26 地図に無い島を見つける
なぜ、ウミはジジイを連れているんだろう。
そんな疑問を抱きつつ、コル・カロリ周辺で一人レベル上げに励む。
そんな昼の日。
◆
「あのジジイ、最低だわ」
そう言いながらも、そのジジイと狩りに行くウミ。
そんな夜の日。
さて、俺は配達だ。
各地を巡り、金を稼ぎつつ、スキルと武器屋を覗く。
……やはり、アレしか無いか。
俺は暫く前から目を付けていた武器とスキルをカウス・アウストラリスと言うサギッタリウス島にある町で購入した。
◆
とは言え、スキルも武器も手に入れただけでは意味が無い。
実戦で試してモノにしなくては。
予選は三日後。
逸る気持ちを抑えつつ、配達で空を飛び回る。
レベル上げは昼の日にした方が良い。
頼れる仲間は、今はライバルになり居ないのだから。
「ん?」
最近飛ぶ様になった空域。
そして、夜。
見間違いか?
メニューを開いて地図を確認する。
あっちが、ヘラクレス。
多分、あれがキグヌス。
だから、あっちがリラ。
とするとあそこに見えるのは何だ?
……地図に無い島。
地図に無い島!
そんなの、降りるしか無いじゃないか!!
◆
~【???】 エリア:???~
記録には残されていない
「これは……」
名もない島の、かって町であったであろう廃墟に立つ。
石造りの建物と思われる痕跡は、月日の所為かそれとも破壊の爪痕なのか判断は付かないが、既にその原形を留めていなかった。
街道ではあったのだろう。
わずかに落ち葉の下から苔むした石畳が覗く、その上をゆっくりと飛んで行く。
……わずかにモンスターの気配。
少し高度を取る。
その下を、狼よりふた回り程大きいモンスターが駆け抜けて行く。
何だ?
今のは。
そろそろ識別なりのスキルも必要だな。
しかし、高度を取った事で、前方に建物を発見する。
そして、背後から強烈な敵意。
距離はある。
振り向き、確認。
その時点で既に手遅れだった。
俺の横を風切り音がすり抜けて行く。
次いで、腹部に小さな衝撃。
何かが脇腹に深々と突き刺さる。
……矢。
飛んで来た先に弓を構えた人……いや、人馬、ケンタウロスか?
一頭では無い。
二、三頭……。
再び一斉に矢を射らんとする。
逃げよう……。
「離脱」
<ポーン>
システム音。
<該当エリアは転移、離脱無効となっています>
……は?
離脱出来ない!?
「マジか……」
急いで高度を取る。
それを追うように、下方から矢が飛来する。
更に上からも気配の追加。
一瞬、横目で見たその姿は大きな鳥。
それが、十近く。
高度を下げると矢が。
上がれば鳥が。
更に間の悪い事に、状態異常……毒。
矢に塗られていたのか……。
HPが、一定間隔で減少して行く……。
回復魔法を……。
そこでスキルをセットしていない事に思い至る。
新しいスキルを購入し、足らなくなったスキルスロットの為にひとまず外したままだった……。
何処かに身を隠して、そして、回復をせねば。
俺は、全力で遠くに見える建物を目指す。
その建物は、恐らくは城。
しかし、明かりが点いている様子は無い。
一時身を隠せればそれで十分。
減り続けるHPを感じながら、更に速度を上げる。
◆
地上からおよそ、15メートル程の城壁の上にある中庭に墜落するように落ちる。
ここなら矢は届かない。
そして、鳥は諦めたようだ。
幸いにも、ログアウトも出来る。
急いでメニューを展開し、スキルを入れ替える。
「解毒」
ギリギリセーフ……。
しかし、離脱不可のエリアが存在するとは……。
毒の異常は治った。
さて、どうするかな。
俺を追うのは諦めたものの、空には鳥らしき姿がちらほら。
……ログアウトして、日付が変わるのを待とう。
その間に、減ったHPは回復しているだろう。
一体ここは何なのだろうか……。
◆
翌日、ログインした俺の目の前に、予想だにしない光景が広がっていた。
前に佇む二体のスケルトン。
一体は、黒いローブを身にまとい、そしてもう一体はベールの様な物をかぶっている。
どちらも、薄汚れているが。
暗い眼窩がただ俺を見据えている。
……不死者。
まいったな。
ゴーストにしろ、スケルトンにしろ、手持ちの武器では相手にならない。
確か、ハゲ頭の傭兵がそう言っていた。
幸いかどうかは分からないが、今のところ敵意は無い。
見えるのは警戒の色。
どうする?
一息に飛んで逃げるか?
しかし、相応に時間を置いた筈の俺のHPはログアウトした時と同じ。回復していない。
どうなってるんだ……?
「……こちらへ」
黒いローブを身に纏ったスケルトンが下顎を動かしそう言った。
どうやって喋っているんだろう。
危機に際しては、不釣り合いな程どうでも良い疑問を抱く。
しかし、その落ち着いた口調は知性を感じさせ少しばかり警戒を緩めるには十分だった。
「すまない。迷い込んだだけなんだ。大人しく出て行くから見逃してくれないか」
「其れは、其方の返事次第」
「この事は誰にも言わない」
口止め、そう当たりを付けて言う。
無事この場を切り抜ければ今は十分なのだ。
「こちらへ。ささやかであるが食事がある」
そう言って、スケルトンの一体は、城へと入っていった。
もう一体は、動かない。
ついて行け、と言うことだろう。
◆
所々に破壊の痕跡があり、しかし、それなりに整理がされて見える城内を歩き、通されたのは大きなテーブルが置かれた広間。
そこにはスケルトンではない存在が椅子に座っていた。
黒のドレス、紫の瞳、白金のロングヘアー。
年の頃は十代初めから半ばといったところか。
尖った顎、浮き出た頬骨。
まだ、あどけなさを残す痩せこけた少女。
その手は、横に居るスケルトンと比較しても、見分けが付かない程に細い。
アレもまた、この世のものでは無いのだろうか。
その、異様な存在を挟んで俺とスケルトンがテーブルに向かい合って座る。
スケルトンは、その異物を暫く眺めた後、俺に真っ黒の眼窩を向ける。
「この娘を護る騎士と成られよ」
スケルトンの唐突なその申し出に、俺は沈黙を返答とした。




