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5 助太刀する

 時間を置いて、再度ログイン。


 さて、あの迷惑な連中は居なくなっただろうか。

 転移石は残り一つ。

 ま、ここでも買えるので残数は問題ないのだが、そう何度も使うほど安い買い物でもないんだよな……。


 それにしても、ゲーム開始初日で既に二十人規模の集団を組織するとか、あのイケメン、中々のやり手か?

 それに狙いはPKだったみたいだし。

 ひょっとしたら、LP1組、つまり、レアスキル取得プレイヤーを狩ろうとしていたのか?

 ま、弱いやつほど群れる傾向にあるしなぁ。群れるとその分、気が大きくなって行動が雑になる。所詮は烏合の衆だろう。

 しかし、現時点ではまぁ、脅威だ。

 近寄らないに越したことは無い。

 ちょっと遠回りになるが、街道を避けながらハマルに向かうかな。


 ◆


 街道から少し外れて歩きながらハマルを目指す。

 街道を行くよりは少しモンスターが多いが、まぁ、問題ない。


 と、視界に戦闘中の他のプレイヤー達が飛び込んでくる。

 明らかに劣勢。

 ウサギに混じり、オオカミ型のモンスターの姿も。

 て言うか、お前ら捕食関係じゃないの?

 頭に浮かんだ、そんなどうでも良い疑問をすぐに消去する。


 戦闘中のプレイヤーは、三人組。

 剣を持った男女と、ローブ姿の女性。


 ダメージを負っているのだろう。

 地面に座り込む、ローブ姿の女性。

 その背後から、オオカミが飛びかかろうとしている。

 しかし、気付いていないのか?


 俺は、右手の槍をそのオオカミに向かって投げ放つ。


 意識の外から飛来したであろうその槍に貫かれ、オオカミはその生命を失い、そして、粒子と化し死体も残さずに消えて行った。


 その直後、モンスター達、そして、プレイヤー達の視線が一斉に俺に集まる。


「助太刀する!」


 俺は投げ放った槍の元へ駆け出しながら、そう言い放った。

 残りは、オオカミ二匹とウサギ一匹。


 ◆


 俺的には大した苦戦でもなく、そのモンスター達を葬り、なんとか一息ついた。


「……ありがとうございました」


 地面に座り込んでいた、ローブ姿が立ち上がり礼を言った。

 軽く手を上げ、それに応える。


「余計なことすんなよ!」


 剣士姿の男が吐き捨てるように言う。


「そんな言い方しないの!」


 こちらは剣士姿の女。

 窘めるように言う。

 しかし、男は心底嫌そうな顔をしている。

 ハーレムに割り込まれてご機嫌斜めなんだろうな。


 ま、正直、放って置いても良かったんだが。


「大丈夫?」


 剣士姿の女に近づき、問い掛ける。


「なんとか。助かりました」

「いや、良いよ。で、その腕、どうしたの?」


 彼女は、左腕の肘から先が無かった。


「さっき、街道でプレイヤーたちに襲われて……」


 なるほど。連中、まだ居るのか。


「回復できるかな」


 そう言って、俺は彼女に回復魔法を施す。

 HPは回復しているようだ。しかし、欠損した左腕は再生しない。


 この娘達を助けた理由がこれ。

 四肢の欠損を回復魔法で再生できるのか。ヘルプで言及がなかったので、後で自分の体で実験しようかと考えていたのだ。

 いや、やらなくて良かった。マジで。

 ま、足の小指とか当たり障りない所で実験するつもりだったけど。


「駄目か……」

「すいません。ありがとうございます」

「うん。気にしなくて良いよ。早く治るといいね」


 彼女の腕の再生は、今の俺の回復魔法のレベルでは無理だが何かしら手段はあるだろう。

 確か、ハマルに『治療院』なる施設があったはずだ。


「ついでに君も」


 ローブ姿の女性にも回復魔法をサービス。


「すいません」


 男は……良いか。

 余計なことはすまい。


「じゃ、気をつけてね」


 それだけ言って立ち去ろうとした。


「オイ、俺は?」


 後ろから掛かった声に、振り返ってとびっきりの笑顔をサービス。

 これで元気120%だろ?


「あの、ハマルまで行くんですよね?」

「そうだけど」

「一緒に連れて行って下さい!」


 女性二人が深々と頭を下げる。


「んー、身を挺して助けるような事はしないけど、それでいいなら付いてくれば?」


 ◆


 俺の両サイドを一歩下がって女性二人。

 そして、後ろから男一人。


 後ろから刺すような視線を感じるのは気のせいではないはずだ。


「彼、良いの?」


 変な恨みは買いたくないのですが。


「良いんです。……口だけで役に立たないから」


 辛辣に、言い放つ魔法使い。

 まぁ、片腕の彼女より戦力になってなかったからな。さっき。

 聞こえて無いだろうか。

 チラと振り返る。


 ……泣きそうな顔してるよ。


 流石に哀れになったので、仕方なく回復魔法を掛けてあげる。

 驚きの表情を浮かべる彼に、ウインクのサービス。

 これで元気150%だろ?

 いざとなったら盾にでもなってもらおう。


「それにしても、ヒーラーは居た方が良いよ?」

「実は、出発する時は居たんです。でも、途中でPK集団に絡まれて、それで、彼が犠牲になって私達を逃してくれたんです」


 ほう。

 それは、随分なお人好しですな。


「勇敢だね」


 もしくはバカ。


「無事なら良いけど」


 無理だろうな。


 そんな話をしながら、ハマルに向かって歩いていた俺達の後方から盛大な爆発音がして、振り返ると巨大な黒い火柱が立ち上るのが見えた。

 それは、丁度街道でさっきの連中に絡まれた辺りだろう。


「……何あれ?」


 呟いた魔術師の疑問に答えられる者は、その場に居るはずも無かった。

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