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8 再び風呂で考える

 ~【プラエキプア】 エリア:レオミノル~

 レオミノルで唯一の町。

 レオミノルは開拓が始まったばかりの島で、その拠点となっている。


 露天風呂が魅力と言う触れ込みがあった、町で唯一の宿屋に宿泊。

 言葉通りであるなら暫くこの町を活動拠点にしても良いかもしれない。

 当然の事ながら他のプレイヤーの姿は皆無。

 ここで、少し戦いながらレベルを上げようか。


 ◆


 薄い胸、細い腰、貧相な尻。

 凹凸の少ない体つき。

 脱衣所の鏡で自分の姿を改めて観察する。

 何でこんな魅力の無いアバターを作成したのだろう。

 手のひらに収まるその胸を揉みながら考える。


 そして、その感触に記憶を呼び起こされる。


 ……これは、俺の体では無い。


 いや、アバターなのだから、とか、女性の体だから、とかそう言う意味ではない。

 鏡に写ったその裸体にはモデルが存在する。持ち主、と表現しても良いかも知れない。

 その事を思い出し、そして、そこに付随する事柄も思い出し俺は胸を揉むのを止め湯船に向かう。

 蘇ってきた嫌な記憶を洗い流す為に。


 ◆


 自慢の露天風呂からは遠くに浮いている島の明かりも見えた。


 湯船に腰掛けそれを眺めながら、今後の行動方針を定める。

 暫くは、ここを定宿にして周囲の島の配達仕事で金策。

 装備、スキルを整えつつ、戦闘をこなして行く。

 そんな感じだろう。


 その前に、この体を何とかしたい。

 女性の裸体は、確かに喜ばしい。

 しかし、だ。

 その興奮、喜びを男として表現する為の器官が無いのだ!

 何と言うか、生殺しに近い。

 そして、その、眺めるべき体の持ち主を思い出した今、この体には嫌悪感しか無い。


 ……。


 いや、アバターに罪は無いか。

 胸を揉みながら考え直す。


 とは言え、出来るなら男の体が欲しいな。


 ◆


 風呂を出て部屋に戻り、メニューから『問い合わせ』を選択。


『はい。こちらコンステレーション クエスト オンライン問い合わせ窓口です』


 仮想ウインドウが俺の前に浮かび、中にイヤホンマイクをつけ、前髪を横に流した女性が映し出される。


「あ、すいません。アバターの設定を間違えたので直したいんですが」


 低姿勢でそう切り出す。


『アバターの設定ですね。少々お待ち下さい。

 アバター設定に関しましては、髪型等は自由にカスタマイズしていただく事が可能となっておりますが、その他の設定に関しましてはプレイヤー様を特定する重大な項目となりますので、変更は不可能とさせていただいております』

「いや、ちょっと、性別を間違えちゃったんですよ」

『性別もこちらからは変更不可能とさせていただいております』


 やっぱり!


「チュートリアルのときにちゃんと確認しなかったのは、こちらの落ち度ではあると思うんですけど、流石に現実と性別違うと少々不便なんですよね。

 なんとかなりませんか?」

『……少々お待ち下さい』


 そう言って何かを調べる素振りをするオペレーター。


『お待たせしました。ハルシュ様に於かれましては、今のアバターを大変楽しんでおられるご様子ですが』

「え?」

『映像もご用意出来ますが?』


 口角を少し上げ、しかし、威圧するような目で微笑むオペレーター。


「例えば、どんな?」

『そうですね。お風呂場でまるでショーを行うように鏡の前で脱衣を行っているご様子とか、湯船の中で胸をマッサージしながらだらしのないお顔をなさっている姿とか』

「もう結構です」

『映像は不要ですか?』

「不要です。削除してくれませんか?」


 見たら、何かのトラウマになりそうなんで。


『行動ログの削除は運営の規定に沿って行いますので、そのご要望はお受け出来ません』


 再び微笑むオペレーター。

 しかし、圧がすごい。


「そうですか」

『お問合わせは以上でよろしいでしょうか』

「はい。お手数おかけしました」

『星々の導きのあらん事を』


 お決まりの文句と共にウインドウが消える。


 俺の黒歴史が、また一ページ……。

 ……しかし、こちらからは変更不可能と言っていたな。ならば何かしらの手段はあるのか?

 期待しないで探そう。うん。


 ◆


<運営からお知らせがあります>


 ログインと同時にメッセージが。

 メニューを開き確認する。


 ◆


 【他プレイヤー様への迷惑行為について】


 コンステレーション クエスト オンラインをお楽しみいただきありがとうございます。


 現在、多数のプレイヤー様より、プレイヤー様間でのトラブル、迷惑行為に関しての問い合わせ、苦情をいただいております。

 具体的な事項としまして、所有アイテム、所持金の強奪を目的に他プレイヤーへ危害を加えること行為、もしくは、危害を加えることそのものを目的とした行為、いわゆるPKなどになります。

 運営チームといたしましては、プレイヤー様間でのトラブルに関しましては極力介入を控えるというスタンスではあります。

 しかしながら、非常に多数のお問い合わせを頂き、また、その行為を確認し、悪質であると判断いたしました為、以下の処置を取ることと致しました。


(1)スキル【離脱】の配布

 プレイヤー様全員に、セーフティエリアへ移動可能なスキルチケットを配布いたします。

 このスキルを使用いたしますと、安全な領域へ転移することが可能となります。

 なお、当スキルにつきましては使用後二時間を経過いたしませんと、再使用が出来ませんのでご注意ください。

 すでに、当スキルをお持ちのプレイヤー様に関しましては、スキルチケット代を返還いたします。

 また、本対応に伴いまして、全プレイヤーのスキルスロットを1枠追加いたします。


(2)NPCのよる取り締まりの強化、及び、厳罰化

 迷惑行為に関して、NPCによる取り締まりを行います。

 フィールドなどで他プレイヤーを待ち伏せしているなどの行為を見つけた場合にもNPCが対処に当たります。セーフティエリア内に於いても警告の対象となる場合がございます。

 ペナルティに関しても強奪等を行った場合は原則全額返金、PK行為は加害したLPと、同量のLP減を罰とします。

 ただし、【反撃可】と表示された場合は、懲罰の対象といたしません。


(3)一方的なPK被害者への損害LPの補填

 ゲーム開始から、現時点までで迷惑行為によってLPを損傷されたプレイヤー様に関しましては、その損傷分を補填いたします。

 ただし、加害者の反撃による損傷はこれに含みません。


 本件に関しまして、不明点等ございましたら、メニュー内のお問い合わせよりお願いいたいます。


 皆様に、星々の導きのあらん事を。


 運営チーム一同


 ◆


 ほう。

 余程無法地帯化していたと見える。

 お陰で、スキルを一つ手に入れた。

 効果は転移石と同じ。

 最後に訪れたセーフティエリアへの移動。ただし、クールタイムが二時間。

 正直ありがたい。


 ていうか、サービス開始してから、丸一日とちょっとくらいなんだよな、まだ。

 どれだけ暴れまわってたんだろう。


 ま、別に良いけど。

 俺はこれから配達業務だ。

ハルシュ Lv.3

筋力値:5

魔力値:5

敏捷値:5


装備:

【アイアンスピア】

【革鎧】


セットスキル:

├[1]【飛行】Lv.1

├[2]【槍】Lv.1 

├[3]【回復】Lv.1

├[4]【観察眼】Lv.1

├[5]【夜目】Lv.1

└[6]【離脱】

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サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
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