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171 鎧の提案を却下する

「凄い熱気だな」


 プレイヤーで溢れる町を眺めながら素直な感想を漏らす。


 コスクラハ。

 盾座の北の港町は、プレイヤーの職人街として再生し、そう名を改められた。


 ガニメデが居る南の港町はオーハンと言う名になったらしい。

 そして、早くも両港町に転移ポータルが設置された。


「イベント前の駆け込み需要だな。

 お前も何か買ってけ」


 屋台で買った焼き鳥を食いながら隣でボストークが言う。


「困った事に武器に困って無いんだよ」

「そんな連中も多くてなあ。

 特に最前線の連中に。

 ドロップやらトレジャーやらの性能が良くて商売上がったりだ」

「だろうね」


 槍は使いやすいし、銃もそれなりに気に入って居る。

 第三の選択肢は今の所ない。


「後でお前の武器を見せてくれよ」

「良いけど高いぜ」

「メシおごるよ」

「あーそれなら連れを一人呼んで良いか?

 可愛い女の子だ」

「まあ、それくらいなら。

 ……あん? その知り合いってまさかあの大食いの隊長か?」

「いや、あいつじゃ無い。まあ、呼べば、喜んで飛んでくるだろうけど」

「勘弁してくれ」


 ま、食欲は負けず劣らずなのだが。

 それにしても有名だな。隊長。


 ◆


「と言うわけで、出来そうなのがこの三種類」


 共同作業場でがいが俺に提示したのは『軽鎧』『胸当て』『強化服』の三種類。

 簡単なデザインと、完成品のスペックが仮想ウインドウに並ぶ。

 比較対象として、鑑定してもらったミスリルアーマー。


 正直、どれも微妙なのだ。

 軽鎧が辛うじて物理防御面で今の装備を上回る程度。


 だが……。


「重くなるよね?」

「なるね」

「どんなもんかな」

「似た様な重さの物なら試着できる」


 ほう。


 鎧から試着の案内が来る。

 それを受理すると一瞬体がボヤけ濃紺の鱗で作られた鎧姿になる。


 ……魚類か?

 気持ち、生臭い?

 いや、気の所為だろう。


 その場で軽く跳躍。


「……重いね」

「言う程変わらないと思うけどな」


 再度、跳躍。

 そして、軽く飛行。


「いや、重いな」

「使ってれば慣れる」


 槍を持つ構え。

 そして、シャドウで突き。


「うん。重い!」

「細かいな」


 うんざりした声で鎧が答える。


「だから言っただろ」


 その様子を見て居た、ボストークがしたり顔で言う。

 いや、何でそんなに嬉しそうなんだ?


「もうちょっと考えさせてもらうわ。

 いや、いっそ鎧以外の物にしたらどうだ?

 使い方次第で毒を無効化する様な効果を出せそうだ」

「毒無効か」


 でも、スヤマンタカがあるしな。


「じゃ、一応そっち方面も考えてみてよ。

 面白そうならそれでも良いよ」

「あんま、期待すんな」


 溜息をつきながら鎧が下がって行く。


「で、何かわかった?」

「この槍、すげえな」

「だろ?」

「どこで手に入れた?」

「嫁入り道具だ!」

「なるほど。

 信頼されてない訳か」

「んな事ないだろ。

 で、何がすごいの?」

「このゲームはな、武器防具を補修、改造して使い続けるとランクアップしてより強い武器になる事がある」

「ほう」

「言ってしまえばこれはその完成形だな。

 余程の戦いを繰り抜けて来たんだろう」

「投げやすくて気に入ってる」

「……大事にしろよ」

「いや、してるけども。

 しかし、微妙なシステムだな。

 強い武器を手に入れて、ハイ、乗り換えって訳にも行かない訳か」

「その辺はプレイスタイル次第じゃないか。

 そう、頻繁にあるもんでも無し」


 成る程。

 当たれば儲け、程度か。


「ボストークさーん」


 そんな俺達に作業場の入り口からNPCの子供が声を掛ける。


「おーう」


 ボストークが手を上げ答える。


「ブリードさんの依頼品、受け取りに来ました」


 手に一本の短剣を持って立ち上がる。


「一人でここまで来たのか?」

「途中まで、騎士さん達に送ってもらいました」

「そうか。

 これが依頼品だ。

 帰りも気をつけろよ」

「はい。ありがとうございます」


 剣を受け取り、ぎこちなく頭を下げ工房から出て行く。


「今のは?」

「ラスタってブリードの小姓だな」

「小姓?」

「ああ。奴隷だったのを引き取って来て身の回りの世話をさせてるらしい。

 さっさと一人前になって自分の買取価格を払って自由になれ、とさ」

「へー。奴隷を。

 そんな事言ってたな。

 アイツ、本当に若い燕を捕まえたのか」

「確かにな」


 笑いながらボストークが座り直す。


「さっきの剣もアイツに使わせるんだろう。

 本人はあの調子で認めないがそれなりに気に入ってるみたいだ」

「へー」


 今度その様子を覗きに行こう。

 デレデレのブリードが見れるかもしれない。


「こんにちはー」

「はいよーー」


 工房に明るい声が響く。

 ボストークが大声を上げ立ち上がる。

 アリアシアだ。

 さ、ボストークの財布に壊滅的なダメージを与えに行くか。

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