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1-7 魔力酔い

遅くなりましたぁ!!

「待て待て待て待て!!俺がいったい何をしたんだ!?というかここは何処だお前らは誰だ!?」

「うっふふー、まさか惚けるつもりですか?貴方は騎士への暴行、及び不許可による街中の戦闘、並びに私への侮辱行為、そして向かいの建物の破壊という罪を犯したのですよ!!」

「なん……!!?」

どさくさに紛れて自分の罪も押し付けたナンチャッテ聖騎士。というかこの世界の魔族は元々性格的にも荒い種族のため悪口や侮辱程度で拘束してもキリがない、その程度日常茶飯事なのだ。

その事を知っていてニヤニヤ笑いをして黙っている蜘蛛騎士も相当酷い。

レヴィは蟹の爪を人間らしい腕にもどしてシグルドとサイの二人を解放する。

「じゃあ何故暴力沙汰になったのか話して貰いましょう……ぐ!?」

話を聞こうと意識を二人に向けると急に鋭いような、鈍器で頭を殴られたような痛みが走る。


頭が、ぐらりと、揺れる、しかいが、ぶれる、はきけが、でる、からだのなかがぐちゃぐちゃになるような


「へ?ちょ、ちょっとレヴィちゃん!?」

立つ事が出来ずそのままペタリと尻から床へと情けなく座ってしまう。最初は沈黙していたが我慢出来ずに口を押さえて吐き気と戦う。

「……!!おぐぅ!!?う゛ぁ゛……な、何か…はけるもの……を゛」

「ティファちゃん!何か袋とかない?吐き出しても大丈夫そうなもの!!」

「は、はい!!」

ティファが休憩室を慌てて退室するとタイナは腰につけてあるポーチから薄緑色の魔石を取り出しそれをレヴィに掲げ、魔力を腕に流し込み魔石へと送り込む。魔石は自らの色と同色の術式を空中に展開させ幾何学的に回りだす。

「『起動』!レヴィちゃんの体を調べるから我慢してね」

「はい……うぇ……ぎもぢわるい……」

「シグルド!私のポーチにミトスの実があるからレヴィちゃんに食わせて!!」

「いや、俺拘束されてんだけど……というか全身痛いんですけど…」

「次口答えしたら牢にぶちこむよ」

「理不尽だ!!」

黒豹とシェリルが心配そうに見つめる中、猿の腕を巻きつけていた蜘蛛糸が解除されタイナのポーチへと手を入れ探し始める。サイは何がなんだかわからず呆然としている。

「目覚めたら急に潰されかけるは騎士が壊れだすは…本当になんだよ…」

「え、おたくマジで何してたか覚えてねぇの?今吐きかけてる蟹の嬢ちゃんと戦闘してた、つーか殺しにかかっていたな」

「……はい?いや、え?だってアイツ騎士だろ?うん、騎士を殺しにかかるとか重罪じゃ…」

「ああ、死刑か終身刑のどっちかだろ」

「死!?く、詳しく説明を頼む!!」

サイが詳しい事情を黒豹から聞いているとシグルドがポーチから何かを取り出した。

「あった!ほら赤髪これ噛め、絶対飲み込むなよ少しは楽になるはずだ」

「すみません…口の中スースーしますねこれ」

シグルドがレヴィに緑色のきのみを食べさせると少しだが顔色がよくなった。タイナの掲げていた魔石が光を放ち更に術式をもう二つ展開する。魔石から薄い半透明の板が広がりそこに文字が刻まれていく。

「結果がでたよ!なになに……レヴィちゃん」

「はい…うぇぇ…」

「『魔力酔い』ってでてるけどそんなに魔力使ったの?」

「魔力酔い?」

「うん、普段使用する魔力量よりも余りにも多く使うと体内魔力の循環が速くなって、それに体がついてこれずに起きる現象だけど…」

「ああ、そういう事ですか…うっぷ…今まで魔力なんて使ったこともありませんでしたから…魔法も一度も使ったこともありませんし…」

魔力を使わない魔族とか普通いないよ、とツッコミたかったが無視した。

レヴィが例外すぎるのはもう慣れたようだ。

「レヴィちゃんの非日常的な事情は聞いても理解出来ないから放っておくとして…取り敢えず少し落ち着くまで横になってたら?べつに命を奪うようなもんじゃない軽い症状だし」

「はい…うぷ…頭が痛い……吐きたい……」

レヴィが適当な場所でミトスの実を噛みながら横になると扉が開き、そこからティファが茶色の桶を持って帰ってきた。

「ありました!えっと…使いますか?」

レヴィの目が見開きティファから桶を奪い取ると桶の上に自分の顔を置き完全に吐き出す体制になる。

「レヴィちゃんここ人前!美人さんなんだから堂々と履かないで!!」

「すみませんもう吐きますヴェ」

「ちょっと待って、さっき食べた暗黒物質(お茶漬け)はどうなる?」

シェリルのいらん一言で完全に硬直する蜘蛛と犬、最悪のヴィジョンが脳内再生される。シグルドはなんのこっちゃと疑問符を浮かべている。

「レヴィちゃんトイレ行こうかあああああああ!!!」

「お願いします我慢してください本当にお願いします!!」

「あ、もうダメ登ってきた、吐く、吐きます、喉まで来てm「チェストォ!!」じゅ!?」

シグルドを縛っていた蜘蛛糸の塊をレヴィの口にねじ込むタイナ、だがそのせいで飲んではいけないものが喉を登っていた胃液と共に胃袋へと向かう。

「あの…姉御…?」

「何!!今忙しいんだけど!!」

「ミトスの実…飲んじゃってますよ…その人」

「は!?……あ」

するとあら不思議、みるみるうちにレヴィの顔色が青色から黄色、そして赤、ピンク紫とカラフルに変わっていくじゃあーりませんか。

最終的に真っ白になり目が点に、口がバッテンマークになった。

ダラダラと嫌な汗が吹き出るタイナ、あちゃーと手を額に当てるシグルド、オロオロしているティファ、そしてレヴィに脳裏をふと過ぎる川の向こうに佇む人間の聖騎士団の皆。

(………………あ、だめこれ私死ぬ、死にたくないなぁハハハ…ハ……)


バタン!!


「ギャーーー!!レヴィちゃーーーん!!?」

「これ俺無実だよね、姉御の言う通りにしたらこうなったんだそう姉御の所為だ」

「「いや、二人共有罪じゃね」」

「おいサイ野郎と黒豹なに言ってくれちゃってんだ!!」

「とうとう私たちの店で殺人が…店長、お店守れませんでした…すみません…」

「シェリルさんの所為じゃないですよ!この人たちがバカなだけですから!」

頭を抱えて絶叫する蜘蛛、現実逃避する赤猿、今のうちに逃げれるかと画策するサイと黒豹、後悔の念にかられ死んだような顔をするシェリルとそれを励ますティファ。

と、唐突にレヴィの左手に刻まれた呪印が怪しく輝き出し幾何学的に動作していく。

「ん?何か光ってんぞ騎士さん?」

「え?」

一つ目の紫光の輪っかが浮き上がり、続いて内側のもう一つの紫光の輪っかが浮き上がる。紫光の二輪の中で五芒星が二つ描かれそれぞれ違う角度で重なり合う。

「これってまさか…!」

五芒星が完全に重なると五芒星から黒色の目のような物が浮き上がる。そこから全魔族の頂点に君臨する声が響いてくる。

『ふむ、レヴィの反応が薄くなったから覗いてみれば…なんだこれ!?』

最初は畏怖を感じさせる圧を伴う声だったが最後のほうでいつも通りの素に戻っていた。

「ま、ままままま、魔王様!!?」

「「「「「は?」」」」」

理解不能の言動をしたタイナに腑抜けた声で返してしまう。だがすぐにワントーン低い怒りを込めた声が帰ってきた。

『オイ、これはどういうことだタイナ?』

この声で全員理解した。今聞こえるのは紛れも無いこの世界の王で絶賛自分達がヤバイ状況だということに。

全身に悪寒が走る、頭の中で警報が全力で鳴るが体が動かない。

名指しされたタイナはもう目が死んでいる。

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