173 和風の町に下りる
翌、昼の日。
引き続きアリアシアとフラフラしているわけで。
本日は南の十字座まで足を伸ばす。
〜ミモザ エリア:クルッスス〜
港は閉鎖され、外界との交流は限定されている
独特の文化が息づく街
街の外のフィールドへ降り立つ。
他の街であれば、門があり、そして城塞があるのだが、ここは違っていた。
「なんでしょう? これは」
見上げながらアリアシアが疑問を口にする。
「鳥居……だな」
「トリイ?」
そう。
朱に塗られた大きな鳥居。
そして、その奥に、瓦屋根の町並み。
日本、だな。
てことはだ。
「餅、あるかもな」
「え!? 月のウサギさんのですか!?」
一気に明るい表情になるアリアシア。
取り敢えず、蕎麦が食べたい。
そんな匂いが漂っている気がする。
◆
街をゆく人々は着物を身にまとっている。
そして、時折、刀を腰に差したキャラともすれ違う。
流石に髷は結ってないが。
すれ違うキャラ全てがこちらに奇異の視線を投げかけてくる。
完全に浮いている訳だ。
しかし、まあ、どうしようも無いので少し居心地の悪さを感じながらも茶屋に入る。
「いらっしゃい。おや、ガイジンさんかい? 珍しいねー」
「そうか、やはり珍しいのか」
「珍しいね。どうやって来たんだい?」
俺達を席に案内しながら楽しそうに尋ねる女将。
敵意は無さそうで幸いだ。
「風のままにふらりとね。団子と茶を貰おうか」
「あいよ」
団子は餅では無いか。ま、どちらも似たようなものだろう。
直ぐに運ばれて来た団子を頬張るアリアシア。
「おいしいです!」
「それは良かった」
茶をすすりながら答える。
「おいしいかい?」
「初めて食べました!」
「そうかい。他にも美味しいものがいっぱいあるからね。好きなだけ食べさせてもらいな」
「はい!」
ミシュランの隊長にも連絡しておこうかな。
アリアシアの胃袋を満たして、適当に街をぶらついた後にでも。
◆
入った団子屋は寺田屋と言い、そして、宿もやっていると言うので今日はそこに泊まろうと言う話になる。
そして、団子の串が二桁になった辺りで流石にストップを掛け、街に繰り出すことにした。
のだが。
店を出て直ぐに捕まることとなる。
「英雄殿でござるか?」
ござる。
羽織を羽織った五人組。
帯刀をしているが、敵意は無い。
「いかにも」
「上様より御所まで召すようにとのお達しである。道中お疲れかと思うが、ご同行いただきたく候」
そう言って、頭を下げる武士。
人気者すぎて辛い。
「ふむ。承知」
「かたじけない」
ま、行きましょう。
殿様に会いに。
「では、私はここで待ってます」
「いえ、ご一緒にとのことに候。是非ご同行を」
「え? 良いのでしょうか?」
「来いって言ってるんだから行ってみよう」
取り敢えずは歓迎されているみたいだし。
ぜひ嫁に、だったらどうしようかななどと思いつつ。
獅子座と戦争になったりしないだろうか。
◆
通された畳の大広間。
……畳!
当然、アリアシアは初めてで、俺だって現実でもそう何度もお目にかかったことはないな。
上段が一段高くなっていて、そこの主を座して待つ。
アリアシアが見よう見まねで正座しているのが、居心地悪そうにしている。
ややあって、子供が入ってきて上段に座る。
つまみ出されるぞ?
しかし、周囲の連中はそれに頭を下げる。
「よくぞ参った」
巫女装束の……子供。
「イヨ・クルッスス。この国を治めておる女王じゃ」
じゃ……。
えーっと、ロリババア?
色々と言いたい事はあるんだが、ツッコミどころがインフレしているのでもうスルーしよう。
見たままを受け入れることにする。
これが、この国のトップだと。
そう。
ベタな奴。
ベタな奴だ!
「なんじゃ? 驚いたような顔をして」
「いえ、可愛らしい女王様の登場に少々面を食らってしまいました」
可愛らしいという言われ方が気に入らなかったのか微かに眉を顰めるチビ巫女。
「まあ良いのじゃ。それより、大層活躍しておるらしいのう。異人の英雄よ。余の耳にも届いておるぞよ」
「まあ、そうでしょう」
ドヤ顔を返すが、何が気に入らないのか再び顔を顰めるチビ巫女。
「そんな異人の英雄に一つ頼み事をしたいのじゃがいかがかの?」
小さな溜息をついてから続けるチビ巫女。
「ええ。何なりと」
二つ返事で承諾。
ここのNPC、基本こちらの拒否は受け入れないらしいと言う事を経験から学んだ。
しかし、三度顔を顰めるチビ巫女。
一体何が気に入らないのだろうか。
「そうか。それならば話が早い。
毎夜物の怪が現れまいっておるのじゃ」
「物の怪なぞ、私めが軽く討滅してみせましょう」
「おお、なんと頼もしい。聞いたか、皆の衆」
初めて笑みを浮かべるチビ巫女。
そして、周りからも感嘆の声。
いいぞ。もっと褒めろ。
◆
「安請け合いし過ぎでは無いですか?」
御所を出るなりアリアシアが窘めるような口調で言う。
「困ってる王族の頼みを断れた試しが無いんだよ。だったらすんなり請けた方がこっちも向こうも気分が良いだろ?」
相手が女の子であったことも幾分かプラスに働いて居るだろうが。
ま、ガキだけどな。
アリアシアより小さいだろうな。
「さ、甘いものでも食べに行こうか」
不満顔の頭に軽く手を乗せる。
件の物の怪が現れるのは決まって明け方。
つまり、明日の夜。
それまではこの街で過ごすのだ。
タップリと道草を食いながら、先程の寺田屋へ戻った。




