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184 プールサイドで涼む

 翌日。

 ビュッフェのシェフに再戦を挑むアリアシアを横目に湖を眺める。


 宿の人が言うには、白浜の向こうに広がる湖は潜ると別世界が広がって居るらしい。

 ただ、今はダツやトビウオが大量発生していて水に入るのは危険な状態らしい。

 何でも、奴らは水着の紐を切ってしまうとか。


 運営の良識を疑う。


 馬鹿か。


 女の敵以外の何者でも無い。


 残念だがホテルのプールで泳ぐしか無いな。

 みんながっかりするだろうか。

 ま、私はどっちにしろ水に入らないけど。

 パーカーは、脱がないと決めた!


 みんなが来るのは現実の夜。

 暫く時間がある。


 食べたら散歩に行こうか。

 砂浜を散歩。


「おお! おったのじゃ!」


 ……聞き覚えがある声がしたが、空耳だろう。


「今日もよく食べるのう。アリアシア」

「…………イヨちゃん!?」


 必死に口の中を空にした後、アリアシアが驚きの声を上げる。


 空耳じゃ無かったのか。

 残念だ……。


 溜息を吐きながら振り返ると、ワンピース姿のイヨとヨツバ。

 頭に麦わら帽子。

 完全にリゾート姿。


「奇遇ですね」


 微笑みながらヨツバさんが言う。

 この女狐め!


「奇遇ですね……何でここに?」

「実はここで会談が予定されてるんですよ」


 嘘つけ!


「そう言うことなのじゃ! それが終わったらアリアシア、一緒にあそぶのじゃ!」

「はい!」


 よし。

 遊ぶと言う理由で後で思いっきりプールに放り投げてやろう。


 ……ヨツバから刺すような視線を感じるが気のせいだろうか。


 ◆


 プールサイドで待つこと暫し。


「お待たせー!」


 やっと登場。


 胸元に編み込みがある白のレースアップのビキニに青いロングのパレオを巻いたウミ。


「どうですか?」


 黒のローライズにオフショルダのリーザ。


「……」


 紺のショートパンツワイヤービキニの獅凰。


「さあ、褒めちぎるでぇす!」


 ピンクの花柄のフリル付きバンドゥビキニのピエラ。


「刮目なさい」


 チェックのフレアトップとレースフリルスカート姿のジルヴァラ。

 偉そうだが、照れ隠しなのだろう。

 耳が赤い。


「いや、言葉も無い」


 ちなみに水着の名前は後からコーディネートのウミさんが教えてくれた。


「で、何でそんな格好なんです?」


 対する私はダボダボのボーダー柄のパーカーを首元まできっちりジップアップして、下は流石に赤のボーイレッグ。

 さらに売店で買ったビッグフレームのサングラスを掛けている。


 昨日の一件に加えイヨ達が現れ、更には、今、自分の立ち位置を再確認させられリゾート気分は吹き飛んだ。


「大人だから」


 プール如きではしゃがないのです。


「リーザ。あまり触れて上げるな」


 したり顔のウミが気に入らない。


 ◆


 ビーチチェアに寝転びプールではしゃぐ面々を眺める。


「孔雀座はどうだった?」


 テーブルを挟んで座る魔王様に尋ねる。


「楽しんでたのはウミとリーザだけよ。

 私と獅凰は他の島を見てまわったりしてたわ」

「そうか。面白い物はあった?」

「インドゥスに新たな魔王の伝承があったわ。残念ながら実物はまだ見つけられてないけど」


 やだ怖い。


「貴方の方は?

 ピエラの手伝いをしたのは聞いたけれど」

「暫く南十字座に居た。

 あそこのちびっ子がそこの女王だ」


 ウミ達に混ざりはしゃぐイヨとヨツバ。

 それと、更に知ってる顔が一人、知らない顔が一人。


「あら。また王に絡んでるの?」

「アリアシアが懐かれてさ。

 友達だって」

「あら、可愛い」

「そう言う訳でまた戻ると思う。

 和食が堪能出来るし、居心地も悪く無い。

 それに、もう少ししたら桜が咲くと思うんだ」


 ソメイヨシノがたくさんある。

 満開になれば見事だろう。


「それは是非拝見したいわね」

「案内するよ」

「考えておくわ。

 さて、怖い人が睨んでるからそろそろ私も行くわね。

 リヒト、行くわよ」


 待ってましたとばかりにプールに飛び込んで行くワンコ。

 歓声を上げるアリアシアとチビ巫女。


 その様子を眺めながらサングラス越しにプールの向こう岸を見る。


 ……相手も俺と同じようにサングラスを掛けているのだが、その奥から睨みつけられて居るのがわかる。


 とりあえず、テーブルに置かれた飲み物に口を付ける。


 ……何故ここで、このタイミングで鉢合わせになるのだろう。

 その視線の主、ヘクト。


 いや、睨まれる理由が正直わからないんだが。

 ……あいつが狙ってた獲物を横取りしたからかな?

 ちゃんとさり気なく伝えてくれたのだろうか? プールにそっと視線を向ける。こっちの状況を知ってか知らずか、呑気に遊ぶノゾミと言う美人。一度だけ会ったことがある。胸元のバックリ開いたワンピースが色気を醸し出す。

 そして、ジルヴァラの近くで何故か真っ赤な顔をして居るフリフリのゴスロリっぽい水着の女の子。誰だ?


 さて、ヘクトさん?

 ……とりあえず、ビーチチェアの横に立て掛けたメイス、しまってくれませんかね?

 ……プールが真っ赤に染まるとか、そう言うB級映画的な奴は結構ですので……。


 バカンス気分は完全に吹き飛び、何故か背筋は寒くなる一方です。

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