23 リーザが正体を明かす
ギルドでクエスト完了の報告をして、報酬を受け取り宿に戻る。
◆
「さて、お宝の山分けか」
ウミの部屋に三人集まり、ミノタウルスの部屋で手に入れた宝の配分。
とは言え俺もリーザも、ゴロゴロ転がる宝石の価値は分からず。
唯一、鑑定のスキルを持つウミが大雑把に三等分した。
「こんなもんかなー。多分。大活躍のリーザにはオマケしといた!」
三つに分けられた宝の山。
オマケという割にリーザの前に置かれている報酬の数は少ない。これは彼女に武器、アダマント・ラブリュスが与えられているからである。
宝の中に埋もれていた、両刃の斧。
扱えるのは彼女だけだし、彼女のお陰で手に入ったのだから、控え目にそれを欲したリーザに異論を挟む者などいる筈も無く。
「ありがとう。斧は後で直してね」
恐らくは、かなりのレベルであろうその斧はこの後、ウミの手により、リーザを引き立てる小道具へと生まれ変わる。
「で、そっちがハルシュ」
俺の配分も、ウミに比べるとかなり少ない。
しかし、その中でひときわ大きい紫の石。
ウミの鑑定によると魔石らしい。
使う当ては無いのだが、なんとなく気になる。
これが、俺達をミノタウルスの所へ呼び寄せた。
そんな気がした。
「ども」
「そして、最後は私」
見た目はウミの取り分が一番多いのは、それだけ斧と魔石の価値が高いと言う事だろう。
「で、これが借りてた分」
俺の前に仮装ウインドウが開き、ウミから金銭授受の申し出があったと表示される。
YESを選択し、借用書を返す。
「私からも」
同じく、リーザも。
「これで卒業か。二人共よく頑張りました」
「「イエーイ」」
ウミとリーザがハイタッチ。
「さて、そろそろ時間だな」
ログイン制限時間が近い。
「うん。その後で祝勝会! 盛大にやるよ!」
「やりましょう!」
「ああ」
そう言って、ウミの部屋を後にし自分の部屋でログアウトした。
◆
<運営からお知らせがあります>
ログインと同時にメッセージ。
メニューを開き確認する。
◆
【闘技大会開催のお知らせ】
コンステレーション クエスト オンラインをお楽しみいただきありがとうございます。
サービス開始、一ヶ月を記念致しまして
9月25日よりアルデバランの闘技場に於きまして、闘技大会を開催いたします。
詳細なルールなどは、別紙をご参照下さい。
皆さま奮ってのご参加お待ちしております。
運営チーム
◆
ベタだなぁ。
そう、思いながら別紙でルール等を確認。
まずは、スケジュール。
大会は、およそ一週間後。
その前日に予選。
受付締め切りは、更にその前日。
そして場所。
申し込みは、仮想ウインドウ上から可能。
予選、本戦は、タウラスのアルデバランまで行く必要がある。
更に内容。
予選は、複数人でのバトルロワイヤル。
本戦は、一対一のトーナメント。
闘技場内はLPロスト無し。
一部スキル効果の制限。
但し、その制限は、スキル所持者にのみ告知。
最後に、賞品。
一位……LP回復薬?
そして、二位……スキルチケット【英雄】!?
いやいやいや、えー?
LP回復薬!?
完全に、LP1組を釣り出しに来て無いか?
喉から手が出る程欲しいわ!
そして、英雄!
もう既に死んでるのか!
まさかPKされたか?
……ざまぁ!
これは、しかし、悩むなぁ……。
闘技大会なんか出たら最悪身バレしてPKの的になりかねない。
しかし、一位の賞品は欲しい。
どうする?
いや、いっそ闘技大会で派手にやろうか。
空を駆け回る可憐なる槍使い。
おお、良いな。それ。
そうして、なおかつ、PKに狙われない方法。
考えないと。
◆
部屋から出て食堂へ。
祝勝会の約束の時間より、少し早い。
まだ二人は来ていなかった。
改めて仮装ウインドウを開いて悩む。
この先のプランと、そして勝ち抜く方法。
そもそも、エントリーして大丈夫かを。
悩んで悩んで、それでも決めかねているうちにリーザがやって来た。
「お待たせしました」
「まだ時間前だよ」
そんな言葉を交わす間にウミも現れる。
「お待たせー!」
◆
ウミが大量に注文した料理が並ぶ前に飲み物だけが手元に運ばれて来る。
「では、先生から一言」
え? 俺?
「えーっと、何とかみんな無事に帰って来れて良かったです。乾杯!」
「「乾杯!」」
グラスを合わせる高い音が響く。
あー、アドリブ効かないなぁ……。
「で、リーザは何者なの?」
いきなりウミが核心を抉る質問。
それに答える代わりに、リーザが仮想ウインドウを広げる。
そこに映されていたのは一つのスキル名。
スキル【修羅】
全ての敵を討ち滅ぼせ。
背を向けてはならぬ。
「「えー!!」」
俺とウミの驚く声が見事に重なる。
「それ、ランク10?」
「そうです」
て事はだ。
「じゃ、LPは……」
「1です」
「何で逃げなかったの?」
ウミが問う。恐らくは、さっきの戦いの事。
「修羅。死してもなお戦い続ける。敵がいる限り。
それが、このスキルです」
簡単に教えるなよ。
「つまり、私が死んでもミノタウルスは道連れに出来ると思ったんです。それで二人は助かるって」
「助かった。ありがとう。さ、食おう」
丁度料理が運ばれて来た。
彼女が、決意した事だ。
責める必要は無いし、俺達が負い目を感じる必要も無い。
「もう、あんな無茶しないでよ?」
とウミ。
「そうですね」
そう言って彼女は優しく笑う。
多分、またやると思う。
◆
「そう言えば、闘技大会出るの?」
二人に尋ねる。
「出ない」
と、ウミ。
「出ます!」
と、リーザ。
そっか……。
「出るのか……」
一気に気分が滅入る。
優勝はこの娘だろうな……。
さて、どうやって勝とうか。
「あれ? 何ですか? その反応」
「強敵の出現だなと思って」
「当たり前ですよ。優勝賞品は誰にも渡しません!」
だろうね。
彼女には、それを狙うだけの理由がある。
やがて、テーブルの上の食事も片付き祝勝会はその勝利の大きさと裏腹に大して盛り上がることなくお開きとなる。
ウミが、微妙にテンションが低く、そして、その理由は恐らく後味の悪さの所為。
まあ、それはそれとして、俺はリーザに勝つ術を考えねばならない。




