44 魔王と百合百合する
毛皮でモコモコのコートを纏った魔王様を抱き抱え、コル・カロリへ。
意外と魔王様キャラが様になっているこの子の思いっ切りの良さには驚かされる。
思いっ切りの良さと言えば、リーザもだが。
まあ、いきなりLP9をつぎ込む様なギャンブルに出る様な性格だから、当然と言えば当然か。
「長旅お疲れ様でした」
地面にそっと魔王様を降ろす。
「私も飛びたいわ。それ、本当に英雄の力?」
「魔王様の僕の証です」
「そうやってはぐらかしてばっかり。貴方、LP1でしょ?」
え。
「ランク10に、飛行ってスキルがあったわ」
「へー」
「確か説明は、空の神の寵愛だったかしら? さっきのNPCもそんな事を言っていたわね」
バレてる!
え。
リーザにもバレてる?
「白状なさい」
俺はそれに満面の笑みを返す。
否定も肯定もしない。
それが、答え。
「それなのに貴方は、私に命をくれたわ。
例え、それがどんな悪巧みの結果であれ、構わない。
私は貴方に付いて行く……」
そう言ってジルヴァラはそっと俺に抱きついて来た。
「そこ。後ろに花が咲いてるぞ」
いつから見ていたのか、横からウミがチャチャを入れる。
構わず俺は魔王様を抱きしめ返す。
忠誠の証として。
◆
宿屋で適当に食事しながら、ジルヴァラに少女が置かれた立場を説明。
両親が既に亡くなっている事。
その両親の魔法で二年間一人だった事。
などなど。
俺の呪いについては伏せる。
「そんな事があったの……。だったら尚更、貴方は生き残らないとね。
さて、そろそろ私は行くわ。時間だから」
そう言って、ジルヴァラは目頭を抑えながら急いで出て行った。
「……で、今度はアンタが毒牙にかかったわけだ」
ジト目でウミが言う。
「自分に酔ってるだけだろ。その内飽きるさ」
「私も変な風に焚付けちゃったな……」
「まあ、俺も悪ノリが過ぎたのは認めよう。でも悪い子じゃないだろ。ちょっと残念なだけで」
その残念な行動の勢いに乗せられたのは、まぁ反省すべきだが。
「ちょっと残念、か。力が有るだけに面倒よね」
「少しずつ方向転換させてやってくれ」
「何で私が?」
「一番まともそうだから」
「そう言うキャラ、止めたいのに!」
「苦労かけます」
「あーん、もう! なんでランク10は揃いも揃ってポンコツなのよ!」
さりげなく、ポンコツ組に混ぜられるリーザ。
ま、わかるけど。
「だってさ、後先考えずにLPつぎ込む連中だぜ? 常識を持ち合わせると思うなよ?」
「何で勝ち誇った様に言うのよ!」
ウミも行動がおかしいところは多々あるが、それでも考えた上での行動に見える。
なんと言うか、年上の余裕みたいな物の様な気がする。
三人の中でリアルで一番年上なのはウミだと思う。
それでも俺よりは若いだろうが。
ま、聞かないけども。
「君も協力しなさいよ」
「はいはい」
ま、今は全部が新鮮に見えるんだろうからな。
じきに飽きるだろう。
◆
時間を空け、再度ログイン。
「全然上手く行かないわ……」
調合の合間に様子を見に来たであろうジルヴァラ。
その顔は、がっつりと疲労が浮かぶ。
「ああん、もう!」
小さくため息を吐いて、俺の隣に座っていたウミが勢い良く立ち上がる。
「教えてあげる!」
そう、ジルヴァラに怒鳴る様に言う。
面倒見の良いことで。
「お前、調合なんて持ってたの?」
「持って無いわよ」
は?
「私は調毒。似た様なものでしょ?」
毒!
それはヤバい!
金輪際、下手にからかうのは止めよう。
もう一度小さくため息を吐いて、ジルヴァラと彼女の部屋へ戻って行くウミ。
面倒見の良いことで。
にしても、調合なんてそんなに難しいもんかね?
「こっちも、そろそろ休憩するか」
「……はい」
目を瞑ったまま、ベッドに横渡る少女。
三十分ばかり寝転んでいて休憩も何も無いとは思うが、気分転換でもしよう。
◆
【飛行】のスキルに、【指南】のスキルを組み合わせる。
これで他人へスキルを教える事が出来る筈である。
とは言え飛行には、コツが必要なのは経験した通り。
先は長いかもな。
この、指南のスキル、使って分かったが、制限が多い。
まず、指南の対象者を指定しなければならない。所謂弟子みたいなもんだ。
対象者の数は、指南のスキルレベル、そして、指南するスキルのランクによって同時に取れる弟子の数が変わる。
指南のレベル1、教えるスキルのランク1で9人。ま、ランク1なら買った方が圧倒的に早いが。
そこからランク一つ上がるごとに一人ずつ減り、ランク9以上のスキルは、弟子一人である。
弟子は、スキルを繰り返し使う事で経験を積み、やがてそのスキルを取得する。
途中で弟子である事を止めると当然スキルは使えなくなる。
取得に必要な経験値も、当然スキルランクが高いほど多くなる。
なお、ランク10にはもう一つ制限があり、弟子のままでは使うことは出来るが、スキルとして習得する事は出来ないらしい。
教える側が、ある程度経験を積んだ弟子に受け渡す事が必要になる。当然、受け渡した側はそのスキルを使えなくなる。
一子相伝という奴だ。
ま、ランク10がホイホイ増えると有り難みが無くなるからな。
俺は少女に飛行を教える事にした。
その方が、いざという時に身を守れるだろう。
渡す気は無いが。
◆
宿屋の食堂で、軽食を食べながらの休憩。
それにしても、だ。
「お前の体、どうなってるんだ?」
そろそろ拾って来て十日になる。
「どう、とは?」
パンにかぶりつきながら、疑問を口にする少女。
「回復が、早過ぎないか?」
日に日に肉が付いて来ている。
痩せこけていた頬は、すっかり目立たなくなった。
「そうですか?」
二つ目のパンに手を伸ばす。
「うーん、霊薬のお陰かもしれません」
「霊薬?」
「城が攻め込まれる前に、父が飲ませてくれた薬です。何でも不老長寿の力があるとか。まあ流石にそれは大袈裟だと思いますけど」
「それは、琥珀色の、非道く苦い奴か?」
「ええ。ハルシュもご存知で?」
あの薬か……。
「不老不死なんか無い。
血を流せば人は死ぬ。首を落とせば確実に」
そう、少女と自分に言い聞かせる。
その言葉に、少女はゆっくりと頷く。
そして、三個目のパンに手を伸ばす。
「……女将さんみたいになるぞ?」
少女の後ろで皿洗いをしている恰幅の良い姿を目で指し示す。
パンを持ったまま、ハッと振り返り、そして、自分の腹に手を添える。
「まだ……大丈夫です!」
そうかなー?
「あの子、不器用過ぎるわ」
いつの間に来たのかジルヴァラを指導していたウミがぼやきながら席に座る。
その手の皿には山盛りのパン……。
「食べる?」
「ハイ」
その一つを少女に渡す。
「あんま餌を与えるなよ」
「大丈夫よね? 食べて、歩く、よ!」
「ハイ!」
ため息を一つ。
「で、ベッドに寝転んで何してたの?」
「飛ぶ練習」
「え?」
俺と少女を順に見るウミ。
「飛ぶの?」
「ハイ!」
嬉しそうな、少女。
「私も! 飛びたい!」
「残念。限定一人。先着順」
俺の返答に、不満気な顔をしてパンにかぶりつくウミ。
「良いわよ。私もいつか魔法で飛んでみせるから」
そう言えばそんな事を言ってたな。
「でもさ、アリア。その服で飛んだら下着丸見えだから今度直してあげるね」
「あ!」
驚きの表情を浮かべた後、顔を赤くする少女。
「お願いします!」
「下着が見えない良い方法がある」
「どんな?」
ウミが聞き返す。
「履かなきゃ良い」
「死ね」
パンツを見られたくなければ、履かなければ良いじゃ無い。
と言う俺のマリーアントワネット理論は理解されなかった。
二人のジト目が突き刺さる。
「それじゃ少し散歩に行くか」
「……ハイ」
少女が少し不満気なのは食べ足りないからか、それとも俺の提案が気に入らなかったからか、はたまたその両方か。
◆
「私は、駄目ね……」
散々調合を繰り返し、成功率の低さを嘆く魔王様。
食堂で紅茶を飲みながら、暗い顔をしている。
「こんな事では、貴方の横に居場所なんか無いわよね……」
「何もしなくても横にいるだけで充分だけど。麗しの魔王様」
暫しの間。
「なるほど……」
ん?
「ウミに言われたわ。思わせ振りに相手の興味を引くようなやり方は控えたほうが良いって」
「うん?」
「貴方を見て、どういう事か分かったわ。ありがとう」
ほう。
ウミはちゃんと軌道修正してるんだな。
それじゃ、接待期間は終了だ。
さらば、背景の花達よ。
ハルシュ Lv.18
筋力値:20
魔力値:20
敏捷値:20
装備:
【英雄の槍】
【魔導銃・喇式】
【ミスリルスケイル】
【大魔導士のローブ】
セットスキル:
├[1]【飛行】Lv.1
│└─【指南】Lv.1
├[2]【英雄】Lv.1
│└─【銃】Lv.1
├[3]【槍】Lv.2
│├─【防御】Lv.1
│└─【魔法防御】Lv.1
├[4]【観察眼】Lv.2
│└─【暗視】Lv.1
├[5]【超反応】Lv.2
│├─【気配察知】Lv.1
│└─【魔力察知】Lv.1
├[6]【神聖魔法】Lv.1
└[7]【離脱】
所有スキル:
【回復】Lv.1
【夜目】Lv.1
【看破】Lv.1
【恫喝】Lv.1
【拷問】Lv.1




