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プロローグ-1人魔大戦のレポート 執筆者魔族騎士団団長デュラン・マキシアーデ

更新は遅めです。

魔族と人間


暴力の塊である存在と秩序を重んじる存在。


水と油のように交わることがない二種族。


決して理解する事が出来ない二つの種族は、憎み、怒り、悲しみ、そして恨む。


その憎悪で出来た渦は、次第に時の流れに従って、血と悪意によって悪化していった。


手を取り合わず、爪で、剣で、牙で、矢で、自分の持ちうる全て持って、互いに傷つけあい死んでいく。


打倒の対象として、平和の目標の為として、敵として、大義名分として掲げ合う。


そこだけが唯一、同じ考え方だった。


それ故に、決して終わることのない戦争。




そこに、1人の悪魔が異世界から降臨し、戦局を大きく変えた。


異世界から来訪した黒色の双角を生やした悪魔は、魔王と呼ばれる魔族最強の存在となった。


誰も見たことない魔法で(あだ)なす敵を全て消していき、先代の王もその魔法に屈した。


まさに史上最強の魔法の王であり、魔族の王だ。


それに対するは、精鋭である魔族騎士を次々と、その強靭な体で捻り潰していく人間。

最強の聖騎士と呼ばれた女、『ステラ・カルミヌス』だった。


騎士でありながら、剣を武器として使わずに体そのものを武器として戦った人間。

その拳が握られたら、相手の敗北が決まっていると魔族に恐れられた女。


我らが王は魔族軍を率い、決戦荒野(けっせんこうや)と呼ばれるデーア大陸の中心でステラ率いる人間の聖騎士軍とぶつかった。


互いに睨み合い、魔法の打ち合いによる牽制が続き、そして鳴り笛と同時に火蓋が切られた。


戦力は魔族の強さと人間の弱さ、それを計算に足しても五分五分だ。


魔族騎士と聖騎士の戦争は、まさに力と技の戦いだった。


我らが圧倒的パワーで潰す事もあれば、逆にその力を利用しカウンターを決め、更に連撃を叩き込まれ地に伏す魔族もいた。


一進一退の攻防の中、遂に最強の聖騎士が戦場に現れた。


出てきた途端、急に戦場の流れが変わり始めた。

同胞達がたちまち切られ、殴られ、立ち上がる事がなかった。


これを看過出来なかった我らが王は術式を展開させ、魔法を発動し風と共にステラの元へ翔けていった。


対面した2人はいくつかの言葉を交わした後激突したという。

(詳しい会話内容は現状不明、魔王様は(かたく)なに話そうとしない)


最初に起きたのは大爆発。


次に爆炎のなかから2人が飛び出した。


そこからは魔法と肉体のぶつかり合いだった。


誰もがその戦闘を固唾を呑んで見守り続けた。


2人の攻防は数時間に渡った。


大地は砕け、大気は震え、衝突音が世界に響く。


2人の強さに誰もが恐怖し、同時に憧れた。


その次元の違う戦いに勝利したのは我らが王だった。


決め手はステラに叩きつけた魔力弾だという(その際白色の魔方陣を確認されたという。術式の色、形式から回復魔法と判断。人間達の悪あがきと推測される)


王は天に吠え勝鬨(かちどき)を上げながら我ら魔族は人間への猛攻撃を開始。


そのまま高機動部隊を主軸にした快進撃で人類を殲滅(せんめつ)、このデーア大陸を手中に収めた。


その後、デーア大陸の中央である決戦荒野に魔族街デアントを建設。


これにより大きく流通機能の拡大、それに従い様々な魔石の開発、魔族文化の進歩が始まった。


それから五年がたった今では魔王様の統治を許容出来ない魔族が多く現れた。


彼らは『反魔王派(オベディエンス)』と呼ばれをテロ行為を続けている。


これからはもっと警備を強化していく必要があるだろう。そちらの魔法開発が好調な事を祈っている。


追記・新人騎士について


魔王様は相変わらずあの戦争の事を多くは語らず、特にステラについては黙ったままだ。


それに何故か二週間前に魔族騎士団に入団した『レヴィ』とかいう赤髪の魔族に手間暇をかけていらっしゃる。


あの女騎士には魔王様に恨みがあるという噂が騎士団内で出回っている。


どうにかすべきでは? と提案したが魔王様はそのままにしとけとおっしゃられた。


今度それが真実かどうか、仮に真実だとしても恨んでる理由を聞いてみる事にしよう。これも騎士団長の務めだ。


それにもしかしたら魔王様が秘密にしてる何かを知れるかもしれない。


お前達も何か知らないか? どんな些細な事でも知ってたら連絡をくれ、あまり期待してはないがな。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


魔族騎士団団長室と呼ばれる赤い絨毯と巨大な金鎧が目立つ部屋、そこに人間のような二足歩行の骨格と、黄金の毛並みと鬣をしたライオンを足したような見た目の存在が、机を舞台にして一枚の紙と対峙していた。


このライオン男の名前はデュラン・マキシアーデ。


彼は魔族騎士団長という役職にいながら、肉球のついた手で剣ではなくペンを持っていた。


彼は嫌味を書いたところで、豪腕な肉球のついた手で握った羽根ペンをインク壺に刺す。

偶に自分の毛にインクが付き、それに気づかず書類に触れた結果全ておじゃんになった過去を思い出す。


自分の手をよく見てから一息吐いた。


「ふぅー、ようやく書きあがった。全く魔法研究所はこんなものどう使う気なんだか? 全然魔法関係ないだろ」


そう言って騎士団員からデュラン団長と呼ばれる魔族は赤のクッションと金の骨組みで出来たかなり派手な椅子に思いっきり背を預けた。


長い執筆作業は体を硬くし、背伸びした際に体中からいい音が鳴る。だが自分の机に広がる大量の書類がせっかくの現実逃避を邪魔してくる。


先ほど書いたレポートを茶色の封筒に入れ、適当にぶん投げた。

後で探すの大変か?と脳裏を過ぎったが無視した。

未来の事は未来の自分に任せる事にしたようだ。


少なくとも今は目の前の紙の壁をどうにかしなければならない為そちらに意識を向ける。


「後で配達屋に任せないとな……ハァ……」


疲れが溜まっているのか自己暗示的な独り言を呟きながら机の下からハンコを取り出し適当にドンドン押していく。

本来ならこの作業は彼の仕事ではない為、モチベーションはドン底レベルに最悪だ。


加えて既に太陽が傾き始めているという事実がより億劫にさせる。


「この調子じゃ今日も家に帰れないのか、というか寝れるのか俺?」


最悪のヴィジョンを頭に思い浮かべていると目に余る物がそこにあった。


ピタリと脳から腕にブレーキをかけ、自動ハンコ押しモードを緊急停止。


押しかけたハンコを上げ、書類を左手で摘まみ上げる。


(魔石の不法取引?普通に買えばいいじゃないか。市販されていない物なのか? まさか違法エンチャント、誰かに調べさせるか)


と、そこで、上の方からドッタンバッタンと喧しくわざとらしい騒音が響いてくる。


二週間前からずっとこうだ。


「貴方はいつもいつもどうして覗いてくるのですか変態王!!」


「それはお前の裸という黄金郷があるからなのだよフハハハー!うわバカ裸で掴みかかってくんじゃない!色々大切な所が見え___」


この騒動を引き起こしているのはこの国の王である『魔王』、それと最近この騎士団に入団した『赤い髪の女騎士』だ。


断末魔が建物中で響き、更に騒がしさはエスカレートしていく。その様子にライオンはため息を大きく吐く。


(またあの2人か…無視無視)


掴んだ書類を机の中にある「保留」と書かれた箱に入れ、頭を無にし機械的なハンコ押しモードを再開する。


だんだんスピードが乗ってきて魔族としての力を発揮しミシンスピードで作業は進行していく。


彼が目指すは家への帰宅である。

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