事増やすぞ」
「ソ、ソンナコトナイデスヨー」
「デュラン、これ新しい魔族街の改善案なんだが…『学校』といってな…」
「ギャーーー!!せめてもっとその他諸々の事業や政策が安定してからお願いします!冗談抜きで過労死します!!」
しばらく魔王様サイドが続きます。




