55 祝勝会をする
祝勝会なんて、近場でやれば良いじゃん?
ここからだとハマルが近い。
その意見は、ジルヴァラとリーザに却下された。
「宿屋の親父さんに預けたリヒトが心配なの!」
「ワンちゃん! 見たい! 見たい! 見たい!!」
という訳で、わざわざへび座まで戻る。
少女はジルヴァラを抱えての長旅になったが、何とか持った。
流石に少し疲労の色が見えるが。
まぁ、たまには良い運動か。
◆
「じゃー改めて。アンドロマリウス退治! お疲れー! かんぱーい」
「「「カンパーイ」」」
宿屋の近くの定食屋。
メニュー、中華。
まぁ、良いけど。
「今日のMVPはウミだなー」
「え、そう?」
俺の感想に、皿を配りながらウミが嬉しそうな顔をする。
「突入方法見つけたし、魔法の使い方もバッチリだったと思う」
「そうですね。結局、ダメージらしいダメージ受けなかったですもんね。
あの落とし穴のお陰で」
「へへへへー。どうよ。新生ウミさんは。今日はやらなかったけど、他にも色々出来るんだよ?」
毒とかな。
『落第だぁ』と、悲しそうな顔をしてから一ヶ月ほど。
彼女の新しい戦闘スタイルは、直接的な攻撃力でなく、サポート役として周りを活かすことを選んだ様だ。
「止めは! 私が刺したんだから!!」
「はいはい。次はやる前に一言ちょうだいね」
「だったら最初っから連れて行ってよ」
「そうですね。そうしましょう。約束!」
そんな約束はしない。
それは、リーザとジルヴァラの約束だ。
こっちを見るな。知らん。
「さて、ボーナスは何かな」
仮想ウインドウを開いてアンドロマリウスの撃破ボーナスを確認。
【アンドロマリウス撃破特別プレゼント】
独力でアンドロマリスの元へ辿り着き、そして、これを打ち破った者への特典。
スキルかアイテムかを選択せよ。
ふむ。
スキルかアイテムかが選べるのか。
暫し考え、周りを見渡す。
仮想ウインドウとにらめっこをしている三人の中で、嬉しそうに餃子を口に運ぶ少女と目が合う。
「美味いか?」
その問いに、口いっぱいに餃子を頬張ったまま嬉しそうに頷く。
微笑みを一つ返し、そして、仮想ウインドウの選択肢、それに対して『アイテム』を選択。
<ポーン>
システム音。
<ファントム・マントを手に入れました>
アイテム【ファントム・マント】 ランク:9
大盗賊が愛用していたマント。
スキル効果【暗視】【隠密】
へー。スキル効果が付いたアイテム何か有るのか。
これは良いな。
「ウミさんは、新たな剣を手に入れた!」
そう言って、ウミは立ち上がり細身の剣を頭上に掲げる。
「危ねーな」
「へへへへー。軽いな。これ。ファントム・ストリッシャ。ランク9! すげー!」
「カッコイイです!」
少女が羨望の眼差しを向ける。
「私はこれ。白日のサークレット。ちょっとデザインがいまいちかしら。【看破】と【暗視】のスキルが付いてるみたい」
ジルヴァラが、金色の鎖を手の上に広げて見せる。
「へー。それも良いなー」
「ウミ、後でちょっとデザイン直してもらえるかしら」
「お安い御用!」
「みんな、アイテムにしたんですね」
「リーザは?」
「私は……【ライフスティール】ランク9のスキルですね」
「何その怖そうなスキル!?」
「えっと、『邪悪な者より奪う。正義の名の元に』……よくわかんないですね」
「即死スキルとかかもな」
装備してればそのうち分かるだろう。
「ハルシュは?」
「ファントム・マント。【暗視】【隠密】の効果付きだそうだ」
言いながら、そのマントをウミに渡す。
「これの見た目も直してくれ。アリアシアに似合うように」
「え?」
俺達のやり取りを、次々に食べ物を口に運びながら眺めていた少女。
突然、自分の名が出て驚きの声を上げる。
「私ですか? どうして?」
「俺が持っているより、アリアシアが使ったほうが有意義だろう。今日頑張ったご褒美と、置いていったお詫び」
暗視、被ってるしな。
「そんな……受け取れません」
「俺は、父君から譲り受けた物がある」
「でも」
「アリア、こういう時はありがとうって言って受け取るの」
俺からマントを受け取りながら、ウミが少女を諭す。
「……良いんでしょうか?」
「良いの良いの。要らなかったら私がもらうから後で言ってね」
「そんな事無いです! ありがとうございます。大事にします」
そう言って少女は、困惑の顔から笑顔になり、俺に頭を下げる。
あげるとは、言っていない。
俺が死んだ時の為の保険。
リスタートになったら返してもらう予定。
言わないけども。
ジルヴァラとリーザが、したり顔でこちらを見るが無視して餃子を口に運ぶ。
◆
「お姉さん方の戦いに水を差してごめんなさいね」
ジルヴァラが、珍しくしおらしい事を言う。
もっとも、口調は全然しおらしく無いのだが。
「いや、別に良いけど」
「行きたいて言ったの、アリアなのよ」
「は?」
思わず、ジルヴァラの方を見る。
半裸に、湯衣。
俺と話をする時は風呂の中で。
そんな約束事でも出来上がりつつあるのだろうか?
それはそれで、歓迎すべきだ。
ただ、惜しむらくは、誰一人として、全裸にならない事なのだが。
「アリアシアが?」
置いていかれるのは嫌だと言った先程の少女の顔。
そこに見えた強い意志。
自然、思い浮かぶのは、月に消えた英雄の話。
「抑えきれなかった。だから、私も行くって言ったの。ま、結果としては大活躍した訳だけど」
「ちょっと待て。何時からいたんだ?」
「戦いの初めから見てたわよ?
参戦するつもりは無かったけど。
でも、あ、今! 行ける! チャンス!!
そう思ったら、もう、止まるなんて出来ないわよね」
「そうかい。しかし、アリアシアが……」
「心配なのはわかるけど、あの子もあの子で感情を持って、考えているって事ね。
たかが、NPC。そう思うなら離れた方が良いんじゃ無い?」
「そう言う訳にも行かないんだよな。
面倒なゲームだ」
「その割に楽しそうじゃない」
「俺は死に場所を探してるんだよ。
君が迎えに来てくれるかを確かめる為に」
「思ってもいないのによく言うわ」
「どうかな? 茶化している事こそ本心だったりするんだぜ」
「私に会いたいから戻って来る訳じゃないでしょう。きっと。
だから、その時は最初にこう聞くの。
何をしに帰ってきたの? って。
素敵な答えを用意しておいてね」
微笑みながらそう言って、彼女は湯から出る。
「そんなの用意する必要も無い。君に会いにだよ」
「……子供を口説いても、しょうがないんじゃないかしら?」
それだけ言い残し、ジルヴァラは浴場から出て行った。
上手くやり返されたな。
そう、苦笑しながら思う。
そして、彼女の胸とこの胸。
果たしてどちらが大きいだろうか、などとどうでも良いことを考え、比較の対象を揉みながら、イベント戦の疲れを癒すのであった。
ハルシュ Lv.21
筋力値:23
魔力値:23
敏捷値:23
装備:
【英雄の槍】
【魔導銃・喇式】
【ミスリルスケイル】
【大魔導士のローブ】
セットスキル:
├[1]【飛行】Lv.1
│└─【指南】Lv.1
├[2]【英雄】Lv.1
├[3]【槍】Lv.2
│├─【防御】Lv.1
│└─【魔法防御】Lv.1
├[4]【銃】Lv.1
├[5]【観察眼】Lv.2
│└─【暗視】Lv.1
├[6]【超反応】Lv.2
│├─【気配察知】Lv.1
│└─【魔力察知】Lv.1
├[7]【神聖魔法】Lv.1
└[8]【離脱】
所有スキル:
【回復】Lv.1
【夜目】Lv.1
【看破】Lv.1
【恫喝】Lv.1
【拷問】Lv.1




