幕間2 ステラ
今回の話は初の試みなので見苦しい場面が多々あるかもしれません。意見や感想お待ちしてます。
人間は苦しんで来た。
本能で襲いかかるモンスター達に怯え、このデーア大陸にのさばる、圧倒的な戦闘力を持つ魔族に家や食料や家族を略奪され、どうあっても奪われる側の存在だった。
この世界で"幸せ"になるなど、夢のまた夢の話だった。
だが人間は諦めなかった。
いや、諦めることができなかった。
目の前にいる同胞の、仲間の、家族の笑顔がどうしても見たかった。
奪われる側でなく奪う側になりたかった。
みんなで笑って未来について話したかった。
そして、いつしか魔法を覚え、自分より格上の存在との戦い方を覚えていった。
初めて魔族との戦争で引き分けた時、全ての町や村を歓声が覆い、その日は伝統的な記念日になっている。
紡ぎだした努力が光となり、栄光への道を切り開く。
人間は、掴み取る希望の味を覚えてしまった。
いつしか、人間は魔族を、この手で倒せるのだと確信した。
そして何かに突き動かされるように、どこまでも、どこまでも、ドコマデモ、ドコマデモ、手を伸ばした。
圧倒的な力を得、今以上に幸せになるために。
その行為が、世界を壊してしまうと知らずに…
「ようやく、ようやく生まれて来てくれた!!これが我らの……」
「返して、返して!!!私の娘を返して!!!!お願い…お願いします……娘を……返して……!!」
「その母親を殺せ」
小さな村で生まれた赤ん坊は母親の顔も、父親の顔もわからないまま、ただ役割を与えられた。
「おお!!我らが"願い"よ!!悪しき魔族を打ち滅ぼし、人間の願いを叶え続け給え!!!」
「人間の願望を叶え続ける」という役割を生まれ持った赤ん坊。
赤ん坊の生まれた村は存在ごと消された。自分の家族を、優しさを、幸せを知らぬ、一人の女はひたすらに人々の願いを叶えた。
「よし、次は北の魔族を皆殺しにしてこい」
「モンスターがでた、早急に始末しろ」
「魔族領に単身向かい殺し回ってこい」
少女は一人で戦い続けた。武器が折れれば拳で殴り、喉が乾けば殺したモノの血を啜り、腹が減れば命乞いをするモノを焼いて食った。
味なんてどうでもよかった。
彼女は願った者達からバケモノと呼ばれて忌み嫌われ初め、恐れられた。
隣に立つ者などいなかった。
唯一、話しかけてくれたのは所属していた聖騎士団の団長だけだった。
だが最初は上っ面の優しさが、だんだんよそよそしくなり、抑揚のない事務的な会話しかしなくなった。
人間の願いを叶えて/単身魔族を殺し回って
戻って来たら人々から忌み嫌われ、石を投げつけられる。
それが彼女の在り方だった。それで良かった。十分だった。
それ以外の道など歩めるわけがない。これで充分だった筈だ。
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そう、思っていたのに……
何故?何故??何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼ
目の前にいる小さな悪魔が、魔王が、なんでこんなにも輝いて見える?
「魔王さまーーー!!」
「がんばれー!」
「人間なんかに負けないでくれー!」
「やっちまえー!」
戦争だというのに、ナゼ、こんなにも希望に満ちたような、明るい願いが出てくる。
怒涛の魔王コールが魔族側の陣営から止まなかった。
どうしようもない理不尽な死が訪れるこの場所でどうして光を見出せる。そんなにも輝いた願いが出てくる!!
「そりゃそうだろ」
軽い調子で返されてしまった。ふざけてるのかと頭が真っ赤に染まりそうだ。
「これは俺がやりたいことだからだ」
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…………………………………………………………………………………ああ、そうか。
羨ましかったのか、魔王の背中が
求めたかったのか、隣に立つ者までも行かなくても背中を見てくれる相手が
負けたのか……魔力弾を受けた場所から血が止まらない、体から力が抜けていく、大地に身を投げ出してるにも関わらず、どこまでも落ちていく錯覚までする。
「あぁ…くやしいなぁ……」
「くっそ、強すぎだろこの女……!!本当に人間かよ」
首をなんとか回し、自軍側の仲間達の方を見る。だがそこには誰も、表情を変えずに黙って見ているだけだった。
「「「「「「「「「いよっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」」」」」」」」」
魔王軍の方から歓声が聞こえてくる。本当にくやしい。
今まで流すことがなかった涙が絶えず両目から流れてしまう。
まだ生きていけるなら…今度こそ、自分を見つけたい。
気がついたら自分の手が仲間達に伸びていた。
まだ生きていたいと、助けてほしいと。
自分から何かを願うのは初めてだった。
もちろん誰もこの手を掴んでくれない。
願望機が何かを願うのはおかしい話だ。
「なんでだよ……」
後は死ぬのを待つだけだと目を瞑ると、不意に哀れむようで、悔しそうな聞こえてきた。
「なんで誰も助けにきてやんねぇんだよ……!こいつは、ただ一人で戦ってきたんだぞ!?おかしいだろこんなの……」
「あーあ、まさか魔王に同情されるなんて屈辱ですねー」
「お前は、これでいいのかよ…」
「仕方ないですよ、今まで何も願わなかったツケじゃないですかね?」
あ、また気づけた、自分は、"私"はこんなに、お喋りなんだ…誰かともっと話したかったなぁ。
最後の相手がこんなチビ悪魔とか、無念だ。
「ごめん、ごめんな……俺はなんで、お前を救えなかったんだ……!」
「魔族が人間を救う……バカみたいですね……どうしてみんな……それ…を………願、わないの、、、でしょう、、、、、?」
人間の王様よりよっぽど優しい悪魔だ。
もう、限界、かな、、あ、ああ、、、そうか、、、これが、、、幸せ、か。
ステラと名付けられた騎士は戦争の最中、魔王によってその命を奪われた
その筈だった。
『場面…所持者の死亡を確認…クリア。魔力量…神性クラスを確認…クリア。術式…【蘇生魔法】…クリア』
唐突に無機質な声が頭に直接響く。だが情報を整理するほどの意識がない。音を音としてしか認識できない。
『世界の情報と魂の情報を確認…………………失敗。再度確認……………失敗。世界の情報と魂の情報で差異を確認。【禁忌】による影響と推測。世界変動の規模拡張阻止の為、強制的に蘇生対象の体を魂の情報と世界の情報を照らし合せた体を構築する必要が有り……計算中……計算中……計算中……完了』
『これより、イレギュラーの蘇生を開始します。蘇生まで残り157680000秒、157679999、157679998、157679997………




